欅坂46ドキュメンタリー映画評 平手友梨奈の真実·覚悟·願い

こじらぶ ライター
更新日:2020-09-06 06:05
投稿日:2020-09-06 06:00

最大の衝撃は魂のパフォーマンスと消耗される姿

欅坂46結成時14歳から脱退時18歳まで4年半グループに全てを捧げてきた平手。映画公開には抵抗もあるようだが…/(C)日刊ゲンダイ
欅坂46結成時14歳から脱退時18歳まで4年半グループに全てを捧げてきた平手。映画公開には抵抗もあるようだが… /(C)日刊ゲンダイ

 今月4日、欅坂46初のドキュメンタリー映画「僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46」が公開された。今回は欅坂46と平手友梨奈(19)を結成当初から見てきた筆者がこの映画で感じたことをレビューしたい。大前提として、このレビュー記事においては、多少のネタバレが含まれることをご了承いただきたい。

 この映画の最大のインパクトは、絶対的エースであった平手の魂を削る圧倒的パフォーマンスと、作品づくりへのストイックさ、それがゆえに激しく消耗されていく姿だ。

 タイトルに「僕たちの嘘と真実」とあるが、その中心に描かれている平手自身は一度も嘘をついていない。自身のパフォーマンスについての葛藤、作品に対して納得ができるか否か、全て正直に言葉や態度で訴えてきていた。

 筆者は平手が欅坂46を脱退発表した直後から度々、その理由を“心身の限界”であると記してきた。欅坂46が昨秋発売しようとしていた平手9作連続センター予定だった9thシングルが幻に終わった原因とは関係なく、その次元を超越して彼女がいかに自らの身体に鞭を打ちながら欅坂46のために捧げてきたかが、映画の端々から感じ取れるものになっていた。

欅坂46の5年間 2時間の尺ではあまりに短い

パフォーマンス終わりにメンバーやスタッフに支えられ、介助を受ける痛々しい平手の姿が何度も映し出された/TOHO Visual Entertainment 公式YouTubeより
パフォーマンス終わりにメンバーやスタッフに支えられ、介助を受ける痛々しい平手の姿が何度も映し出された /TOHO Visual Entertainment 公式YouTubeより

 映画を見終わったファンからはSNS上で、平手が心身共に満身創痍だったことはこれまで公に見えてきた部分で分かってはいたが、想像の何倍も大変な状態にあったことに驚かされたという声と、ここまで頑張ってくれてありがとうという多くの感謝の言葉があがっていた(さらにいえば、映画は見せられる部分、すなわち氷山の一角だけを見せている。本当の平手の状態がどこまでのものだったかは、ドキュメンタリー映画といえども開示しきれてはいないだろう)。

 だからといって平手が様々な仕事を消化しきれなくなったことは許されるのかという問題についても、他のグループがエースやセンターが潰れないように、潰れそうになっても替えがきくように、策をきちんと講じていることを考えると、彼女を責めることはやはりできない。

 1人の少女にそこまで全てを背負わせ、ついに精魂尽き果てるまでに追い詰めたのが誰なのか。それを回避する手立てはあったのではないかと思わずにはいられないが、平手は最新のインタビュー(「ROCKIN'ON JAPAN」2020年10月号)でそうした人々を叩かないで欲しいと擁護している。

 筆者を含め、映画を見た多くのファンが感じていることは、欅坂46の5年間を収めるには、2時間という映画の尺ではあまりにも短すぎるということだ。全盛期のAKB48は2011年から16年まで1年おき、長くても2年程度の間隔でドキュメンタリー映画を公開してきた。デビューから爆発的人気を誇り激動の日々を送ってきた欅坂46というグループを丁寧に描くのだとしたら、同じくらいの間隔での映画製作が必要だったように思う。

 しかし、14歳のデビュー時から脱退時の18歳までという多感な時期に心身を蝕まれていった平手の在籍期間中に公開を行うことは、あまりに残酷すぎて不可能だったのではないだろうか。

こじらぶ
記事一覧
ライター
ジャニーズ、秋元康系女性アイドル、ローカル、地下アイドル等数々の現場を経験。Xでもご意見を募集しております。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


「GTOリバイバル」注目の新人イケメンは?松嶋菜々子は本当に出るのか
 反町隆史主演「GTO」が26年ぶりに帰ってきます。反町演じる元ヤン教師・鬼塚英吉がさまざまな問題を解決する学園モノで、...
ドヤ顔のアユミとヘイヘイブギー歌唱シーン温存の理由がわかる回だった
 昭和31年、大みそか。第7回オールスター男女歌合戦当日。スズ子(趣里)は、楽しみに会場へと向かう。スズ子が楽屋で支度を...
桧山珠美 2024-03-22 14:30 エンタメ
最終回秒読み…スズ子はブレずにお人よし、NHKと沼袋勉の手腕いかに!?
 愛子(このか)は、翌日の体育の時間に足の早い転校生と競争することになっていた。しかし、勝てる見込みがなく、愛子は学校を...
桧山珠美 2024-03-21 16:07 エンタメ
和田勉が転生したら中村倫也に!? 強烈インパクトで霞んだ礼子娘の初登場
 東京ブギウギのヒットから9年、ブギブームも下火になってきつつある中、スズ子(趣里)や羽鳥善一(草彅剛)のブギは古いとい...
桧山珠美 2024-03-18 14:30 エンタメ
「光る君へ」主人公バージン喪失!大石静氏が描く平安エロ&バイオレンス
 NHK大河ドラマ「光る君へ」は、平安中期の貴族社会を舞台に、吉高由里子演じる主人公のまひろ(紫式部)の生涯を描くもので...
沢尻エリカ不死鳥の如く女優復帰!大衆は真似できぬ人生転落リアルショー
 2月25日、沢尻エリカの女優復帰作となった主演舞台『欲望という名の電車』が千秋楽を迎えました。  「『残念プロフ...
堺屋大地 2024-03-16 06:00 エンタメ
NHK大阪が誘拐未遂事件をぶち込んだのなぁぜなぁぜ? かつ丼コント?
 誘拐犯が捕まってから、愛子(このか)は3日間も学校を休んでいた。スズ子(趣里)は、学校に行くようにと言うが、愛子は友達...
桧山珠美 2024-03-15 14:30 エンタメ
“テレ朝ドラマ”常連・ホンモノの刑事よりも刑事な内藤剛志、降臨!
 大野(木野花)が受けた電話は、3万円払わなければ、愛子(このか)を誘拐するという脅しの電話だった。そして、警察には伝え...
桧山珠美 2024-03-13 14:30 エンタメ
りつ子スパークのラインダンス必見!ワクワクズキズキと笑顔が溢れる回
 羽鳥善一(草彅剛)作曲二千曲記念ビッグパーティーの日が近づいてくる。羽鳥はスズ子(趣里)たちに、パーティーで余興をして...
桧山珠美 2024-03-11 15:30 エンタメ
“ユーミンドラマ”で見せたクソ女の夏帆、そして金子大地と中島歩に注目!
この投稿をInstagramで見る 【公式】「ユーミンストーリーズ」オムニバス夜ド...
真木よう子“まっけんセクハラ発言”はわざと?昭和の価値観をエンタメ化説
 ドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』(2007年/フジテレビ系)や『最高の離婚』(2013年/同)などでの演技が好...
堺屋大地 2024-03-09 06:00 エンタメ
第111回ブギウギの“三大なぁぜなぁぜ”…畑仕事する農家の手じゃない!
 梅吉(柳葉敏郎)が亡くなった。葬儀では松吉(木内義一)が号泣しながら、遺影の自慢をする。  そんな中、スズ子(趣...
桧山珠美 2024-03-08 15:50 エンタメ
死の間際までユーモア忘れず、父娘で歌った「父ちゃんブギ」
 久しぶりに香川に戻ったスズ子(趣里)は、梅吉(柳葉敏郎)が写真館を切り盛りし、繁盛していた話を聞く。梅吉が大切にしてい...
桧山珠美 2024-03-07 15:40 エンタメ
NHKさん、経費削減のあおりですか?スズ子の米公演シーンは写真だけ
 アメリカ行きを決めたスズ子(趣里)だったが、愛子(小野美音)は置いていかれることにすねてしまう。  旅立ちの直前...
桧山珠美 2024-03-05 15:35 エンタメ
“電撃婚”大谷翔平の心を射止めた妻はプロ中のプロ彼女。目標はダル夫婦?
 2月29日16時42分のことでした。NHKで衆院政治倫理審査会(政倫審)の中継を見ていたら、<大リーグ・大谷翔平選手 ...
【台湾ルポ】台湾人の祈り方「拜拜」が酔狂的でエキセントリックすぎる!
 日本からのアクセスも良く、週末や連休を利用して旅行が楽しめる海外として人気の「台湾」。台湾グルメを満喫したり、観光スポ...
2024-03-07 18:24 エンタメ