『最後から二番目の恋』千明と和平の“名前がない関係性”の意味を、大人になってやっとわかった

森鷹ユキ
更新日:2025-05-19 11:07
投稿日:2025-05-19 06:00

人間関係は変化するもの

 私自身、気づけばドラマ第1期の千明の年齢(45歳)に近づいてきた。中年と呼ばれる今になって思うのは、人間関係とは極めて個別性が高く、時間とともに変化していくものだということだ。

「女性の友情はライフステージによって変わる」とよく言われる。それは一面の真理であるが、「だから女の友情は脆いんだ」という浅はかで単純な結論には同意しない。

 転職や結婚、妊娠・出産といったライフイベントをきっかけに、環境や心の余白が変わり、これまで自然だった距離感に変化が生じることもある。そのまま疎遠になることもあれば、逆に、思いがけない再会によって関係が再び動き出すこともある。

 私は38歳でわりと大きな病気をしたのだが、ある程度落ち着いた時期にSNSに近況を投稿したところ、学生時代の友人から数年ぶりに連絡がきた。彼女は見た目も性格も華やかで、男女問わず好かれるタイプだった。学生の頃は、そんな彼女に引け目を感じていたこともあり、そこそこの距離感で付き合っていた。

 しかし大人になって1対1で再会し、いろいろと話すうちに関係は変化していった。学生時代にはしなかったような深い話もしたし、あの頃とはまったく違う親しさが芽生えた。そしてまた別の機会に、彼女の発案であるプロジェクトを一緒にやることになり、今では“仕事仲間”のような関係にもなっている。20年前には想像すらできなかった展開である。

 そういう意味でも「女性の友情は脆い」と同様に「男女の友情なんて成立しない」という解像度が低いと言わざるを得ないけれど、よく議論になる言説に私は真っ向から反論する。

 人間関係はそんな単純なものでもスッパリと言い切れるものではないし、それを見せてくれるのが『続・続・最後から二番目の恋』の千明と和平だからだ。

千明と和平の関係は「ファンタジー」ではない


 千明と和平は隣同士に暮らすご近所さんであり、友達であり、恋人ではないが極めて恋人に近い、唯一無二の存在である。そんな関係性は一朝一夕では築けない。だが、私たちは彼らが関係を築いていく過程を、ほぼリアルタイムで見守ってきた。その姿を見るたびに思うのだ。人と関係を育みながら年を重ねていくことは、なんて豊かで、ワクワクすることなのだろう、と。

 今回の第3期の放送にともない、TVerでの過去作配信もあり、SNS上でもさまざまな感想を目にした。「私にとっての和平はどこにいるの?」「理想的だけど現実にはあり得ない関係だ」などの声もあった。

 だが、(しつこいようだが第1期の)千明の年齢に近づいた今の私が思うのは、千明と和平の関係は「ファンタジー」でも「奇跡」でもなく、決して「あり得ないもの」ではないということだ。

森鷹ユキ
記事一覧
1982年生まれ。新聞社系エンタメサイトで記者を務めたのちに女性系メディア、ライフスタイル系メディアで編集者兼記者として従事。エンタメ、ライフスタイル、ジェンダーについての取材執筆を行う。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


【女偏漢字探し】「姑」の中に紛れ込んだ漢字は?
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「校閲婦人と学ぶ!意外と知らない女ことば」では、女性...
【動物&飼い主ほっこり漫画】第88回「金運アップ」
【連載第88回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽのお...
「手あたり次第やらないとww」腹ん中でアラフォーの婚活バカにしてる? 爆死ワードがまぶされたLINE3選
 たとえ冗談を言える仲であっても「言ってはいけない言葉」は存在するもの。そんな爆死ワードを使えば、大切な友達や恋人を失う...
“即完売”のセザンヌ福袋5点セットで残念だったアレ。2948円→脅威の770円だったけれど【福袋メイク編】
 メイクが完成しちゃうアイテム5品が入ったセザンヌの2025年福袋「ラッキーパック」。A~Cの3種類で今回Aを購入しまし...
穏やかな主婦が知った「浮気より刺激的」なもの。人生初のパチンコで味わった「異世界のような」快感
 2年前に都内から引越し、湘南・辻堂で暮らす沙耶。注文住宅の家で専業主婦をする悠々自適の生活を送っている。しかし、刺激の...
夢の湘南「一軒家暮らし」で私が失ったのは何? 不便さの忠告に聞く耳持たず…腐っていく自分にゾッとする
 2年前に都内から引越し、湘南・辻堂で暮らす沙耶。注文住宅の家で専業主婦をする悠々自適の生活を送っているが、どこか物足り...
インスタでは好評なのになぜ? 「丁寧な暮らし」をする35歳女のホームパーティーに誰も来ないワケ
 吹き抜けの天窓から降り注ぐ昼下がりの穏やかな日差し。  熊田沙耶はまぶたを開け、シャバーサナから覚醒した。 ...
席は空いてるのに何故? ママが客を帰した「意外な理由」 もし断られてもめげないで!
 新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞご贔屓に。さて、新年最初のどろんぱは「お断り」の話から。  年始...
尊いが大渋滞だよ♡ 魅惑の“たまたま”9連発!2025年もよろしくにゃん
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 昨年12月にご紹介したもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“...
「40代は初老」ってガチだったわ…現実を直視する加齢を実感した悲しい瞬間6選
 40代になると、だんだん体の「老い」を実感するようになるもの。さらに追い打ちをかけるようですが、実は40歳を過ぎると「...
実家に帰省したけど、うんざり! お年玉くれ圧、きょうだい比較、価値観の押し付け…なぜ私だけ?
 年末年始にやることといえば、実家や義実家への帰省。楽しい団らんを過ごした人もいる一方で、「帰省、やっぱりしなければよか...
触りたい! フワフワ“たまたま”について行きます、どこまでも♡
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「花屋で売っている花」と「スーパーで売っている花」意外と知られていない一番の違いとは?
 昨年の元旦に能登半島大地震が発生し、複雑な思いでこのお正月を迎えた人は、ワタクシだけではないはず。今年1年の無事を心か...
A Happy PONKOTSU New Year! ポンコツ商店会初のお正月、2025年はもうポンコツなんて言わせないっ
 本コラムは、地元の“幽霊商店会”から「相談がある」と言われ、再始動の先導役を担う会長職を拝命することになったバツイチ女...
更年期の治療は漢方薬やホルモン剤投与で万事OK? ちょこっと旅で脱・イライラカリカリの1年にしたい
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まっ...
愛車のフェラーリ? あーはいはい。お断りついでの自慢がウザいなあと思うLINE3選
 人からの誘いをお断りするついでに、なぜか自慢話を挟んでしまう人がいます。  断られた相手としては「自慢話はいらな...