菅田将暉 かつての「8・15シリーズ」大役級を軽やかに好演

更新日:2019-08-02 17:43
投稿日:2019-08-02 17:39
映画「アルキメデスの大戦」/(C)2019「アルキメデスの大戦」製作委員会 (C)三田紀房/講談社
映画「アルキメデスの大戦」/(C)2019「アルキメデスの大戦」製作委員会 (C)三田紀房/講談社

【大高宏雄の新「日本映画界」最前線】

 公開中の「アルキメデスの大戦」が、全く意表をつく中身だった。太平洋戦争前、数学の天才が戦艦大和の建造を阻止する話というのは予告編などで知っていた。だがまさか、その話のみで押し切る作品とは思ってもみなかったからだ。

 本作は、戦争を題材にした娯楽大作である。本来なら、昔でいう特撮、今のCG技術を駆使した戦闘シーンを見せ場としてもおかしくない。だが、数学の実証的な見地から戦艦大和の建造の欠陥部分を暴くことが、作品の本筋になっていた。

 若き天才数学者を、菅田将暉が演じる。かつての東宝の夏作品「8・15シリーズ」の主役を張るようなものだから大役である。その彼が、オーバーアクションをギリギリのところで回避し、全体として軽やかに演じていた印象があって、非常に好感が持てた。

 山本五十六役の舘ひろしはじめ、海軍の重鎮たちを國村隼、橋爪功、田中泯らが演じる。彼らの重厚にして安定感抜群の演技力と、菅田は絶妙な対峙関係をつくっていたと思う。権力に迎合せず、わが道を邁進する自信と力強さ、その双方を兼ね備える若者を過不足なく演じて見事だった。

 戦争を題材にすると、俳優陣にはやけに力が入る。怒鳴りちらし、全身を震わすような演技で押しまくってくる。戦場が舞台であるなら、それも理解できる。正常な感覚ではいられなくなるからだ。ただ、今回のように戦場を舞台にしない作品なら、正常さを持つ人間の冷静な姿こそが望まれる。

 菅田の演技には、それがあった。国家や国民が冷静さを失ったとき、戦争は露出してくる。菅田が演じたような若者が何人も、いや何百人、何千人もいるような日本であってほしいと思えるような作品であった。

(大高宏雄/映画ジャーナリスト)

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