サンモニ、報ステとも時間帯視聴率「1位」 首相官邸から目の敵にされる番組ほど面白い

「番組が始まった時から、中庸の精神で真ん中のつもりでやってきましたが、いつの間にか、左の方にいた番組がなくなって、一番左みたいになってしまいました。でも、最初の思いは変わっていないつもりです」
日曜朝のTBS系報道番組「サンデーモーニング」の司会・関口宏は、2014年度「放送人グランプリ」に選ばれたときにこうあいさつした。
明らかになった総務省の行政文書によると、ちょうどその頃、安倍内閣の礒崎陽輔首相補佐官が、「(安倍総理は)今はサンデーモーニングには問題意識を持っている」「サンデーモーニングは番組の路線と合わないゲストを呼ばない。あんなのが(番組として)成り立つのはおかしい」「けしからん番組は取り締まるスタンスを示す必要がある」と総務省をたきつけていたのである。
首相官邸からニラまれているという情報は、おそらく関口の耳にも届いていて、だからあの発言になったのだろう。すると今度は、高市早苗総務相(当時)が「行政指導しても全く改善されない場合、それに対して何の対応もしないと約束するわけにいかない」と停波をチラつかせた。電波を使えなくされたら、テレビ局はつぶれる。TBS系ワイドショー「THE TIME,」の司会・安住紳一郎によると、「当時、放送局の中ではショッキングというか、かなりドキッとした」(3月8日放送)というから、黙らせることはできなくても、ビビらせる効果はあったようだ。それでも「サンモニ」は、「われわれは、この番組の姿勢を淡々と貫いていかないといけないと思っている」(関口宏.3月5日放送)と、歯を食いしばった。
官邸のターゲットにされてきた番組は、ほかにもいくつかある。行政文書では、テレビ朝日系の「報道ステーション」と「モーニングバード(現・羽鳥慎一モーニングショー)」もやり玉に挙がっていた。
高市早苗氏の「大ファン」発言に羽鳥慎一はありがた迷惑

「サンモニも含めて、いずれもコメンテーターが安倍首相の独走に批判的な論陣を張っていました。面白いことに、それらの番組は、いまや世帯視聴率で同時間帯トップの人気です。忖度なしの姿勢に視聴者は留飲を下げ、支持され続けているということです」(報道番組元プロデューサー)
そして、首相官邸の「けしからん番組」のキャスター・コメンテーターほど“好きなランキング”上位というのも、安倍首相や周辺をイラつかせていたのだろう。
文春オンラインの「信頼するキャスター&コメンテーターベスト10」で、1位は「モーニング」玉川徹、2位は「報ステ」大越健介、「サンモニ」青木理も8位に入っている。お上が「けしからん」というものほど巷で喝采を浴びるのは、二条河原の落書の時からそうなのだ。
「各番組のチェックは、内閣広報室の職員3人が専従でやっているといわれています。それぞれのコメントの長さまでストップウオッチで測っているというから、ご苦労なこってす」(メディアアナリスト)
高市大臣は「羽鳥アナウンサーの大ファン」なので、「テレビ朝日をディスるはずもございません」なんてウケ狙いの答弁をしたけれど、こういうのをありがた迷惑というんだろうな。
(コラムニスト・海原かみな)
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