「NTV紅白歌のベストテン」の背景にあった「vsナベプロ」日本テレビの徹底抗戦

更新日:2025-08-14 17:03
投稿日:2025-08-14 17:00

1975年の歌番組②スター誕生

 1971年放送開始。森昌子から山口百恵、ピンク・レディー、中森明菜……。83年の番組終了まで、多くの人気アイドル歌手を世に出した、日本音楽史上、非常に重要な歌番組である。75年当時の司会は萩本欽一。

 アマチュアの中からプロを選ぶという、いわゆる「コンテスト番組」なのだが、この番組が特徴的なのは「決戦大会」(75年当時)の仕組みである。

 単に歌の実力で勝敗を付けるのではなく「プロダクションやレコード会社がプラカードを上げる(=契約意向を示す)」ことが最終ゴール。つまりアイドルとしての「商品性」まで見極めるという構造が、大きな特徴になっていたのだ。

 という立て付け、一見「人身売買」にも見えるものだが、この本気感こそが、おびただしい数のアイドル志望者を呼び寄せ、番組を成功に導いたのである。

 さて、前回「NTV紅白歌のベストテン」に、沢田研二やキャンディーズが出ていた記憶がないということを書いた。この背景には、実は日本テレビと渡辺プロダクション(ナベプロ)の大きな軋轢があったのだ。

▼73年春、当時隆盛を極めていたナベプロがNET(現:テレビ朝日)で「スター誕生!」の後追い番組を企画する。

▼時間帯は「紅白歌のベストテン」と同じ月曜20時からの枠に決定。

▼「紅白~」とぶつかる(=ナベプロの歌手が使えなくなる)とクレームを入れた日本テレビ側にナベプロ社長・渡辺晋は、うちの歌手を使いたいのなら「紅白歌のベストテン」の時間帯を変えろと告げる。

▼これに激怒した日本テレビが、ナベプロとの徹底抗戦に打って出る。

 徹底抗戦───つまり「紅白歌のベストテン」も含めた日本テレビの歌番組全体から、ナベプロの歌手を締め出すことにしたのだ。もちろん、これは当時としては大英断だった。

 しかし日本テレビ側には勝算もあった。軌道に乗っていた「スター誕生!」で輩出した新人を、ホリプロやサンミュージックなどに割り振って「紅白歌のベストテン」で顔を売って……というサイクルをぐるぐる回して、ナベプロの競合事務所との共存共栄が図れるだろうという。

 結果、日本テレビ側は勝利する。

 次々と輩出されるアイドルは、大きな人気を得て、逆にナベプロは、徐々に衰退していくことになるのだ。

■8.21(木)「TAMORI 80~勝手にタモリ80歳大生誕祭!!」を、東京・南青山「BAROOM」で開催!詳しくはこちらからどうぞ→ https://peatix.com/event/4482604

■6.25沢田研二「人間77年喜寿リー祭り」 スージー鈴木氏と「勝手にお祝い動画」配信中!
 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/info/373430

■好評連載「沢田研二の音楽1980-1985」をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」(日刊現代/講談社)絶賛発売中!

エンタメ 新着一覧


超鈍感力! 羽鳥の絶縁宣言を屁とも思わないスズ子とタケシは似た者同士
 歌手引退――。スズ子(趣里)はその決断を、愛子(このか)や大野(木野花)に伝えた。  羽鳥善一(草彅剛)に絶縁す...
桧山珠美 2024-03-26 15:40 エンタメ
「GTOリバイバル」注目の新人イケメンは?松嶋菜々子は本当に出るのか
 反町隆史主演「GTO」が26年ぶりに帰ってきます。反町演じる元ヤン教師・鬼塚英吉がさまざまな問題を解決する学園モノで、...
ドヤ顔のアユミとヘイヘイブギー歌唱シーン温存の理由がわかる回だった
 昭和31年、大みそか。第7回オールスター男女歌合戦当日。スズ子(趣里)は、楽しみに会場へと向かう。スズ子が楽屋で支度を...
桧山珠美 2024-03-22 14:30 エンタメ
最終回秒読み…スズ子はブレずにお人よし、NHKと沼袋勉の手腕いかに!?
 愛子(このか)は、翌日の体育の時間に足の早い転校生と競争することになっていた。しかし、勝てる見込みがなく、愛子は学校を...
桧山珠美 2024-03-21 16:07 エンタメ
和田勉が転生したら中村倫也に!? 強烈インパクトで霞んだ礼子娘の初登場
 東京ブギウギのヒットから9年、ブギブームも下火になってきつつある中、スズ子(趣里)や羽鳥善一(草彅剛)のブギは古いとい...
桧山珠美 2024-03-18 14:30 エンタメ
「光る君へ」主人公バージン喪失!大石静氏が描く平安エロ&バイオレンス
 NHK大河ドラマ「光る君へ」は、平安中期の貴族社会を舞台に、吉高由里子演じる主人公のまひろ(紫式部)の生涯を描くもので...
沢尻エリカ不死鳥の如く女優復帰!大衆は真似できぬ人生転落リアルショー
 2月25日、沢尻エリカの女優復帰作となった主演舞台『欲望という名の電車』が千秋楽を迎えました。  「『残念プロフ...
堺屋大地 2024-03-16 06:00 エンタメ
NHK大阪が誘拐未遂事件をぶち込んだのなぁぜなぁぜ? かつ丼コント?
 誘拐犯が捕まってから、愛子(このか)は3日間も学校を休んでいた。スズ子(趣里)は、学校に行くようにと言うが、愛子は友達...
桧山珠美 2024-03-15 14:30 エンタメ
“テレ朝ドラマ”常連・ホンモノの刑事よりも刑事な内藤剛志、降臨!
 大野(木野花)が受けた電話は、3万円払わなければ、愛子(このか)を誘拐するという脅しの電話だった。そして、警察には伝え...
桧山珠美 2024-03-13 14:30 エンタメ
りつ子スパークのラインダンス必見!ワクワクズキズキと笑顔が溢れる回
 羽鳥善一(草彅剛)作曲二千曲記念ビッグパーティーの日が近づいてくる。羽鳥はスズ子(趣里)たちに、パーティーで余興をして...
桧山珠美 2024-03-11 15:30 エンタメ
“ユーミンドラマ”で見せたクソ女の夏帆、そして金子大地と中島歩に注目!
この投稿をInstagramで見る 【公式】「ユーミンストーリーズ」オムニバス夜ド...
真木よう子“まっけんセクハラ発言”はわざと?昭和の価値観をエンタメ化説
 ドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』(2007年/フジテレビ系)や『最高の離婚』(2013年/同)などでの演技が好...
堺屋大地 2024-03-09 06:00 エンタメ
第111回ブギウギの“三大なぁぜなぁぜ”…畑仕事する農家の手じゃない!
 梅吉(柳葉敏郎)が亡くなった。葬儀では松吉(木内義一)が号泣しながら、遺影の自慢をする。  そんな中、スズ子(趣...
桧山珠美 2024-03-08 15:50 エンタメ
死の間際までユーモア忘れず、父娘で歌った「父ちゃんブギ」
 久しぶりに香川に戻ったスズ子(趣里)は、梅吉(柳葉敏郎)が写真館を切り盛りし、繁盛していた話を聞く。梅吉が大切にしてい...
桧山珠美 2024-03-07 15:40 エンタメ
NHKさん、経費削減のあおりですか?スズ子の米公演シーンは写真だけ
 アメリカ行きを決めたスズ子(趣里)だったが、愛子(小野美音)は置いていかれることにすねてしまう。  旅立ちの直前...
桧山珠美 2024-03-05 15:35 エンタメ
“電撃婚”大谷翔平の心を射止めた妻はプロ中のプロ彼女。目標はダル夫婦?
 2月29日16時42分のことでした。NHKで衆院政治倫理審査会(政倫審)の中継を見ていたら、<大リーグ・大谷翔平選手 ...