娘の名門合格を喜べない…男に依存してきた妻が「女子校進学」を強いる理由

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2025-02-08 06:00
投稿日:2025-02-08 06:00

娘に私立中学受験を勧めた理由

 愛子が暮らす高層マンションは、みなとみらいと横浜駅のちょうど中間ほどに位置している。大きな公園やスーパーが隣接する暮らしやすいマンションエリアだ。最上階の共用スペースからは海も臨める、風通しのいい場所にある。

 愛子の夫・晴信は都内と神奈川で飲食店を数店舗展開する実業家である。バイトから独立して始めた居酒屋のチェーン展開を事業の主としている。結婚後、軌道に乗るまではだいぶ苦労したが、ここ数年は黒字経営で、キャッシュでこのマンションを購入できるくらいの余裕もできている。

「美愛ちゃん、中学はもちろん私立を受験するよね?」

 長女・美愛が小学校3年に上がったきっかけにそれを提案したのは愛子自身だ。成功した経営者の子女たるもの、機会があるのならば当然だと感じたから。

 食事時、何気なさを装って尋ねると、彼女は大好物のハンバーグを頬張りながら無垢な笑顔を輝かせた。

「うん! ママがそう言うのならやる!」

 その回答は想定内。余裕ある柔らかな微笑みで彼女の意志を受け入れた。

 2人の子供の育児は愛子のワンオペ状態だ。晴信は結婚後から今も変わらず、四六時中経営する店に入り浸っている。

 今どきの女性なら、不満を抱きがちな環境だろう。しかし、大学卒業と同時に授かり婚をした愛子にとって、妻と母親業は自分の存在意義である。

「ママがいいー」

「ママがするなら、ミアもするー」

「ママとけっこんしたい」

 美愛の乳幼児期は将来が不安になるほどの甘えん坊さんだった。その年頃の子供であれば当然なのかもしれないが、他に何もない愛子が溺愛して育てていた分極端にその傾向は現れた。

その美貌ゆえ、心配もある

 甘えられるのは嬉しい。ただ、不安がないわけではなかった。将来に向けて、自立心を育んで欲しいと考えるようになるのは当然のこと。

 学生時代、学園祭のミスコンでファイナリストになったほどの愛子の血を受け継いで、美愛はとても美しい。街を歩けばキッズモデルに、とスカウトされることもある。

 親として鼻が高くなる一方で、このまま思春期に入ってしまえば、自分のような人生を歩んでしまわないか心配になった。

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


【動物&飼い主ほっこり漫画】第100回「お散歩のバイトだワンワン」
【連載第100回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽの...
独身と既婚、正反対な女ふたりの悲しい共通点。高級ディナーより“551の肉まん”が羨ましい理由
 実久は妻子ある男性と交際をしているが、その日は彼に「仕事が入った、先に行っていて」と言われ、大磯のプールリゾートに先乗...
仕事や恋に謳歌する私と、髪を振り乱して子育てする彼女。本当に「幸せ」なのはどっち?
 実久は妻子ある男性と交際をしているが、その日は彼に「仕事が入った、先に行っていて」と言われてしまう。大磯のプールリゾー...
子供の粗相は許して当然? 鼻につく母親の口ぶり…私は「子連れの女」に同情することにした
 東海道線・グリーン車で都内から1時間弱。それからバスで10分くらい。やっとたどり着いたのは、歴史あるのどかなリゾートホ...
プロ童貞の足が「渋谷」から遠のいたワケ。行かなくなった街と人気が出た街、どう違う?
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(64)。多忙な現役時代を経て、56歳...
夫が「子育て」のこと全然わかってない! 妻が心底ゲンナリした無知発言
 男性も育児に関わるようになった時代ですが、まだまだ女性がメインでしている家庭は多い様子。そして夫の一言に「子育てわかっ...
“謝罪”LINEにイラッ「ごめんねww」って笑いごとじゃないのだが?
 自分が原因の問題に対して謝罪をするとき、心をこめないとかえって相手を怒らせてしまいます。文字や絵文字でしか伝えられない...
マジ最悪! “隣人ガチャ”大ハズレ、悪夢の引っ越し体験談。浮気相手が隣ってどんな確率?
 異動や転職、結婚などで新生活をスタートさせる際、引っ越しをする人もいますよね。その際、隣人ガチャでハズレを引き、トラブ...
漫画かよ!本当にあった「超高額」プレゼント。場末のスナック嬢からセレブに大逆転
 夜職のお姉さんお兄さんが、お客さんから超高級なプレゼントをもらっていたり、札束で会計をしている。そんな動画、見たことな...
暑すぎる…!「夏バテ」に負けそうな時、どうしてる? 私のセルフケアを教えます
「最近なんだかだるい」「食欲がわかない」こんな夏特有の不調に悩まされていませんか? 気温や湿度の急激な変化、冷房や紫外線...
惚れてまうやろ~!猫さまの素晴らしいお姿、“たまたま”様の神対応にズキュン
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
石丸伸二、議席ゼロでも“上から目線”の謎。ひろゆきやホリエモンの批判をかわすロジックが斬新すぎません?
 7月20日(日)に投開票が迫る参議院選挙。昨年の東京都知事選で小池百合子氏に次いで約165万票も獲得し、石丸旋風を巻き...
『最後から二番目の恋』千明の“現象”にわかる~! 中年の無様な姿も可愛らしいじゃないか
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まっ...
デパコス VS プチプラ、コスメはどっちがいいの? みんなの意見を聞いた「高級品はテンション上がる!」「低予算で楽しめて最高」
 あなたはコスメを購入するとき、デパコス派? プチプラ派? 高級感あふれるデパコスを愛用する人もいれば、手軽に楽しめるプ...
我が子のため…って追い詰めてるかもよ? ダメ親の特徴と“やりすぎ”行動
「我が子にはこんな子に育ってほしい」「我が子のため」と思うあまり、行動がエスカレートしてしまう親は一定数いるもの。あなた...
「♪教えてあげないよ、チャン!」ポリンキー“35年目の秘密”だと…? 公開中の初代リメイク動画を見なきゃ
 2025年7月、株式会社湖池屋が展開するお菓子「ポリンキー」が35周年を迎えました。35周年を記念して“あの懐かしいC...