不思議な設定をリアルに落とし込む「お笑い」のテクニック
「言葉選び」は特徴的だと思っていて、福田雄一作品みたいな派手なギャグや顔芸などはないが、キャラクター同士の会話の言葉選びやテンポがよくてクスッとしてしまう仕掛けが散りばめられている。
「見たことない設定」で言えば、そもそも宇宙人が角田さんみたいな普通すぎるおじさんというのも、あまり見ない設定だ。
すごいパワーを持っているのに周りの人にちょっと雑に扱われる…ような描写は珍しく、ドラマの世界では不思議な能力を持っているストーリーの軸となる人物は美男美女に決まっている。それをあえてずらして、特殊な経歴や強い思想を持たない「普通すぎる中年」に置くことで、「見たことない設定」に仕上げている。
実際に角田さんみたいな普通のおじさんすぎる宇宙人がいたらこういう扱いになっちゃうかもな…と思わされるところも面白く感じる要素だろう。これは「ファンタジーな設定をすごくリアルに落とし込む」というお笑いのテクニックが使われている。
人を笑わせるテクニックと言えば、派手なギャグやリアクション、顔芸が思い浮かぶ人も多いかもしれない。だが、バカリズム脚本では、「言われてみれば『あるある!』を突くと、見ている人は思わず笑ってしまう」という芸人ならではのテクニックや感覚が伝わってくる。
「ちょうどリアル」な絶妙すぎるキャスティング
また、派手ではないがぴったりなキャスティングにも惚れぼれしてしまう。
地球人すぎる宇宙人役として角田さんが本当に適切なのだ。例えばポップな演技に定評がある俳優で言うと、ムロツヨシさんや佐藤二朗さんがいるが、彼らだと逆にコメディに寄りすぎるんじゃないかと思う。
角田さんの強みである「ちょうどリアル」な演技の良さをバカリズムさんが知っていて推薦したのかもしれない。
現にホットスポット関連のインタビューを見ると、バカリズムさんが角田さんを推薦したようだ(「頭脳を使いすぎるとハゲる、という表現を取り入れたいから、おでこが広い人が良かった」という理由もあるそうだが)。
バカリズムのネタ動画もぜひ
『ホットスポット』は、美男美女の大恋愛があるわけでもなく、息をつかせないようなアクションがあるわけでもなく、死ぬか生きるかの構想や陰謀と戦うような展開もない。しかしながら、バカリズムさんのエッセンスがたっぷりはいった、すごく面白くてよいドラマだ。最終回まで楽しみが止まらない。
ちなみに、『ホットスポット』が好きな人はバカリズムさんのネタもきっと好きだろう。YouTubeに代表的なネタがいくつか上がっているので、見てみてほしい。個人的なおすすめは「Remember Glory」だ。
エンタメ 新着一覧