#2 「我慢してあげている」という優位の感覚と被害者意識

うかみ綾乃 小説家
更新日:2019-08-26 12:18
投稿日:2019-06-07 06:00

だんだん断る行為そのものに疲弊して

 私自身は、若い頃から《したくない側》でした。

 性的な好奇心も性欲もあるものの、セックス行為は常にストレスとプレッシャーの対象でした。

 《したくない側》にとってのセックスは、たとえば運動の苦手な人にとってのジョギングのようなもの。

 たまに自分のペースで散歩するのは楽しいものの、定期的に他人と走ることを義務づけされると、憂鬱になってしまう。

 けれど好きな人は一緒に走りたがっている。断り続けるのも申し訳なく角が立ち、だんだん断る行為そのものに疲弊してくる。

 そこでたまに頑張って誘いに乗ってみる。

 最初から「今日は頑張ってサービスする日」と割り切っているので、相手に合わせてゴールには辿り着くことはできる。

 ああ、よくやった自分。相手も満足してくれたようだ。良かった。

 ただ、ここで相手は「走るとやっぱり気持ちいいでしょう?」と爽やかな笑顔を向けてくる。「健康のためにも、これからももっと走ろうね」

 ……いや、走らないせいで早死にしたって、こっちはいいんだ……

 一週間後、また誘われる。今度は断らせてもらう。すると「どうして? この前は楽しそうに走っていたのに」「私(僕)と走るのが、もう嫌なの?」

 ……辛い……

 相手を傷つけることも、この煩わしい状況も避けたくて、一ヶ月に一度は走るように妥協する。

 けれどその日が近づくにつれ、「ああ、来週か……う、もう明後日か」と気持ちが塞いでくる。

うかみ綾乃
記事一覧
小説家
2011年「窓ごしの欲情」(宝島社文庫)で日本官能文庫大賞新人賞受賞。’12年「蝮の舌」(悦文庫)で第二回団鬼六賞大賞受賞。コラムニスト、映画の原作&脚本家としても活躍中。近著に「蜜味の指」(幻冬舎アウトロー文庫)。2020年から原作映画『モンブランの女』(『モンブランを買う男』AubeBooks)が全国で公開中。
ブログ http://ukamiayano.blog.fc2.com/

関連キーワード

ラブ 新着一覧


【漫画】「僕のマーメイド」元夫から届いたポエムメールに絶句…なにこれ?『元夫から「ロミオメール」が届いた件について』#3
【『60点の夫婦でいいのに』あらすじ】 『あの頃、まだ若い僕たちはなにが真実の愛なのかもわからず、ただ彷徨っていたね…...
「もう友達には戻れない」30代女性が忘れられない冬の夜。ふたりの“関係が変わった”背徳感
 クリスマスが近づくと、ふと昔の恋を思い出してしまう人もいるのではないでしょうか。  今回はアラサー女性が大学時代...
おがわん 2025-12-22 08:00 ラブ
【漫画】バカはそっちだろ!新婚早々、目撃した“最悪”の現場『元夫から「ロミオメール」が届いた件について』#2
【『元夫から「ロミオメール」が届いた件について』あらすじ】 『あの頃、まだ若い僕たちはなにが真実の愛なのかもわからず、...
聖夜に冷めるわ!クリスマスを台無しにする呆れたLINE3つ。「プレゼントは俺」って言う男いるんだ…
 街中がイルミネーションに包まれて、ロマンチックなムードが高まるクリスマス。心ときめくメッセージが届くのを期待していたの...
恋バナ調査隊 2025-12-21 08:00 ラブ
「俺が損してる」妻の“だらしなさ”を叱るのはモラハラか? 帰宅拒否寸前、44歳夫のストレス
「冷酷と激情のあいだvol.277〜女性編〜」では、結婚2年目にしてモラハラ疑惑が浮上した夫と、離婚以外の方法で問題を解...
並木まき 2025-12-20 11:45 ラブ
「お前は犬以下だな」夫のモラハラ発言が耐えられない! 40歳妻がそれでも離婚を拒む“打算的な”事情
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2025-12-20 11:45 ラブ
【漫画】結婚は“ゴール”じゃない…バツイチ女が「恋愛不要」と言うワケ『元夫から「ロミオメール」が届いた件について』#1
【『元夫から「ロミオメール」が届いた件について』あらすじ】 『あの頃、まだ若い僕たちはなにが真実の愛なのかもわからず、...
「熱い愛情表現がクセに…」脱いだら全身タトゥー!40代女性が“元ヤン男子”を手懐けた3つのコツ
 ヤンキーばかりが共同生活を送るNetflixの恋愛リアリティー番組『ラヴ上等』が大きな話題を呼んでいます。  マ...
内藤みか 2025-12-19 11:45 ラブ
「どちらも捨てられない」恋に溺れた男の苦渋の選択。恋人は“脳検査”まで…56歳が土下座に追い込まれた理由
 世の中、不倫の話題で持ちきりだ。2024年に実施された調査によると、既婚男性の約2人に1人、既婚女性の約3人に1人が婚...
蒼井凜花 2025-12-19 11:45 ラブ
6割の女性が「オープンマリッジ」にNo、でも1割は賛成! “円満成立”するためのカギは?
 最近、「オープンマリッジ」という言葉を耳にする機会が増えています。結婚していても、パートナー以外と恋愛をしてもよいとい...
恋バナ調査隊 2025-12-17 08:00 ラブ
う、羨ましい~! 2025年、最高の恋愛エピソード6選♡ 10歳年下彼と交際、推しの連絡先をゲット
 他人の恋の自慢話なんて聞きたくない! 羨ましくなるだけ! という領域を超え、他人の恋バナでいいから聞きたい! きゅんを...
恋バナ調査隊 2025-12-16 08:00 ラブ
【2025年】私史上最大の“恋愛”失敗談を大告白!貢ぎすぎて借金、既婚者に騙された…
 2025年、恋が実った幸せな人もいれば、失敗に終わってしまった人もいるでしょう。今回は後者のエピソードを募集しました。...
恋バナ調査隊 2025-12-15 08:00 ラブ
「無駄が多すぎる!」だらしない妻に限界寸前の38歳夫。つけっぱなし、出しっぱなし…貯まらないお金にため息
「冷酷と激情のあいだvol.276〜女性編〜」では、日々の出費に細かく指示を出す夫が、その裏では自分だけマッサージやサプ...
並木まき 2025-12-13 11:45 ラブ
「夫の節約は間違ってる!」“おつとめ品”は買いたくない39歳パート妻の不満。働いているのは何のため?
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2025-12-13 11:45 ラブ
「ホテル集合で」って舐めてんの? クリぼっち女の心をエグるLINE3つ。父の優しさが逆にツラい!
 恋人がほしいシングル女子にとってのクリスマスは、独り身を強く実感する日ではないでしょうか? そうした中こんなLINEが...
恋バナ調査隊 2025-12-13 08:00 ラブ
「女の“賞味期限”が気になって…」幸せな一夜が地獄へ。37歳女性を襲った“残酷すぎる”言葉
 世の中、不倫の話題で持ちきりだ。2024年に実施された調査によると、既婚男性の約2人に1人、既婚女性の約3人に1人が婚...
蒼井凜花 2025-12-12 13:21 ラブ