元TBSアナ→画家に転身 伊東楓さん「心の中の闇が創作欲をかきたてる」

コクハク編集部
更新日:2024-10-04 11:02
投稿日:2024-01-19 06:00

 元TBSアナウンサーで画家として活動する伊東楓さん(30)は現在、ドイツの首都ベルリンを拠点にしている。なぜ、ドイツなのか。

「好きなヨーロッパならどこでもよかったのですが、強いていえば、ドイツは過去に一度も行ったことがなかったから……」とちょっぴりバツが悪そうに話す。

 TBS退社後、ドイツ語もしゃべれないまま単身で乗り込み、制作期間中は自宅兼アトリエに引きこもる日々を送っている(前編はこちら)。

「アーティスト活動ならベルリンに行け」

 足がかりとして、ドイツ南西部のハイデルベルクという小さな町に3カ月の語学留学をした。出会った人々から言われたのは、「アーティストとして活動するならベルリンに行け」。実際に住んでみると、街の雰囲気と波長が合った。

「ベルリンには今もなお旧東ドイツ時代の名残りもあって、子育てや働き方、経済に関する考え方がまるで違うんです。ひとつのシティの中に異なる価値観が入り交じる、そんな混沌とした感じが私にはハマりました」

 渡独から半年。TBS時代の貯蓄を切り崩し、制作活動に没頭する中、何者でもない自分への不安をかき消したのは、現地法人のユニクロとの仕事だった。

ドイツのユニクロでも“飛び込み営業”

 ドイツでは、画家としての活動が1年にも満たない「ただの人」。相手からすれば、「Wer sind Sie?(あなた誰?)」だ。それでも“飛び込み営業”する度胸とバイタリティーで乗り越えた。

「10枚ほどの原画を持って、日本人アーティストがドイツのファッションに携わる意義を熱弁したらグローバル旗艦店とのコラボレーションが決まって……。

 無名画家のイラストがプリントされたTシャツやバッグがとても売れて、契約期間も延長されたんです。この仕事が決まらなかったら、いまも画家と名乗れていないかもしれません。私の中ではとても大きな成果でした」

深夜に帰宅しても1日30分は絵を描く

 TBSのアナウンサー時代、中居正広さんがMCを務める番組のアシスタントを任され、ホワイトボートに即興の似顔絵を描くコーナーを担当した。

 この仕事を機に、単なる“絵ゴコロのあるアナウンサー”ではなく、きちんと絵画について勉強したいと思うようになる。

 それからは深夜1時にロケから帰宅しようが、毎日30分は絵を描くことを自分に課した。すると「いつの間にか絵を描くという行為そのものが心の救いになっていて……。

 周りが用意してくれた台詞や台本ではなく、自らが描いた絵で勝負したいと思うようになりました。『私は表現者になりたいんだ』と気づいたら、もう止められませんでした」。

 持っているものを手放すのが怖いと思う以上に、捨てることによって得られる新しいものへの好奇心が勝った。ただし、立つ鳥跡を濁さず。退社まで1年かけ、極力周囲に迷惑がかからないよう配慮した。

「TBSの元女子アナ」という肩書き

「TBSのアナウンサーだったことは今も誇りです。会社を辞めて骨身に沁みたのは、『TBSの元女子アナ』という肩書きの効力です。

 アーティストの多くは恵まれない環境の中で自らと向き合って作品に取り組んでいますが、私は手札に強いカードを持っている。こうして取材していただける機会ひとつとっても、活かさない手はありません。

 TBSでの経験は、いまの私の土台であり、アドバンテージでもあります。画家として活動できているのは、これまでお世話になった方々のおかげなんです」

コクハク編集部
記事一覧
コクハクの記事を日々更新するアラサー&アラフォー男女。XInstagram のフォローよろしくお願いします!

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


うまっ…!期待薄で「メキシカンセット」買ったら当たりだよ。お店の味を再現できた【イオンで発見】
 9月に起こった令和の米騒動。スーパーのお米コーナーからお米が消えました。最近は近所のスーパーでも見かけるようになってひ...
LINEならではのビジネスマナー&言葉遣い。返信タイミングはメールよりシビアになりがちで…
 ビジネスシーンにおいても、LINEでのやりとりは日常茶飯事。  ただ、メールでのビジネスマナーは完璧でも、LIN...
共働き世帯は専業主婦世帯の約3倍! 女性が選ぶべき未来のための選択とは
 セックスレスやセルフプレジャー、夫婦の在り方をテーマにブログやコラムを執筆している豆木メイです。
目は合わせないけど…“たまたま”をチラ見せしてくれた美少年の太郎君にキュン
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
踏切の音
 黄昏る街。  踏切の音が懐かしいのは、一体なぜ?
「紅娘」って読める? ぜっっっったい読めないと思うやつです
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
悪口誤爆→既読スルーの沈黙が怖っ! 顔面蒼白…冷や汗が止まらない義母vs嫁のLINE3選
 世の中で一番LINE誤爆を避けたい相手といえば、「義母」ですよね…。夫と結婚している限り付き合っていかなければならない...
2024-09-22 06:00 ライフスタイル
【45歳からの歯科矯正】本当の苦行は1年半はめていたワイヤー矯正を外したあとだった
 昨年4月に歯科矯正(表側のワイヤー矯正)を始めて、1年半。ついにワイヤーとブラケットを外せることに。想定内のスケジュー...
独身にとって旦那のグチも育児話も「圧」。リスケ不要だからー!気遣いが逆にうざいLINE3選
 人への気遣いは、ときに迷惑になることもあります。これらのLINEがよい事例。相手にとってありがた迷惑な気遣いにならない...
モテは“たまたま”の大きさ次第? 経験豊富なイケニャンを激写
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
発達障害、情緒障害、認知症…花をお求めになるお客様から教わること
 猫店長「さぶ」率いる我がお花屋にはいろいろなお客様がやってまいります。  学校帰りに「ただいま~」なんて...
会長報酬は月500円。スタバのソイラテ買ったらほぼ終わり…商店会活動は「ご奉仕」です
 勢いとその場の流れで商店会会⻑を拝命(←ぶん投げられた?)することになり、まず何から⼿を付けるべきか考えてみた。 ...
大ピンチ!よくある裏垢誤爆5選。悪口を投稿するだけならまだかわいい?
 ここ最近、アインシュタインの稲田さんやフワちゃんが「裏垢を持っているのでは?」と疑惑をかけられていましたよね。世間では...
指先をあざとく香らせるネイルオイル術【調香師がタイプ別に解説】乾燥対策におすすめのアロマは?
 乾燥が気になり始めるこの時期は、意外と異性にも見られている指先を意識してみましょう。きれいなネイルをしていても手がかさ...
城からは一歩も出ないにゃん! 窓際で鳥を眺める“たまたま”王子
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
可愛らしい姿と屋号に思うこと
 久しぶりの帰省でふと目に入った、懐かしい光景。  なにか可愛らしい姿と屋号に小さな幸せを感じて。 【読まれ...