ジミー大西のすごさは、素直で何をするのも一生懸命なので敵がいないこと
【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#252
ジミー大西
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タレント、画家としても目覚ましい活躍をしているジミー大西くん。初めて会ったのは明石家さんまさんの勧めで“ザ・ぼんち”おさむさんの弟子に付いていた1985年ごろだったと思います。元気いっぱいだけど、アガリ症でなかなか言葉が出ず、頭をかきむしっていました。自己紹介と挨拶をすると「すいません。頑張れよって言ってもらえます?」と言われたので、なにも考えることなく「頑張れよ」と言った瞬間「おまえも頑張れよ!」と返されて周りが大爆笑。楽屋にいた誰かに「ジミー、その人誰か知ってんのんか? 阪神巨人さんのネタ書いたはる先生やぞ!」と聞かされたジミーちゃんは顔を真っ赤にして「すいません! すいません! すいません!」と土下座でもしそうな勢いで謝っていた日が昨日のような気がします。
その後、ジミーちゃんの初の冠番組「ジミーちゃんの気持ちE~夜」(関西テレビ)の構成を担当させてもらいましたが、真剣になればなるほど舞い上がってしまうので、進行はハイヒールのリンゴ姉さんに任せてやりたいように、言いたいように好き勝手に動いてもらうことにしました。冠番組だけに、なんかジミーちゃんの時間をつくらないとと、本人に聞くと“絵を描くのが好き”という答えが返ってきたので、番組の最後にゲストの感想を「今日の絵日記」で描いてもらうことにしました。独特のタッチと色使いで「オモロい絵(を)描くなぁ」とスタッフと話していましたが、今思うとあの時の「絵日記」も貴重だったんでしょうね。
途中、絵を描くのをやめた理由は本人いわく「時給にしたら380円にしかならへん」とのことでしたが、さんまさんに「オレらの仕事は時給に換算したらあかんねん。ひとりでもファンがいてくれたらその人に喜んでもらうことが大事ちゃうか?」と諭されて再開されました。
ジミーちゃんのすごさは素直で何をするのも一生懸命なので敵がいないこと、誰からも好かれて可愛がられるところでしょうか。絵を描くことに特化した才能があり、さらに周囲から可愛がられたことでお笑いの素養も芽を出し、少しずつですが身についていったのでしょう。
先日、劇場で久しぶりにジミーちゃんが出演するコントの舞台稽古に遭遇しました。見ていると、さりげなく若手を手招きして「もうひと呼吸おいた方が大きい笑いがくると思うで」と的確なアドバイスをしていました。そこには、おどおどしながら頭をかきむしっていた姿はありませんでした。これからも二刀流での活躍を期待しています。
(本多正識/漫才作家)
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