現役芸人が見た『ホットスポット』のすごさ。お笑いのテクをドラマに落とし込む「バカリズム脚本」の妙

帽子田 芸人、ライター
更新日:2025-02-23 06:00
投稿日:2025-02-23 06:00

不思議な設定をリアルに落とし込む「お笑い」のテクニック

「言葉選び」は特徴的だと思っていて、福田雄一作品みたいな派手なギャグや顔芸などはないが、キャラクター同士の会話の言葉選びやテンポがよくてクスッとしてしまう仕掛けが散りばめられている。

「見たことない設定」で言えば、そもそも宇宙人が角田さんみたいな普通すぎるおじさんというのも、あまり見ない設定だ。


 すごいパワーを持っているのに周りの人にちょっと雑に扱われる…ような描写は珍しく、ドラマの世界では不思議な能力を持っているストーリーの軸となる人物は美男美女に決まっている。それをあえてずらして、特殊な経歴や強い思想を持たない「普通すぎる中年」に置くことで、「見たことない設定」に仕上げている。

 実際に角田さんみたいな普通のおじさんすぎる宇宙人がいたらこういう扱いになっちゃうかもな…と思わされるところも面白く感じる要素だろう。これは「ファンタジーな設定をすごくリアルに落とし込む」というお笑いのテクニックが使われている。

 人を笑わせるテクニックと言えば、派手なギャグやリアクション、顔芸が思い浮かぶ人も多いかもしれない。だが、バカリズム脚本では、「言われてみれば『あるある!』を突くと、見ている人は思わず笑ってしまう」という芸人ならではのテクニックや感覚が伝わってくる。

「ちょうどリアル」な絶妙すぎるキャスティング

 また、派手ではないがぴったりなキャスティングにも惚れぼれしてしまう。

 地球人すぎる宇宙人役として角田さんが本当に適切なのだ。例えばポップな演技に定評がある俳優で言うと、ムロツヨシさんや佐藤二朗さんがいるが、彼らだと逆にコメディに寄りすぎるんじゃないかと思う。


 角田さんの強みである「ちょうどリアル」な演技の良さをバカリズムさんが知っていて推薦したのかもしれない。

 現にホットスポット関連のインタビューを見ると、バカリズムさんが角田さんを推薦したようだ(「頭脳を使いすぎるとハゲる、という表現を取り入れたいから、おでこが広い人が良かった」という理由もあるそうだが)。

バカリズムのネタ動画もぜひ

『ホットスポット』は、美男美女の大恋愛があるわけでもなく、息をつかせないようなアクションがあるわけでもなく、死ぬか生きるかの構想や陰謀と戦うような展開もない。しかしながら、バカリズムさんのエッセンスがたっぷりはいった、すごく面白くてよいドラマだ。最終回まで楽しみが止まらない。

 ちなみに、『ホットスポット』が好きな人はバカリズムさんのネタもきっと好きだろう。YouTubeに代表的なネタがいくつか上がっているので、見てみてほしい。個人的なおすすめは「Remember Glory」だ。

帽子田
記事一覧
芸人、ライター
別名義では芸人として活動。一時期は年100本以上のライブに出演、ライブ主催の経験もアリ。一応現役の芸人ではあるが、ただのお笑い、バラエティ番組ファンでもあります。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


「あんぱん」ヤムさん(阿部サダヲ)の変わらぬ風貌が謎だ。釜じいの“一言”が今回のハイライト
 釜次(吉田鋼太郎)の葬儀が営まれる中、草吉(阿部サダヲ)が姿を現す。またあんぱんが食べたいと言うのぶ(今田美桜)たちに...
桧山珠美 2025-07-19 11:15 エンタメ
「あんぱん」紅白未出場、浅田美代子の歌唱をここで聞けるとは。吉田鋼太郎の笑顔もグッとくる
 三姉妹揃っての朝田家ご帰還。朝ということは、蘭子(河合優実)は昨夜、のぶの家にお泊りしたのでしょうか。ならば、久々の三...
桧山珠美 2025-07-17 17:39 エンタメ
選挙 行ってみなきゃ言えなくね? 人気男性グループが“ラップ”で投票を呼びかけ「最高!」「こんなアイドルいる?」と反響
 7月20日に行われる第27回参議院議員通常選挙(以下、参議院選挙)を控え、11人組ボーイズグループ・INIの池崎理人さ...
「あんぱん」薪鉄子が持つ“小道具”の細かさに気づいた? すれ違いコントは見なかったことにします
 鉄子(戸田恵子)からの電話に出た東海林(津田健次郎)は、ひとり考え込んでいた。鉄子がそんなに怒っていたのかと、慌てて謝...
桧山珠美 2025-07-16 17:31 エンタメ
もはや『M-1』は芸人だけのものじゃない? 万博、地方創生…吉本が目指す“次のフェーズ”
 6月25日、漫才日本一決定戦『M-1グランプリ2025』(テレビ朝日系)の開催会見が東京・渋谷よしもと漫才劇場で開かれ...
令和ロマン・高比良くるまが“騒動”で得た「天下を獲る」ために必要な武器
 オンラインカジノ問題をめぐって活動を休止していた令和ロマンの高比良くるまさんが4月28日、約2か月ぶりに復帰しました。...
田原俊彦よ、「※ただしイケメンに限る」はもう通用しない。世のオジサンは彼の“勘違い”から学ぶべし
 6月15日放送の『爆笑問題の日曜サンデー』(TBSラジオ)にて、ゲスト出演した田原俊彦が、女性アナウンサーにセクハラを...
堺屋大地 2025-07-14 11:50 エンタメ
【募集】夏ドラマ何見る? 期待してる&ガッカリを教えて!『ひとりでしにたい』『ちはやふる』『しあわせな結婚』etc
 コクハクでは2025年名夏ドラマを対象としたアンケートを実施します。7月よりスタートする夏ドラマ、「期待している」「面...
「あんぱん」嵩らの“腹痛”は史実とちょっと違う? 懐かしい2人の登場には狂喜乱舞! 生きていてよかった…
 東京に到着したのぶ(今田美桜)たちは、さっそく聞き込みを始めるが「ガード下の女王」はなかなか見つからない。みんなで屋台...
桧山珠美 2025-07-11 18:33 エンタメ
「あんぱん」メイコ、夢はお嫁さんでいいのか? 健太郎(高橋文哉)ともう1人の“三角関係”を妄想する
 東京出張の前日。みんなで取材する代議士の資料を確認していたのぶ(今田美桜)は、岩清水(倉悠貴)が話す「ガード下の女王」...
桧山珠美 2025-07-10 18:34 エンタメ
timelesz、新体制が“古参ファン”に受け入れられる日は来るのか? 旧ジャニ「シャッフルメドレー」不参加の賛否
 7月5日、櫻井翔(43)が総合司会を務める音楽特番「THE MUSIC DAY 2025」(日本テレビ系)が放送され、...
こじらぶ 2025-07-10 11:50 エンタメ
石田ひかり53歳、今を生きる女性に伝えたい“楽しく生きていく”ためのメッセージ|映画『ルノワール』
 1986年のデビューから、映画『ふたり』『はるか、ノスタルジイ』や、連続ドラマ『悪女』、連続テレビ小説『ひらり』、『あ...
望月ふみ 2025-07-10 11:50 エンタメ
『あんぱん』ツダケンの“にゃあ”が秀逸だにゃあ!「月刊くじら」には色々とツッコミどころもあるが
『月刊くじら』創刊号は2日で2000部を売り切り、好調な滑り出しを見せる。嵩(北村匠海)は『月刊くじら』編集部に異動に。...
桧山珠美 2025-07-09 17:00 エンタメ
【10万いいね】鈴木えみ、20年前→現在の比較写真が“美しすぎる”と絶賛「変わらなすぎ!」「今の方が可愛い説まである」
 ファッションモデルから俳優業まで、幅広い分野で活躍する鈴木えみさん(39)。2025年7月7日に自身のInstagra...
春ドラマの評判を調査!本命『最後から二番目の恋』は2位。1位は意外な快進撃。日常系が人気、刺激疲れか?
 2025年の春ドラマが、次々とフィナーレ。今期はSNSでバズった顔ぶれも多く、ドラマファンからしても楽しいシーズンだっ...
「あんぱん」嵩は受かるのか…って次週予告編でネタバレか? アンパンマン声優の姿もチラリ
 のぶ(今田美桜)の家で暮らすことになったメイコ(原菜乃華)は、夢に向かって一歩を踏み出す。そしてのぶも、月刊誌の刊行に...
桧山珠美 2025-07-05 08:00 エンタメ