“国内唯一”弁護士芸人・こたけ正義感に刮目! 話題沸騰ライブ『弁論』は「袴田事件」ネタで度肝を抜かれた

帽子田 芸人、ライター
更新日:2025-01-22 06:00
投稿日:2025-01-22 06:00

信念すら感じる、「袴田事件」をメイン据えた胆力

 シリアスなテーマに据えてしまうと、当然笑いを起こすのが難しい。僕も若手の時に「殺人事件」をテーマにしたネタをやったが、「犯罪が絡むと笑いにくいから止めた方がいい」と作家からアドバイスされたことがある。

 それくらい芸人はシリアスな話題や犯罪が絡む話題を避けがちなのだが、ライブの中心として「袴田事件」を据えた胆力が立派だ。信念すら感じる。

 警察が捏造した実際の証拠を示しながら、いかに「ありえない証拠だったのか」を説明していくのだが、確かにありえなさすぎて笑ってしまった。

 真面目に説明するところと、ボケの口調で話すところのバランス感覚が見事で、「このパートはちゃんと聞こう」「このパートは思い切り笑っていい」と分かるので、安心して見られた。それに本人がその事件に関与していることで、お笑いライブで取り上げても軽薄に見えないのも大きかった。

 伏線が張り巡らされたライブの構成にも着目してほしい。これは実際に見てほしいので細かく説明はしないが、ライブの途中に散りばめられたボケやワード、舞台の演出が、ライブの終盤にかけて次々と回収されていく。

 特に袴田事件を踏まえたうえで、人の記憶力のあやふやさや証言の不確かさを指摘するような仕掛けもあり、笑いつつもゾッとしてしまうような尖った構成になっていた。裁判ドラマに飛び込んだような高揚感すらあり、エンタメとして最高だった。

「法律あるある」にも見える技術の高さ

 他にも感嘆する点は多々あった。「法律家あるある」が散りばめられ、こたけ正義感が被告人に「罰金または懲役○年になる可能性がある」と説明しているときに、「じゃあ罰金にします」と言われた話など、法律家ならではのあるあるが新鮮で面白い。

 我々は法律の専門家じゃないのでよくあるシチュエーションかどうかは知らないけれども、その様子を想像するだけで面白い。こたけ正義感のツッコミワード「選べるわけないです! サブウェイじゃないんだから」も面白くて、芸人としての技術も高いなと感心してしまった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

「弁論」はfunnyとinterestingの割合が黄金比率で、ただ面白いだけでなく、皮肉や社会批判も織り込んで深みを与えた、凄まじいライブだった。

 弁護士芸人はおそらくこたけ正義感しかいないので、このライブをできるのはこたけ正義感しかいない。また次回の開催が楽しみだ。

帽子田
記事一覧
芸人、ライター
別名義では芸人として活動。一時期は年100本以上のライブに出演、ライブ主催の経験もアリ。一応現役の芸人ではあるが、ただのお笑い、バラエティ番組ファンでもあります。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


「あんぱん」ヤムおんちゃん登場! “じいさん”呼ばわりがちょっと切ない…。のぶや嵩とはどう再会する?
 ラジオドラマ「やさしいライオン」は、たくさんの人の耳に届いていた。しかし、登美子(松嶋菜々子)の反応が気になる嵩(北村...
桧山珠美 2025-09-01 17:08 エンタメ
【芸能クイズ】山下美月は一級船舶免許。意外と多い“資格取得者”を検索できる事務所は?
 テレビやネットでふと耳にした、あのひとこと。記憶の片隅に残る発言の背景には、ちょっとした物語があるのかも?  ネ...
欅坂46から10年。平手友梨奈らの脱退・卒業、解散危機に改名…櫻坂46はいかに“最高地点”へ辿り着いたのか
 櫻坂46が8月24日、全国ツアー「5th TOUR 2025 “Addiction”」の千秋楽を終えた。愛知、福岡、広...
こじらぶ 2025-08-31 12:22 エンタメ
「あんぱん」羽多子の“夢”はヤムおんちゃんの影響ですか? 予告にチラリと映る姿にも歓喜!
 のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)は引っ越しをして羽多子(江口のりこ)と同居生活を始める。そんな中、電話に出た羽多子が、...
桧山珠美 2025-09-13 11:33 エンタメ
「あんぱん」脚本家が“1番書きたかったこと”に目からウロコ! すべては聡明なお子様のおかげ…
 ある日、嵩(北村匠海)にファンレターをくれた小学生の佳保が、祖父の砂男(浅野和之)と柳井家にやってくる。笑顔で迎えるの...
桧山珠美 2025-08-28 15:25 エンタメ
「あんぱん」八木(妻夫木聡)と蘭子(河合優実)カップル、オトナの視線の絡み合い…朝から見ていいんですか?
 八木(妻夫木聡)のひらめきで嵩(北村匠海)の詩とイラストが入った陶器のグッズは追加注文が来るほど売れていた。それでもも...
桧山珠美 2025-08-28 15:03 エンタメ
坂口健太郎に逆セクハラ騒動。永野芽郁にmiwaとも…BLACKPINK リサだけじゃない“女性に押される”男の特徴
 BLACKPINKのリサ(28)が国境を越えて、大炎上中だ。今年2月にリリースしたソロデビューアルバム『Alter E...
田中麗奈、45歳。心も体も変化するなか、ずっと変わらない“芝居”への気持ち
 多くの人の心をつかんだ「なっちゃん」のCMの初代キャラクターに始まり、映画『がんばっていきまっしょい』『はつ恋』、近年...
望月ふみ 2025-08-24 11:45 エンタメ
『あんぱん』のぶ、山に登って「ボケー!」は“征服欲”の成せる業か? アンパンマンの原型がついに爆誕
 のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)の別居生活が続く中、登美子(松嶋菜々子)から嵩の名前の由来を聞いたのぶは、ひとり山へ向...
桧山珠美 2025-08-28 15:04 エンタメ
ラウール、22歳の色気が破壊級!「愛の、がっこう」は“代表作”になると断言してもいい
 夏ドラマも中盤にさしかかりました。そのなかでも回を重ねるごとに盛り上がっているのが、木曜劇場「愛の、がっこう」(フジテ...
【芸能クイズ】松本人志が福山雅治と「HEY!HEY!HEY!」で作った“オリジナル料理”の名前は?
 テレビやネットでふと耳にした、あのひとこと。記憶の片隅に残る発言の背景には、ちょっとした物語があるのかも?  ネ...
「あんぱん」羽多子らの“あの言葉”にあんぐり…のぶも感動してる場合か。落語家の年齢も気になる
 嵩(北村匠海)は「まんが教室」という番組に出演してほしいという健太郎(高橋文哉)の頼みをしぶしぶ承諾する。そして第1回...
桧山珠美 2025-08-28 15:06 エンタメ
「あんぱん」のぶ、議員のコネ入社なのに“クビ”の謎。急成長したアキラ君と老けないオトナ達に酔いそう…
 嵩(北村匠海)が書いた詞にたくや(大森元貴)がメロディーをつけて生まれた「手のひらを太陽に」は、「みんなのうた」でも紹...
桧山珠美 2025-08-28 15:06 エンタメ
スキャンダル続出の花田優一、美女にモテまくるのは何故? 不誠実男に学ぶ「悪名は無名に勝る」メリット
 元横綱・貴乃花光司と元フジテレビアナ・花田景子を両親に持つ“親の十四光り”の花田優一。  現在、元テレビ東京アナ...
堺屋大地 2025-08-17 11:45 エンタメ
「あんぱん」八木(妻夫木聡)と蘭子(河合優実)、“何か”が始まっちゃう? 嵩は作詞能力をいつ見抜かれたのか
 舞台公演は成功裏に幕を閉じる。数日後、なぜかぼんやりした様子の嵩(北村匠海)。そこに、また一緒に楽しい仕事をしようとた...
桧山珠美 2025-09-04 12:26 エンタメ
カズレーザー、山里亮太…芸人はなぜモテる? 業界人が分析する「メロい」現象が起こりやすい納得の理由
 カズレーザーさんと女優の二階堂ふみさんが結婚した。週刊誌にも撮られなかったどころか、噂すらなかったので世間はびっくり&...
帽子田 2025-08-15 11:45 エンタメ