「鬼滅の刃」絶好調もフジテレビ「アニメの清水」大改革に潜むリスク…今後5年間で2500億円投資
アニメ「鬼滅の刃」の新作劇場版「劇場版『鬼滅の刃』無限城編」の「第一章 猗窩座再来」が7月18日に公開された。これに先立ちフジテレビ系は、6月28日から7月17日にかけて「無限列車編」「遊郭編」「刀鍛冶の里編」「柱稽古編」を一挙放送。コア視聴率5~8%台の驚異的な数字を叩き出した。
フジテレビは6日に「検証 フジテレビ問題~反省と再生・改革~」を放送。その内容の批判を浴びながらも、7月からサントリーやエステーといった大手スポンサーがCM出稿を次々に再開し、“平常運転”に戻りつつある。そんなフジが次の打開策として活路を見出そうとしているのがアニメ事業だという。
従来は編成総局にバラエティー、ドラマ・映画、アニメの各制作セクションが並列に「局」として設置されていたが、新たにアニメ部門を「IT・アニメ事業局」として独立させ、これが10日発令の組織改革で反映された。
6月25日にフジHDの社長にも就任したフジの清水賢治社長は、「Dr.スランプ アラレちゃん」や「ドラゴンボール」などのヒット作を手がけ、「ちびまる子ちゃん」の初代プロデューサーも務めた“アニメ通”。6月11日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京系)に出演した際は、今後5年間で2500億円に及ぶ戦略投資の半分をアニメなどのコンテンツ事業に充てると言及した。
フジテレビ系列で放送されている関西テレビ制作のドラマ枠「火ドラ☆イレブン」が年内で終了し、来年からアニメ枠となることが明らかになったが、今後は系列局が一丸となってアニメ事業に取り組んでいくことになるという。
「アニメは制作コストがかかりますが、ヒットすればグッズ展開や映画化などでドラマ以上の収益が見込めます。ただ当たれば大きい分、こけ方も大きくなります。フジは、05年から深夜のアニメ枠『ノイタミナ』などでも良作を世に出してきましたが、放送各局のアニメ放送枠が増えたことで競合も多い。今後、どのように他媒体と差別化していくのかも課題になってくるでしょう」(フジテレビ関係者)
■オリジナルのキラーコンテンツを生み出せるか
一方で“アニメのフジへ”の大方針に対し、アニメーターなどからは《不祥事など困った時のアニメ頼みはアニメ業界全体へのイメージ悪化につながるのでやめてほしい》といった声も出ているといい、今のフジに協力するアニメ制作会社がどれだけあるのかも定かではない。
「『鬼滅の刃』に関して言えば、フジの自社コンテンツではなく、あくまで放映権を獲得しただけにすぎません。フジのアニメといえば、ワンピースですが、日テレ系の名探偵コナンや、テレ東のおそ松さんのように、ファミリー層とは違うターゲットにも刺さり、長期的に人気を維持できるキラーコンテンツをいかに生み出していけるかも課題になると思います。フジのオリジナル作品の成功例としては、『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。』があります。実写ドラマ化もして大きなブームになりました。フジはこれからオリジナル作品でどれだけ勝負できるかもアニメファンから求められるようになるでしょうね」(同)
“アニメの清水”のトップダウンでフジテレビの改革は成功するのだろうか。
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改革を進めようとする清水社長には一部で怪しげな告発文書の存在も指摘も指摘されている。関連記事【もっと読む】「清水賢治社長のセクハラ疑惑で掘り起こされるフジテレビの闇…『今日からシリケン』と“お触り続行”の過去」…では、決して盤とは言えない「清水体制」について伝えている。
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