香取慎吾に救いの手 公取委注意で分かった萩本欽一の偉大さ

更新日:2019-08-06 10:48
投稿日:2019-08-05 14:35
萩本欽一(左)と香取慎吾(C)日刊ゲンダイ
萩本欽一(左)と香取慎吾(C)日刊ゲンダイ

 公正取引委員会のジャニーズ事務所に対する「注意」は、図らずも萩本欽一(78)の偉大さを再認識させた――。

 7月17日、SMAPの元メンバーで、2017年9月いっぱいで退所した稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾の3人を出演させないように民放テレビ局などに圧力をかけていた疑いがあるとして、公正取引委員会がジャニーズ事務所に「注意」した。

 ジャニーズ側は「弊社がテレビ局に圧力などをかけた事実はなく、公正取引委員会からも独占禁止法違反行為があったとして行政処分や警告を受けたものでもありません。とはいえ、このような当局からの調査を受けたことは重く受け止め、今後は誤解を受けないように留意したいと思います」とコメントを発表し、各テレビ局も圧力を否定している。

■香取の地上波出演は1年4カ月でたったの4本

 香取慎吾を例に、直近1年強の地上波テレビ出演(関東地区)を挙げてみよう。

 2018年3月28日の「おじゃMAP!!」(フジテレビ系)終了以降、深夜12時以降の番組を除けば、2019年2月2日の「欽ちゃん&香取慎吾の第96回全日本仮装大賞」(日本テレビ系)、2月24日の「密着! 4000時間 アーティスト香取慎吾2年間の軌跡」(TBS系)、4月27日の「人生最高レストラン」(TBS系)の3本だけ。「仮装大賞」当日の「直前みどころSP」をカウントしても4本しかない。

 確かに、「おじゃMAP!!」は最終回の視聴率が5・6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区=以下同)で、番組末期は数字を残せなかった。

 しかし、SMAP時代の2016年、毎週3本のレギュラー番組を持ち、主演ドラマが連続、単発ともに1本ずつ放送されていたことを考えれば、さすがに1年4カ月で出演4本は少ないだろう。

■「仮装大賞」も降板がささやかれた

 萩本が還暦を迎えていた02年元旦の放送から司会に加わった「仮装大賞」も、一時は香取降板説がささやかれていた。

 17年8月27日放送の「24時間テレビ 愛は地球を救う」では「仮装大賞」の特別版が放送され、萩本は出演したものの、既にジャニーズ事務所退所が発表されていた香取の姿はなかった。ちなみに、この年は嵐の櫻井翔、KAT-TUNの亀梨和也、NEWSの小山慶一郎がメインパーソナリティーを務めていた。

 同年10月18日放送の「おじゃMAP!!」に萩本が出演すると、香取は「仮装って、なんで僕だったんですか?」と尋ねた。

 すると、萩本は「年を取ったから『仮装』を誰かにあげたいと思う。俺降ろして、慎吾にしてくれないかって(スタッフに)お願いしたんですよ」と明かした。

 その12日後、日本テレビは定例記者会見で香取の続投を発表した。

 因果関係は分からないが、事実を記せばこのような経過が存在した。

■“視聴率100%男”欽ちゃんの功績を振り返ると……

 テレビ史を振り返ると、萩本の功績は燦然(さんぜん)と輝いている。

 1960年代後半、坂上二郎との「コント55号」で舞台上を動き回り、躍動感のあるコントで爆笑の渦を巻き起こした。当時、テレビカメラは固定されたままだったが、飛び回る2人を撮るため、右に左に動くようになったと言われている。

 1976年には「欽ちゃんのどこまでやるの!?」(テレビ朝日系)という冠番組を始め、“夜9時台はドラマや音楽番組”というテレビ界の常識を覆し、バラエティーの地位を向上させていった。

 81年、「欽ドン!良い子悪い子普通の子」(フジテレビ系)から生まれた「イモ欽トリオ」のデビューシングル「ハイスクールララバイ」はミリオンセラーを記録。番組発のユニットを作ってヒット曲を生み出すというスタイルを発明した。

 83年頃には「欽ドン!」「欽どこ」「週刊欽曜日」という1週間の冠番組の合計から“視聴率100%男”の異名を取り、改編期や年末には局をまたいで3つの番組が集結する欽ちゃん特番が持ち回りで放送されていた。これらの番組では素人同然の若手を起用し、成長していく過程を見せた。

 現在のテレビ界でも使われるさまざまな手法を編み出した“ミスター・テレビジョン”の意向だからこそ、「仮装大賞」の香取慎吾司会が継続したと考えても違和感はない。

■香取慎吾に惚れ込んだ萩本欽一

 なぜ、萩本は香取に「『仮装』をあげたい」というほど惚れ込んでいたのか。

 1994年10月開始の「よ!大将みっけ」(フジテレビ系)でレギュラーに抜擢した頃、当時54歳の萩本は17歳の香取をこう評していた。

〈慎吾ちゃんはことばが正直で裏がないからおかしいの。失敗を恐れなくてことばが素直。つくってないから仕事抜きに笑えるのね。バカやりはじめたらとてつもないところまでいっちゃって、届かないくらい〉(『ザテレビジョン』1995年3月10日号)

 数々の才能を見いだしてきた萩本は、香取のバラエティー対応力に感心していた。それに呼応するかのように、香取もこう話していた。

〈小さいころから、人を笑わせるのが好き。収録ごとに雰囲気が変わるバラエティーの舞台でどんなアドリブを飛ばせるか、自分でも楽しんでます〉(『読売新聞 夕刊』1994年12月19日付)

「よ!大将みっけ」は残念ながら半年で終了した。その後も萩本は香取との新番組構想を周囲から持ちかけられていたが、「視聴率を取れないと迷惑を掛けるから」と断っていたことも、前述の「おじゃMAP!!」内で明かしていた。

 確かに、80年代前半に“視聴率100%男”と呼ばれていた萩本も、85年3月の休養以降はヒット番組を生めなくなった。

 現在、萩本はNHK-BSで「欽ちゃんのアドリブで笑(ショー)」という不定期の冠番組に出演している。コント55号で坂上二郎をとことん振り回していたように、この番組でも劇団ひとりやハライチの澤部佑にムチャ振りを連発している。

 その狂気性を、〈慎吾はね、とてつもないアドリブの力を持っている〉(『スポーツ報知』2018年1月20日付)と評価する香取にぶつけるのはどうか。

 BSならば、地上波のように視聴率も気にしないで済む。

 ぜひ、同番組で萩本と香取に“アドリブの応酬”を繰り広げてほしい。

 取材・文=岡野誠(ライター・芸能研究家)

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