更新日:2023-12-08 14:26
投稿日:2023-12-01 06:00
性悪女の夫が現れて
――涼介さん、お久しぶりです。
私はテーブルから手を振ると、涼介さんは私より先に、隣に座るユリさんのほうに目を遣ったんです。
――あれ? ひとりじゃなかったのかい?
涼介さんは戸惑いを隠しませんでしたが、そこは大人の対応ということで、テーブルに着いたんです。横を見ると、ユリさんがうつむいていました。
――ええ、急遽、予定変更で……相変わらず、クールでカッコイイ。
そう言った時でした。
――おい、ユリ……お前、どうして?
スーツ姿の和也さんが現れたんです。
とっさに耳元で囁いて
――あ、あなた……!
ユリさんは立ち上がりました。
――お前、学生時代の恩師の誕生日だと言ってなかったか?
――あなたこそ、残業で遅くなるって……。
2人の会話に、周囲がざわめいたのは言うまでもありません。私は内心、大喜びです。
会場からいち早く逃げ出したユリさんを、和也さんが追いかけます。
――和也さん、待って。
私はとっさに和也さんに駆け寄り、耳元で囁きました。
――今の女性はお知り合い? 彼女、中絶したばかりみたいだから、無理しないでと伝えて。
――中絶?
どんな修羅場になるか楽しみで仕方ない
彼は眉をひそめました。
――ええ、あ……私、合コンに戻るわね。
そこまで告げて、テーブルに戻りました。
もう私のシナリオ通りの大展開です! この後、夫婦でどんな会話がなされるのかと思うと、楽しくて、楽しくて……ついお酒も進んでしまったんです。
性悪な女と思うでしょうが、あの時は最高の気分でしたね。私を怒らせると地獄に落ちるのよ! いくども毒づきました。で、ついでに憮然としていた涼介さんに接近したんです。
彼が化粧室に立った時、私もさりげなく後を追って……」
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