朝ドラヒロインは「大日本国防婦人会」と揉めるのがお約束

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2024-05-20 15:30
投稿日:2024-05-20 15:30

NHK朝ドラ「虎に翼」~第8週「女冥利に尽きる?」#36

 結婚した寅子(伊藤沙莉)は弁護の依頼も来るようになり順調な日々を送る。

 ある日、手伝いとして働くよね(土居志央梨)と共に、子の親権を義父と争う女性の依頼を引き受ける。

 両国満智(岡本玲)は夫に先立たれ、しかも亡き夫の子を妊娠中。金策に困り果てて夫の友人を頼ったが、「著しき不行跡」として義理の両親から訴えられた。

 彼女の味方として張り切る寅子だったが、そんな寅子を優三(仲野太賀)は心配していた。

【本日のツボ】

大日本国防婦人会

 ※※以下、ネタバレあります※※

 今週は昭和17年1月からのスタートです。花江(森田望智)が「大日本国防婦人会」のたすきをつけていたのは、いかにも、という感じがします。これまでの朝ドラでは、戦争が絡むと必ず、ヒロインまたはその周辺と国防婦人会が揉めるのがお約束でした。

 前作品の「ブギウギ」でも、茨田りつ子(菊地凛子)が派手過ぎる服装を注意され、揉めたのは記憶に新しいところ。「カーネーション」ではミシンを取り上げられました。なので、朝ドラ視聴者は、大日本国防婦人会と聞くと、反射的にピキッとしてしまう傾向にありますが、よもや身内にいるとは! 寅子と花江が揉めなければいいのですが…。

 2021年のNHKスペシャルで、「銃後の女性たち~戦争にのめり込んだ“普通の人々”~」という「国防婦人会」の女性たちを描くドキュメンタリーがありました。それによれば、女性たちが国策に利用されていたのでは、ということでした。

 これまで、社会で必要とされて来なかった女性たちが、国防婦人会の活動をしながら、社会で必要とする喜びを知ったことで張り切った、と、そんな見方もあるようでした。

 寅子が優三を前に、「あ~、もういつになったら女の人ばかりがつらい思いをする世の中が終わるのかしら」と嘆く場面もありましたが、お国のために、と、疑うことなく活動していた国防婦人会。花江がのめり込んでいきそうで、ちょっと怖いです。

岡本玲は15分の間に豹変!

 怖いといえば、寅子のおかげで裁判に勝った依頼人の両国満智が豹変したのは怖かったです。「女が生きていくためには悪知恵が必要だって。フフフ、これからも頑張ってくださいね。フフフ」ですから。

「これは明らかな過失。失態だ。君の失態が、誰かの人生をつまずかせてしまったことを反省すべきだ」とめずらしく雲野(塚地武雅)弁護士も強い口調で注意していました。

 それにしても、弱い女性のためにと頑張った寅子なのに、「やっぱり女性の弁護士さんって手ぬるいのね」はひどい。岡本玲、キライになりそう(笑)でした。

 時を戻して、寅子に「寅ちゃん、深呼吸。決めつけて突っ走ると思わぬヘマをするから」と言ってくれた優三はさすがです。

 寅子の一番の良き理解者。未だ「社会的地位を得るための結婚」で、優三は寅子には指1本触れていないようですが…。

 寅子が優三を意識しているのは明らか。明日あたり…。期待しましょう。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


旧ジャニ会見から1年半、STARTO社の再興成否…CD売上と人権意識から考察、ファンは一体何を望む?
 2023年9月および10月、旧ジャニーズ事務所は創業者問題で2度記者会見を開いた。その後、同社所属タレントのテレビ・C...
こじらぶ 2025-04-12 06:00 エンタメ
「あんぱん」阿部サダヲの配合絶妙な演技。高知つながりで“しょくぱんまん”登場!
 元気のない家族のために力を貸してほしいというのぶ(永瀬ゆずな)の頼みに、草吉(阿部サダヲ)は1回きりの約束であんぱんを...
桧山珠美 2025-04-09 17:20 エンタメ
『あんぱん』RADWIMPSの主題歌は本当に「合っていない」のか? 正統派・朝ドラOPの真逆を貫いた意味
 2025年3月31日より、NHK連続テレビ小説『あんぱん』の放送が開始された。国民的キャラクター「アンパンマン」生みの...
「R-1」さや香・新山や吉住らベテラン勢はなぜ負けた? 売れっ子は予選で有利、決勝で不利な理由
 最もおもしろいピン芸人を決める「R-1グランプリ2025」(フジテレビ系)が3月8日に開催された。決勝常連組やベテラン...
帽子田 2025-04-09 09:48 エンタメ
ヤムおんちゃん草吉はあんぱん代をきっちり集金。ジャムおじさんとは違う“先導”に期待膨らむ
 草吉(阿部サダヲ)のあんぱんを食べて、生きる力をもらった朝田家。羽多子(江口のりこ)は内職の仕事を始め、釜次(吉田鋼太...
桧山珠美 2025-04-07 17:20 エンタメ
「あんぱん」ウラの見所~初週からブチかまし!細部に神経が行き届いた作品だと印象付けた中園脚本
 結太郎(加瀬亮)があの世に旅立ち、悲しみに暮れる朝田家。しかし、のぶ(永瀬ゆずな)は一粒の涙も流さなかった。そんなのぶ...
桧山珠美 2025-04-05 06:00 エンタメ
“百戦錬磨”香川照之ゆえの提案「全6話、スイッチを仕込んでいます」【主演ドラマ『災』インタビュー】
「連続ドラマW 災」(WOWOW、6日22時スタート)は、湿り気を帯びた陰鬱な雰囲気とぞわりとする劇伴が感情を揺さぶる不...
朝ドラ「あんぱん」の描写に25年前の“名台詞”が…CA役だった松嶋菜々子の変わらぬ美貌はさすが過ぎる
 ある日、のぶ(永瀬ゆずな)は千尋(平山正剛)とシーソーに乗る嵩(木村優来)を見かけるが、千尋が軽くて動かない。そこでの...
桧山珠美 2025-04-02 17:20 エンタメ
「あんぱん」ヒロインの着物がオレンジ色の納得。ドキンちゃんのモデルゆえの演出
 昭和初期、家族の愛情をたっぷり受けて育った少女が高知の町中を勢いよく駆けていく。「ハチキンおのぶ」こと朝田のぶ(永瀬ゆ...
桧山珠美 2025-03-31 17:20 エンタメ
朝ドラ「あんぱん」男性俳優陣がめちゃ豪華! 赤楚衛二路線で大ブレーク必須な最注目の若手は?
 31日(月)から新しい朝ドラが始まります。その名も連続テレビ小説「あんぱん」。あの「アンパンマン」の作者やなせたかしと...
【おむすびにモヤっと】伏線をまき散らして放送終了、そしてモヤモヤが残った。結はとんでもなくヤベ~やつ?
 歩(仲里依紗)から詩(大島美優)を引き取ろうとするのは甘かったかもしれないと聞いた結(橋本環奈)は、仮定の話を気にして...
桧山珠美 2025-03-29 06:00 エンタメ
【写真特集】倖田來未の美し過ぎるバスト♡ギリギリショット5連発
【この写真の本文に戻る⇒】40代の倖田來未が《全盛期と変わってない》と話題に…20年前と同系ファッションでも、なぜ痛くな...
2025年「冬ドラマ」を調査! 独走状態の『ホットスポット』、疲れた大人世代に『御上先生』は難しかったか
 2025年1月よりスタートした冬ドラマ。惜しまれつつ最終回を迎えたドラマがあった一方で、期待されていたものの視聴率が振...
【おむすびにモヤっと】一瞬の表情で孤独をにじませる歩。最後の最後でヒロイン逆転!?
 結(橋本環奈)は大腸がんで入院している患者・丸尾(細川岳)を担当し、食欲不振の対応に苦慮する。  一方、歩(仲里...
桧山珠美 2025-03-26 17:20 エンタメ
【おむすびにモヤっと】最終週は最後の顔見世? 糸島移住“言い出しっぺ”の愛子さん台詞を深読みすると…
 福岡・糸島に移住することが決まった聖人(北村有起哉)と愛子(麻生久美子)。ヘアサロンヨネダを翔也(佐野勇斗)が継ぐこと...
桧山珠美 2025-03-24 17:20 エンタメ