元TBSアナ→画家に転身 伊東楓さん「心の中の闇が創作欲をかきたてる」

コクハク編集部
更新日:2024-10-04 11:02
投稿日:2024-01-19 06:00

心の中の「闇」と「旬」に対する恐怖

 2020年4月から始めた公式Instagramでは欧州各国に観光に出かけてはクシャっと笑ったり、モデルさながらにポージングする姿が投稿されていて、きらっきらの眩い魅力を発信している。

 しかし、その一方で、投稿されている作品の印象は、色彩豊かながら暗さを伴う。どことなく影を感じさせるのだ。

定期的にやってくる“闇期”

「心の中に闇があるんですよ、ちゃんと。紛れもなく、闇の部分を抱えています。基本的には前向きなモチベで根っからの明るい人間。

 ただ昔から自分にとっての『旬』を意識すると、その『旬』は今かもしれないという恐怖も感じるので、時間を惜しむように常にマッハで走っています(苦笑)。

 その反動なのか、定期的に“闇期”が訪れ落ち込みます。精神的な負荷はなかなかのものですが、今では落ちる瞬間やバグる瞬間もわかるぐらいになっていて慣れたものでもある。すべて覚悟の上で受け入れられています」

それでも“闇期”に落ちている時こそ好機

 今月、東京で個展を開催する。アナウンサーを辞めた3年後の“凱旋個展”となれば、海外生活も順調で、豊かで華やかな人生を送っているように映るのだが……。

「ベルリンの街がいくら水が合うからといっても、異国の地。『なんとかなるでしょ』でうまくやれるほど生易しい環境ではないと実感しています。でも不思議なもので、闇期に落ちている時こそ好機。作品を生み出すことで浄化するというか、自分が目指す表現ができることを知りました。

 絵と詩は私の一部。矛盾するようですが、生み出すことも含めて、苦しみに救われています」

【作品特集】伊東楓さんが制作した色彩豊かな作品はこちらからもご覧いただけます

 ドイツから日本を見ることで、日本の文化や人間性、技術を改めて好きになったと話す。

日本のこれからを豊かなものにしたい

「今あるものはすべて先人たちの功績です。私たちはその恩恵に授かっているわけですが、このまま社会が停滞し成長せずに終わらせてしまったら日本はどうなるのか不安になります。

 日本の良さを守りつつ、技術も人も文化も発展的に循環させていかなければ、明るい未来はありません。

 心の底から日本のこれからを豊かなものにしたいと思っています。そのためには若者の意識を変えることも必要。ただ指南すべき人たちが、一歩引いた安全な場所から『甘えるな、頑張れ』と言ったところで、彼らに響くわけがありません。

『甘えるな』と言うからには、私が一番苦労していなければならない。火中に身を投じ、困難に立ち向かう姿を示さなければ、説得力がありません。相手の心には届かないし響かない。

 これからも、何かを手放すことを恐れず、まずは『甘えんな』って自分自身を鼓舞しつつ、時折、闇に落ちながらいくんだろうなあって思ってます(苦笑)」

グズグズな伊東楓も見せる

 今回の個展は「グズグズな伊東楓を見せるのもテーマ」だと言う。

 だれもが羨むような容姿と才能を兼ね備え、行動力の塊のような人にも欠けているところがあるのだ。

 ダメな自分を認め、必死にもがく姿もまた、美しい。

(取材・文=小川泰加/コクハク編集部)

 いとう・かえで▽1993年、富山県生まれ。立教大文学部卒業後、TBSテレビにアナウンサーとして入社。退職後の2021年3月、自身初となる絵詩集「唯一の月」(光文社)を出版。同10月から拠点をドイツに移す。

 現在は東京・銀座の「東急プラザ銀座」で自身3年ぶりの個展「サントリー ジャパニーズクラフトジン ROKU<六>/日常を旅するホテル 東急ステイ presents 伊東楓展『人は、いつまで夢を見ていられるのだろう』」を開催中(~1月28日まで)。

コクハク編集部
記事一覧
コクハクの記事を日々更新するアラサー&アラフォー男女。XInstagram のフォローよろしくお願いします!

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


懐かしの「アジャパー」ポーズを激写! お茶目な“たまたま”にほっこり
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
仏様のお供えは「花」とは限らない! もうすぐお彼岸、仏花にまつわるケンミンSHOW的な話
 ねこ店長「さぶ」率いる我がお花屋は、神奈川の仏事に手厚い土地柄の片田舎にあります。とりわけ、夏のお盆からお彼岸月の9月...
ロボット掃除機より優秀!? “激落ちくん”のお掃除スリッパが突き付けた我が家の床の現実
 話題のコスメや、広告でよく見かける化粧品や日用品。「webでよく見るあの商品、本当にイイの?」「買ってみたいけれど、口...
私の心が狭いのか? 甥っ子が放った「お金持ちだから好き」発言にモヤモヤした話
 あっという間に、9月ですね。早い! 夏休みの帰省で姪っ子や甥っ子に会った方も多いのでは。  筆者にも、5歳の甥っ子が...
テーブル下でこっそり放熱中…ステンレスで涼をとる賢い“たまたま”君
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
子どものいない祭り
 都会の喧騒の中で見つけた祭り。  そこにははしゃぐ子どもの姿はなかった。  たまにはいいかな、自分のためだ...
ほっこり癒し漫画/第81回「センセッ ジカンデスヨッ」
【連載第81回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽのお...
「鉄漿」って読める? ヒント:最古のメイク
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
子ども同士のLINEにもドラマが!将来の夢はスパイに忍者…ピュアな感じがたまらん
 最近では、小学生でもスマホを持っている子が増えていますよね。連絡ツールとして友達とLINEを使いこなし、時代は変わった...
女はお嫁さん要員? 年収800万でも「行き遅れ」と見下される田舎の地獄
 西新宿の高層ビル内にある大手食品会社のデザイン室に勤務し、初台に暮らす咲子。実家とはほぼ縁を切ってはいるものの、悠々自...
毒親の介護をしたくない 実家から逃げた女が「決別」のため払った金額は
 西新宿のビル内にある大手食品会社のデザイン室に勤務し、初台に暮らす咲子。実家とはほぼ縁を切ってはいるものの、おひとりさ...
田舎を捨てた「独身女」は不幸ですか 絶縁した家族が来て…今さら何の用?
 いまだ残暑が残る9月の初め。月曜日のAM7:30。  すでに汗ばむ陽気に包まれながら、西村咲子は新宿西口の高層ビ...
職場で飛び交う「大人のちくちく言葉」4選。無意識に同僚・後輩のモチベを下げてない?
 人の気持ちを不快にさせる、ちくちく言葉。子どものちくちく言葉は「アホ」「バカ」「マヌケ」などストレートですが、大人にな...
“たまたま”に見覚えあり!尾道市立美術館の「ケンちゃん」ではないかぃ?
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
大優勝!秋から元気な“開運最強”花5選。一輪挿しでも存在感たっぷりで映える1本を紹介
 台風10号の遠隔豪雨は、神奈川にあります猫店長「さぶ」率いる我がお花屋にも様々な影響を及ぼしました。大雨を睨みなが...
みんなどうしてる? 大地震の経験者が語る我が家のリアルな地震対策7選
 南海トラフ地震の危機感が高まる中、「我が家も地震対策を見直さないと」と思っている人は増えているようです。ただ、実際に被...