「友近サスペンス劇場」も大反響 “現代の事象を昭和風映像で表現する”刑事ドラマが話題の背景
“実在しない名作ドラマ”を制作し届ける企画「架空名作劇場」内のドラマ「人情刑事 呉村安太郎」(テレビ東京系)が8月11、18日と2週にわたって放送された。
同ドラマの最大の特徴は、1980~90年代の映像表現と現代性とをマッシュアップした作風。髪形や服装、小道具、芝居の仕方、VHS時代を思わせるソフトフォーカス風の加工など過去作品にしか見えない映像だが、描かれているのは現代の社会問題という実にユニークな世界観だ。
主人公の呉村安太郎(アルコ&ピース・平子祐希)は、人情で事件を解決へと導くシングルファーザーの刑事。第1夜は団地の一室で夫の遺体を発見した妻とフードデリバリーの男との秘密にまつわる事件、第2夜は過去の闇バイトがカギとなる大学生刺殺事件を追う物語だった。
いずれも、おのおののキャラクター性を感じさせる目線、現場周辺を洗う(調査する)刑事たちの光景、人情を重んじるがゆえにカッとなって部下を叩く呉村、話を展開させるために吐き出される説明ゼリフの味わい、犯人が自白したタイミングで一斉に姿を現す部下たちなど、往年の刑事ドラマを思わせるシーンが次々と登場する。
冒頭で軽く事件に触れ、オープニング曲とともに各話のタイトルとメインキャストを紹介し、事件が解決した後には必ずスナックのママ(友近)と談笑するシーンを経てエンディングを迎える。「はぐれ刑事純情派」(東映/テレビ朝日系)を連想させる同ドラマは、明らかにパロディーとは一線を画す面白さがあった。
テレビ東京とタッグを組んだのは、クリエーティブチーム「フィルムエスト」。昨年、同チームによるYouTube動画「友近サスペンス劇場」が440万回再生超え(今年8月23日時点)の大反響を呼び、今回初めて長編地上波番組を手掛けることになった。
友近がフィルムエストを知ったのは、後輩芸人のトニーフランクから「好きそうなチャンネルありますよ」とYouTubeチャンネル「フィルムエストTV」を紹介されたことがきっかけ。現代の事象を昭和風の映像で表現するその世界に魅了され、友近はすぐに主宰の西井紘輝氏に「何か一緒にできないか」と声を掛けたという。
そもそも友近は、荒唐無稽な展開と強烈な演出で知られる1980年代の「大映ドラマ」、五社英雄監督の「極道の妻たち」や「吉原炎上」、女性の犯罪者に迫る番組などを好んで見ていた。実社会を反映しつつも、脳裏にこびりつく違和感。それは、架空の大物演歌歌手・水谷千重子の活動をはじめとする友近の芸風にもつながっている。
テレビで頻繁にアーカイブ映像が流れ、フェイクドキュメンタリーが支持される時代、友近がフィルムエストと接点を持ち脚光を浴びるのは必然だったのかもしれない。
(お笑い研究家・鈴木旭)
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