「自慰行為」の語源になった人物の悲劇。“悪いこと”と罰された本当の理由

MARO(上馬キリスト教会ツイッター部)
更新日:2025-09-15 11:45
投稿日:2025-09-15 11:45

神様の怒りポイントは

 もちろん自慰行為だってしないに越したことはないですし、それもそれで残念な行為なのでしょうが、それと同等かあるいはそれ以上に、オナンが「神様の目をごまかすために」それをした、ということが神様の怒りポイントだったのじゃないかと僕は思っています。

 タマルと子どもを作るふりだけして、しなかった。それをごまかすために自慰行為をした、ということですから。

 このように僕たちは、クリスチャンであってもそうでなくとも、表面上の「行為」だけを見て「これは良くないぞ」とか「これはしてはいけないぞ」とか、短絡的に判断してしまうことがあるのではないでしょうか。

 しかし神様が「行為」よりも重視するものは「動機」や「心」です。

 前述したバベルの塔のエピソードでは、人々が高い塔を建てて神様の怒りを買いましたが、神様が怒ったのは「高い塔を建てた」という「行為」ではなく、「我々は神を超えるのだ」という「動機」に対してです。

「実」と「木」の因果関係

 イエスに敵対したパリサイ人たちは、人々の「行為」ばかりに注目してあれやこれやと文句をつけ、自分たちの「行為」ばかりを立派にして、その「動機」や「心」を見ていなかったのでイエスに大いに批判されました。

 もちろん「行為」には「動機」や「心」も反映されるものです。聖書の他の箇所には「信仰の実は行いによって現れる」と書いてあります。

 ブドウの木はブドウの実しか結びません。良い木は良い実を結び、悪い木は悪い実を結びます。

 しかし僕たち人間は時として、しかも思っているよりかなり頻繁に、この「実」と「木」の因果関係を誤認してしまいます。

 普通に見れば因果関係がありそうな2つの事象でも、よく精査してみれば、実はまったく因果関係がなかった、とか、因果関係が反対だった、なんてことは、科学や統計の世界ではよく起こることですし、この誤認については何百年も哲学者たちがあーでもないこーでもないと議論を交わしています。

 たしかに神様なら「実」から「木」を正しく見ることができるでしょう。しかし僕たち人間には「実」だけから正しく「木」を見ることは難しいんです。

MARO(上馬キリスト教会ツイッター部)
記事一覧
1979年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒、バークリー音楽大学修了。宗教法人専門行政書士。約11万人のフォロワーを持つXアカウント「上馬キリスト教会」(@kamiumach)の運営を行う「まじめ担当」。著書に『上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)、『人生に悩んだから「聖書」に相談してみた』(KADOKAWA)、『上馬キリスト教会ツイッター部のキリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)など多数

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


神かよ…つら~い生理中、男性にされて感動したエピソード6選「喧嘩ばかりの弟がナプキンを買ってくれた」
 女性にとって、心身ともに負担が大きい生理中。あなたの周囲の男性は、どんな風に寄り添ってくれますか?  今回の記事...
親と“SNS共有”が裏目に! 教えて「我が家のスマホルール」。リアルな成功&失敗エピソード6選
 制限がないと、いつまでも触れ続けてしまいがちなスマホ。今回は夫婦間、親子間などで決めている「我が家のスマホルール」にま...
増える通り魔的事件、現代人の「狙われやすい」歩き方。危険時に身を守る方法とは【元警部が解説】
 神戸市のマンションで24歳女性が刺殺された事件は、見知らぬ男に50分間つけ回された末の凶行だった。犯人は数日前から神戸...
「色恋営業」は人を選ぶ? スナック嬢が教える“地味に長続きする”接客テクニック
 夜の世界は接客業。来ていただいたお客さんになるべく気持ちよく、そしてなるべく多くのお金を継続的に落としてもらわなければ...
元芸能人「売れるため覚悟を決めた」“暗黙の関係”を選んだ女の後悔。スポットライトの裏で失ったもの
 芸能界の華やかさに憧れて飛び込む若者は多い。しかし、その裏には語られにくい現実がある。元タレントのAさん(仮名・30代...
見返り猫が尊すぎる!神聖なる“たまたま”を近くで拝める幸福よ…
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
なぜおばさんは“早朝ウォーキング”するのか? 運動音痴の私が中年になって実感した朝
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まっ...
ふわぁ~眠すぎる…でも寝ちゃダメ! 一瞬で覚醒できる「私の目覚まし対策」6選
 仕事中、急な眠気に襲われて意識が飛んでしまう…。社会人なら誰しも一度は、もしくは日常的に経験しているのではないでしょう...
不安体質は性格のせいじゃない、変えられない自分を責めないで。穏やかな生活を送るコツ【専門家監修】
 2012年に59歳で亡くなったロック歌手・桑名正博さんとアン・ルイス(68)の長男でミュージシャンの美勇士さんや、タレ...
なぜ『鬼滅の刃』は心に響く?ボロボロだった女が“ある台詞”で救われた話「雷に打たれたような衝撃でした」
 最終決戦が描かれる映画三部作の第一章が公開され、アニメの歴史を塗り替える伝説を打ち出し続けている『鬼滅の刃』(フジテレ...
SNSだらだら、安物を爆買い…全部やってる! やめらない“ムダ習慣”7つがじわじわ刺さる
「やめたいのに、なぜか続けてしまう」そんな“惰性の習慣”に心当たりはありませんか? 毎日の行動の中には、「なんとなく」「...
生きる伝説、“スター★にゃんたま”の貫禄あふれるポージングを見よ!
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「イラつく顔ね」にグサッ…義母が放った“ひどい言葉” 5選。離婚すればってそりゃないよ~
 嫁姑の関係が悪化する原因の1つに、姑の悪意ある発言があるのかもしれません。こんなことを言われたら、姑への憎悪が膨らむの...
【動物&飼い主ほっこり漫画】連載特別編「ハルちゃん 幼少期の思い出」
【連載特別編】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場!  11月下旬発...
「うちはもっとヤバいよ!」え、不幸話で勝負してる? 聞いてて疲れる“愚痴LINE”3選
 人に不幸話をするときは、いくつか気をつけるべきポイントがありそう。なぜなら「それって不幸自慢?」とウザく感じる人が少な...
「着飾るのは何もないから」偽セレブがマウントを取る理由。“本物の令嬢”の前で見つけた本当の自分
 綾乃は千代田区の高級マンションから武蔵小杉に2年前に引っ越して来た。セレブ気取りの綾乃は同じマンション住人でさえない ...