図らずも「おむすび」泣き…糸島編ラスト、祖父・永吉に教わった家族のありがたさ

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2024-11-16 06:00
投稿日:2024-11-16 06:00

第7週「おむすび、恋をする」#35

 高校卒業後の進路が決まっていなかった結(橋本環奈)は、聖人(北村有起哉)と愛子(麻生久美子)が作業しているところに来て、自分のやりたいことが決まったと宣言する。

 それは栄養を学びたいということで、専門学校に行きたいと話す。

 一方、結のやりたいことを聞いた愛子は、聖人にも自分のやりたいことをみんなに話してみたらと促して――。


【こちらもどうぞ】福岡西高野球部監督役・真砂京之介さん タダモノではないと思ったら…

【本日のツボ】

栄養士になりたいのウラ

 ※※以下、ネタバレあります※※

「うち、栄養士になりたい」

 結の口からようやくその言葉が出て、誰よりも私たち視聴者がほっとしたのは言うまでもありません。

 そもそもヒロインが栄養士になるドラマだったはずが、ハギャレンエピソードで時間を食って、一向に話しが進まず、どうしたものか、と内心ヒヤヒヤしておりましたから。

「自分がやったことで誰かが喜んでくれたら、凄い幸せな気持ちになるんやって気づいた。一生懸命やっている人を支える。そういう仕事が自分に向いとると思う」

 そんなふうにもっともらしい理屈をつけていましたが、翔也(佐野勇斗)にスタミナをつけさせたいっていう、一種の性衝動にみえてしまうのが残念なところです。

 これが、たとえば栄養失調で倒れたスズリン(岡本夏美)のためにお弁当をせっせと作り、食べることがいかに大切か気づいた話なら、もっと感動したのでしょうが…。

 神戸に戻ってもう一度床屋をやりたいと考える聖人。愛子や結、佳代(宮崎美子)の心配をよそに「オヤジには俺からタイミングを見て話す」とやけに家長っぽさを出したと思ったら、「そして、時が流れ…」のナレーション(リリー・フランキーさんお仕事してます!)が入り、一気に半年進みました。2度目の「光陰チョー矢のごとし」発動です。

 結局、タイミングを見計らい過ぎて、永吉(松平健)にまだ言えていない、というのがオチでした。歩が大女優だというウワサはあっという間に広まったのに、聖人たちの神戸行きが永吉の耳に入らないわけがないのでは、とモヤモヤが…。

 そこに翔也がやってきて、「米田結、神戸に引っ越す日、決まったか?」と言い、永吉の知るところとなる、という流れでした。

 よくあるパターンでさほど笑えないわ、翔也の昆虫柄のダサTシャツが目に入るわで、呆れていると、見どころはここからでした。

 意を決して、「俺、もういっぺん、神戸で床屋ばやりたい。家族と暮らしたあの場所で、もういっぺんやり直したい」と聖人。「頼む、オヤジ」と土下座。

 愛子も「おじいちゃん、私からもお願いします」と一緒に頭を下げたその時、永吉の表情はというと、だんだん優しく笑顔になっていき、たっぷりの間をとって、「いかん」と。

 聖人は「はー?」、愛子も「えっ、今、完全にいいって言う雰囲気だったよね」と。

「いかん言うたらいかん。もうじきでっかい産直所もできる。糸島はこれから盛り上がるとぞー」と永吉。そして、いつもの大げんかに突入しました。

「愛子、結、荷物まとめろ。今すぐ神戸行くぞ」「出てけ! 出てけ! 二度と戻ってきやんなー」

 結局、その場面は「こんな別れ方いやだよー」という結の言葉で終わりましたが、その日、どう収拾をつけたのか、わからずじまい。まあ怒鳴り合っても大げんかしても、次の日にはしれーっと一緒にごはんを食べられるのが家族ってものかもしれませんが…。

永吉フォーエバー

 シーン変わって、畑の中。結が永吉に、糸島が大好きだと訴えます。「お父さんだって同じ気持ちやと思う。そう。大好きやなかったら、こんなに大事に野菜育てんよ。それでも行ったらいかんと?」。永吉の答えは「いかん」。「なんでなん?」と聞く結に、「お前らがおらんくなったら、つまらん!」と永吉。

「みんなで食卓ば囲んで飯食うて、酒飲んで、ナイター見て、怒ったり笑ったり、喧嘩するとか楽しかった。それがもうできんくなる。だけん、行ってしゅうなか」

 永吉の言葉に泣かされました。大号泣ですばい。いや~「おむすび」に泣かされるとは思いませんでした。あらためて家族のありがたさがわかった名シーンでした。永吉、フォーエバー。ありがとう永吉。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


小夜(富田望生)の食い意地は国境を越えた!愛か、餌付けされただけか
 復学した愛助(水上恒司)は、スズ子の公演に触発され、いっそう勉学に励んでいた。  そして、公演が再開して以来、ス...
桧山珠美 2024-01-12 16:05 エンタメ
任侠ドラマ出演の高岡蒼佑様…小栗旬&芸能界批判に“かわいいチワワ”か!
 アウトローな役柄などで人気を博していた元俳優の高岡蒼佑。役者引退宣言をしていたものの、今年2月にリリースされる任侠ドラ...
堺屋大地 2024-01-11 06:00 エンタメ
朝ドラ名物の闇市、小夜の食い意地はタダモノじゃねえ!
 戦争が終わって3カ月、世の中の混乱は続き、スズ子(趣里)たちは未だ公演ができずにいた。  愛助(水上恒司)の病状...
桧山珠美 2024-01-09 14:50 エンタメ
歯に衣着せぬ小夜のキャラを生かしたブギウギ流「玉音放送」シーン
 終戦の日。スズ子(趣里)たちは巡業先の富山で玉音放送を聞く。りつ子(菊地凛子)は慰問先の鹿児島で敗戦を知る。  ...
桧山珠美 2024-01-08 15:50 エンタメ
原作は4コマ漫画! 名作“ぎぼむす”のイケメントリオを味わい尽くそう
 新年あけましておめでとうございます。  例年であれば、大晦日は「ジャニーズカウントダウンライブ」で年越しするので...
特攻隊の前で「別れのブルース」、過去の“淡谷のり子物語”と異なる描き方
 1945年、日本の戦況はますます悪くなっていた。富山に慰問に来ているスズ子(趣里)は、女中の静枝(曽我廼家いろは)の話...
桧山珠美 2024-01-05 14:00 エンタメ
制作費の都合?「夜来香ラプソディ」音楽会シーンなしは残念すぎる
 上海の羽鳥善一(草彅剛)は、音楽会の準備を進めていた。羽鳥は、黎錦光(浩歌)が作曲した「夜来香」にブギを取り入れた音楽...
桧山珠美 2024-01-04 17:50 エンタメ
【2023年人気記事】マッチ様は逃げ上手と無責任のプロだった
【「残念プロフェッショナル」の流儀】  2023年も「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大き...
堺屋大地 2024-01-02 11:44 エンタメ
辻希美&杉浦太陽はニベアのCM…仲良しラブラブ芸能人夫婦はお金を生む
 元モーニング娘。のなかで1番の勝ち組は、やっぱり辻ちゃん(辻希美)でしょう。  先日も元モー娘。の中澤裕子、保田...
スズ子と愛助の無償の愛、平和ボケの今とは違って生きるも愛するも命がけ
 東京に戻ったスズ子(趣里)は、空襲で一面ががれきになっている惨状を目の当たりにする。  スズ子が三鷹の家に戻ると...
桧山珠美 2023-12-28 14:10 エンタメ
東京大空襲、愛し合うスズ子と愛助の運命は…金曜放送回を前におさらい
 トミ(小雪)の許しが出て、山下(近藤芳正)が正式に楽団のマネージャーとして加わることになった。  スズ子(趣里)...
桧山珠美 2023-12-27 17:40 エンタメ
コワモテ黒田の起用は大正解! スズ子派に寝返り、顔芸と手振りが秀逸
 結核が再発した愛助(水上恒司)の看病を、三鷹の家で続けることになったスズ子(趣里)は、日々愛助のために身を尽くしていた...
桧山珠美 2023-12-26 15:50 エンタメ
藤井風「いちすき」で見せた弾き語りに惚れ惚れ、黒髪に代わってホッ
 21日、木曜劇場「いちばんすきな花」(フジテレビ系)が最終回を迎えました。  昨年、社会現象を巻き起こした目黒蓮...
平野・神宮寺・岸のNumber_iデビュー間近 24年は注目多数の群雄割拠
 滝沢秀明氏創設のTOBEに合流し、本格始動が待たれている元King & Princeの平野紫耀(26)・神宮寺勇太(2...
こじらぶ 2024-02-16 10:40 エンタメ
朝ドラでは珍しい正面からの接吻!愛助ママ(小雪)来襲で“恋の炎”燃ゆる
 愛助(水上恒司)は母・トミ(小雪)に呼び出される。トミからは、スズ子(趣里)に会うのはやめるように言われ、山下(近藤芳...
桧山珠美 2023-12-22 14:40 エンタメ
北川景子に長澤まさみ…SNS離れの深層、イメージ戦略には逆効果?
 12月16日、女優の北川景子(37)の写真集『『「37」 20th anniversary』公式アカウントがInsta...