遠方に住む親が心配…介護サービスの上手な選び方&使い方

東城ゆず ライター・エディター
更新日:2019-07-31 06:00
投稿日:2019-07-31 06:00
今はまだ元気でも…(写真:iStock)
今はまだ元気でも… (写真:iStock)

 遠方に住んでいる両親が介護状態になった時、多くの人が「大丈夫かなぁ……」と心配になるはずです。しかし、現代では親の介護が必要なときに、自分の子育てをしている最中という問題もあります。また定年前の夫婦であれば、遠方に住んでいる家族のために引っ越したくても、経済的な事情からそれができないことも少なくありません。

 今は介護に無縁な両親にも、このような不安から「どうにか両親には足腰は元気で、自立した生活を送ってほしい」と思う家族も少なくありません。しかし、筆者は介護士をしていた経験から思うことがあります。それは、ちゃんと家族が介護サービスを熟知し、必要だと思った介護サービスを吟味することによって、遠方からも応援することができるということです。

 今回は、ケース別で必要だと思われる介護サービスを見てみましょう。

こんな時は介護サービスの利用で苦悩が改善するかも

シニア向けの体操教室で生活にハリを(写真:iStock)
シニア向けの体操教室で生活にハリを (写真:iStock)

 介護が必要になると、今では認知度も上がった「デイサービス」という通所型の介護施設に預けるか、いっそ24時間介護士が常駐する「入所型介護施設」に入れてしまおうかと悩む人が多くいます。でも、ちょっと待って! まだ、そこまでの段階ではないかもしれません。

最近物忘れが激しくなったような…

「最近、母の物忘れが激しくなったような気がするんです。78歳になる母のことそんな様子をみては、“認知症なのかな?”と不安に感じてしまいます。すぐにデイサービスにでも行ったほうがいいですか?」(Yさん・42歳女性)

 少しの物忘れは、必ずしも「認知症」とは言い切れません。誰しも年を取れば、平等に判断力や記憶力は低下するものです。物忘れが激しくなったからといって、認知症と決めつけるのは早計です。毎日繰り返しの生活をしている高齢者には、体操教室やサークルなどを進めているのもいいですね。それだけで、表情が明るくなり社交的になるために生活のハリを取り戻す人もいるんですよ。

手伝ってあげたいが遠方で不安

「日ごろの生活を手伝ってあげたいですが、自分の子育ても落ち着いていない状態で、現実的ではありません。父は遠方に住んでおり、またこれまで母が身の回りのことを全てやっていたため、家事も得意ではありません」(Sさん・42歳女性)

 男性の高齢者の場合は、「若い時に家事をしたことがない」という人も多くいます。問題になってくるのは、奥様に先立たれた後です。本人も慣れないこと続きで疲弊して、その結果、「ご飯が喉を通らなくなった」という人も多くいます。家に引きこもってしまい、そのまま筋力が低下してしまうことも。その結果、転倒して骨折などの可能性もあります。

 健常者であれば、要領さえつかめば挑戦できることもあるかもしれません。しかし、何かを見ながら学んだり、実際の行動に移すことが健常者より大変になることを覚えておきたいものです。

独居生活をしていて不安なので安否確認をしてほしい

「私の祖母は今年で91歳。とても元気で毎日2時間の散歩を欠かしません。本人は“大丈夫!”と言いますが、さすがに91歳なので、何があってもおかしくないと思うのです。母もいまだに働いており、親族が頻繁に様子を見に行けるわけでもなく。一人で住んでいる祖母が孤独死という悲しい結末になることだけは避けたいんですが……」(Aさん・37歳女性)

 このようなケースは、安否確認をしてくれる人がいれば、本人の希望でもある在宅介護でも問題がないような気がします。近所の人に声をかけたり、傾聴ボランティアなどを利用しても在宅で生活が続けられそうです。 

 周囲との関わりが少ない人ほど、孤独死ということに気づかれないのです。毎日行けるような日課となる場所があるのも、本人のもしもの時に役立ちます。

なるべく在宅が本人の希望だけど…

「母は昔からひざが悪いこともあり、最近よく転ぶようになりました。幸い、今までに骨折などはありませんが、私は“運が良かっただけ”と思っています。本当は施設に入所してほしいのですが、母は“誰かの手を借りたら、何もできなくなってしまう”と、何でも自分でやりたがるんです。この場合は、どうすればいいのですか?」(Uさん・52歳女性)

 家族が良かれと思ってやったことが裏目に出てしまうこともあります。本人の希望を無視し、無理にやってしまうことで「大きなお世話」に感じて、余計に頑固になってしまうことも。

介護サービスにはどんなものがあるの?

出来ることは自分でしたい(写真:iStock)
出来ることは自分でしたい (写真:iStock)

 家族が介護サービスを選ぶときには、「本人ができることは本人がしたい」ということを忘れてはいけません。高齢で、身の回りのこともおぼつかなくなった時こそ、「誰かに頼んでしまえば楽なのに」と思ってしまいがち。しかし、本人は最期まで自分のことは自分でやりたいと思っています。

 これは例えですが、“自分で食べる食事”と“誰かに食べさせてもらう食事”では、楽しさや味が違うことでしょう。自分で食べられるのなら、自分が決めた順番やタイミングで食事をしたいのが普通だと思います。このように人は誰でも、「できることは自分でしたい」という、こだわりがあるはずです。それを、周囲が「みていられないから」「大変そうだから」で、本人の気持ちを無視することは控えるべきでしょう。

 基本は、“全くできないことをフォローするために”という考えから来るのを、忘れないようにしたいものです。

炊事が困難なら宅食も

 例えば、関節が変形してしまう病気に、「関節リウマチ」があります。関節リウマチの進行度合いにもよりますが、着替えや家の中での暮らしは、本人の工夫次第で何とかなっていることも多いのだそうです。筆者が聞いた話によると、家族が来たときにペットボトルを半分に切ってもらい、そこに靴下をかけてペットボトルに足を入れれば、靴下は自力で履くことができたりと、何かと工夫を凝らしているようでした。

 健常者かは「そこまで大変な思いや、工夫の連続で家にいたいのか?」と思うことでしょう。しかし、古くからその地域に住んでいたり、人付き合いが苦手な高齢者は、そうまでしても「家に残りたい」と感じます。それほど、この思いは強いと思ってください。

 その関節リウマチを患った女性は、筆者に「でもね、ご飯が作れないのよ」と言いました。関節が変形しても、大方の工夫をしていたそうですが、食事が作れなくなってしまったことにより、施設への入所を決意したのだそうです。他にも多くのことを考慮したのかもしれませんが、「ご飯さえ用意できればまだ在宅での生活を続けたかった」というようにも聞こえました。これは非常にもったいないことだな、と感じたのです。

 というのも、炊事のみが困難ということであれば、宅食サービスを受けることができたはずです。介護度によっては、介護保険の対象にもなります。栄養士が考えたカロリーや栄養バランスがきっちりと取れたお弁当が、自宅に毎日運ばれてくるシステムです。これにより配達の人に、安否確認をしてもらうこともできます。

 すごいのは、病気に合わせて減塩などの対応をしているところ、そしゃく力が弱くなってしまった高齢者には一口大に切ってくれるところもあります。

「妻が先立ってしまった」と嘆く男性高齢者も、近ごろではこの宅食サービスを賢く利用していますよ。

いいとこ取り? 小規模多機能型介護

 実際に家族の介護が必要になった時、「この日は私の夫が子供を見ててくれるから、夜にお母さんのそばにいてあげよう」と思う娘様は多くいます。しかし、翌日になれば「一人にして平気という状況ではないけど、自分の子供を育てなくては」ということや、仕事を持ってる人もいることで介護に付きっきりが難しくなることがあります。

 完全に施設に入所させることは後ろめたい気持ちや、自分がさみしい気持ちもあると踏み切れない家族には、「小規模多機能型介護」がオススメです。「小規模多機能型介護」は、対象者は介護保険の対象になりますし、金銭的負担も少なくて済みます。介護を担える家族が誰もいない日は、夜のみお泊まりすることも可能です。夏場に熱中症が心配な家族は、デイサービスとして利用することもあります。

「最近は調子がいいから、なるべく家にいさせてあげたい。けれど、安否が不安」ということなら、訪問サービスを利用することもできます。本人の状況をみて、臨機応変な対応が可能となるのが「小規模多機能型介護」のメリットです。

訪問介護サービスも

 デイサービスは、何年も前より知名度が上がっています。「周囲を見渡せばデイサービスばかり」といった地域も少なくないのではないでしょうか。しかし、筆者がオススメしたいのが、「訪問介護サービス」という手段です。たまの排泄の失敗や本人が買い物ができない、薬の内服確認くらいであれば、デイサービスを利用しなくても、訪問介護サービスを利用する手段もあります。有資格者のヘルパーさんが自宅に来てくれて、買い物などを本人と一緒にやってくれるシステムです。料理を一緒にしてくれることもあるんですよ。

介護サービスを選んでいくうちに未来が明るくなるかも!

住み慣れた家でずっと過ごすためにも…(写真:iStock)
住み慣れた家でずっと過ごすためにも… (写真:iStock)

 介護サービスを本人と一緒に選び、どんな余生を送りたいのかを熱心に聞くことも、立派な介護といえます。介護というとイメージ的に悲観的になってしまい、これから本人の身体的機能が大幅に低下してしまうことを想像しがちです。

 しかし、身の丈にあった最適な介護サービスを受けてみることは「まだ私も家で暮らせるんだ」という自信につながり、高齢者の狭い世界を広げるチャンスでもあります。ぜひ様々な展示会や説明会に、本人と一緒に足を運んで「これからの生活を考える」といった手を差し伸べてあげてくださいね。

東城ゆず
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ライター・エディター
1994年生まれ。11歳の頃からブログを運営。ライターやエディターとして、女性誌メディアや地元新聞のコラム枠まで幅広く活躍中。恋愛やママ友問題、介護士であった経験からリアルな介護問題まで幅広い知見がある。年子兄弟を連れ離婚の経験があり、現在は再婚に至る。

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