勝ち組ママ友が放った屈辱的な一言。私を「一般人」と一緒にしないで!

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2024-08-19 11:57
投稿日:2024-08-19 06:00

なぜこんな子が名門校に入れた?

「ごめんなさいね。私、娘は自由に育てているから」

 葵には、基本的にNHK以外を見せていない件を話すと、由香は来良からあっけらかんと謝罪された。

「自由…それでうちの学校に小学校から入ったのはすごいですね。幼児教室を掛け持ちしても難しいはずなのに」

 由香は皮肉を交えながらも来良に尋ねる。愛舞の存在を認識してから、純粋にも疑問だったことだから。なぜ、彼女たちのようなご家庭が我が校との縁を得られたのかが不思議だった。

「それがね、しつけを丸投げしていたお教室の先生に勧められるがまま受験しただけなのよ。愛舞は、賢い子だからペーパーテストの結果が抜群に良かったんじゃないかな?」

「…そんなことあるの?」

 突然言葉がくだけた来良に、由香もつられてしまった。

「だってそれしか考えられないもの。まぁうち、子供は一人って決めてるし、お金の面でも余裕はあるから、ラッキーだなって…」

 聞けば、山田さん夫婦は共に地方出身。大学からの早稲田の同級生で、それぞれ有名なメディア関係の企業に勤務しているのだという。聞いてもいないのにそう話してくれた。当然、愛舞は入学前、保育園に通っていたそうだ。

 ――やっぱり、一般企業の共働きの方だったんだ。

 名前や住んでいる場所だけでの偏見はよくないと、訪問に備えて、エルメスのティーセットを新調し、赤坂のしろたえでケーキを用意した。

 だが、それは無駄だったと落胆する。

 偏見は、正しかった。

「一般人」と一緒にしないで

 Tシャツや裸足での来訪は、「一般の人」にとってはなんてことないのかもしれない。だけど、この世界に誇りを持つ由香にとって、彼女たちの言動は耐えがたいことだった。

 垣間見える品のなさ――娘をお嬢様学校に入れたのに、これでは意味がない。

 そんな由香の怒りに追い打ちをかけるように来良は声を弾ませた。

「でもね、愛舞と仲良くなったのが葵ちゃんでよかった。私ね、大宮さんとは通じるところがあると思っていたのよ」

「…は?」

 由香にとってはバカにされたような気分になった。適当で勝手な同族認定だと。

 必死に背伸びして、仲間であろうと思いたい気持ちは理解できる。かつて、お嬢様大学に入ったばかりの自分がそうだったから。

 だが今は、違う。自分は医師の家柄の一員で、番町エリアに住み、義母がOGの伝統的なお嬢様学校に幼稚園から通う娘の母なのだ。

私には同じレベルのママ友がいる

 この怒りを面に出し、同じステージに降りてはならないと由香はグッと堪えた。

 キリスト教の精神に基づき、他者を尊重すること――娘の通う学園の理念だ。余裕を装い、必死で笑顔を取り繕った。

 来良とはその後、学校のママ友の噂話で場を繋ぎ、夕方、彼女たちはやっと帰宅をしてくれた。

 来良とLINEは交換したが、今後、交わす機会はほとんどないだろう。

 由香には他にも自分と同じレベルのママ友がいるのだから。

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

ライフスタイル 新着一覧


透明ボードの下から失礼しますよ♡ 不思議&かわいい空飛ぶ“たまたま”
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
未来のような街の先に…
 未来のような街は、まるで先の見えないトンネルのよう。  その先にあるものは明るいものであってほしい。
ほっこり癒し漫画/第77回「もふもふサマー」
【連載第77回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽのお...
【難解女ことば】蒲魚、何て読む? 予測変換出てこない…
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
8年前に“ゆるFIRE”した男 新NISAより確実なリターンは自分への投資
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(64)。多忙な現役時代を経て、56歳...
母親は夢を諦めなきゃダメですか?夫を「支えてあげて」の言葉が悔しい
 かつて漫画家を目指していた夫婦の絵里奈と拓郎。双子の子供ができたことを機に、夢を諦め堅気の生活をしている。  夜...
浮気より酷い夫の裏切り SNSには私の知らない「もう1人の彼」がいた
 かつて漫画家を目指していた夫婦の絵里奈と拓郎。双子の子供ができたことを機に、夢を諦め堅気の生活を暮らしている。 ...
妊娠妻の電話に出ない…いまだ夢見る漫画家志望の夫とワンオペ妻の軋轢
 初夏の印象が霞むほどの汗ばむ陽気の午前中。  林絵里奈は井の頭公園の池のほとりのベンチに腰を掛け、在りし日のデー...
「晩ごはん何?」焼肉、すき焼き却下でもやし炒め! 家族間攻防LINE3戦
 仕事で疲れて帰宅した時、一番楽しみなのは晩ごはんですよね! とはいえ、主婦としては毎日の晩ごはんのメニューを考えるのも...
【ファミマ】コンビニ衣類正直レビュー、ショーパンゆる履きはOKだけど
 ファミリーマートとファセッタズム(FACETASM)のデザイナー落合宏理氏が共同開発した衣類「コンビニエンスウェア」。...
【独自】すいかばか初の“夕方専用すいか”、気になる出来栄えは?
 すいか生産量全国47位、ごくごくレアな山梨県ですいか作りに情熱を注ぐ「寿風土(こどぶきふうど)ファーム」代表の小林栄一...
インフルエンサー退職願望のアラフォー、“発信=スキル”なる大きな勘違い
 普通の会社員を続けることに不安を感じる女性が増えています。周囲に自分の才能を活かして稼いでいるがいると、「自分も何か発...
職場やママ友“ケチな人”との付き合い方5選 1円単位で文句ブーブーは勘弁
「この飲み会、私はあまり飲んでないから、あなたたちが多めに払ってくれるよね?」「ここの料理、5,000円もするの? え〜...
背徳感がたまらにゃい♡ ガラステーブルの下から見る涼し気“たまたま”
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
夏場の観葉植物、様子が変!間違った育て方、救済法、最新便利グッズまで
 危険な暑さが続く夏。猫店長「さぶ」率いる我が愛すべきお花屋は古い平屋の建屋のため、エアコンをフル活用しても、毎日が熱中...
きっと、夫も気付いていた…40女が長年の“腐れ縁”にケリをつける日
 実は筆者には、結婚前から長く続いている“腐れ縁”があります。その相手を仮にP氏とします。