どんなに嫌われても揺るがない クロちゃんの高い自己肯定感を培った両親の深い愛情
【今週グサッときた名言珍言】
「俺、親孝行できてないから戻ってきてよ!」
(クロちゃん/TBS系「水曜日のダウンタウン」7月30日放送)
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「テレビでウソついてないクロちゃん、初めて見た」と、あのちゃんが言う企画が、2023年11月に75歳で亡くなった父(もちろん精巧につくられたフェイク)と“再会”するというものだ。号泣しながら父への思いをぶつけたクロちゃん(48)が繰り返した絶叫が今週の言葉だ。
クロちゃんは「親ガチャに成功した」と言ってはばからない。「普通なら親がどこかで諦めていたと思います。いろんなことをさせてもらっていたのに続かなかったりとかしていますから(略)。この親でなかったら、今みたいになれていない」(Creative2「ENCOUNT」23年5月12日)と。
子供の頃からクロちゃんの行動原理は一貫している。「やりたいことをやる」。そして「怒られたくない」。そのためにはウソをつくことはいとわない。テストの点数が悪ければ川に捨て、塾に行っているフリをして、公衆便所でゲームボーイをしていた。ケンカ両成敗になるのが嫌で自分の立場を上げるために学級委員にもなった。妹から金を借りると返したくないから、意味不明な策略を練って親を困惑させたりもした。
そんなクロちゃんは高校生の時、突然「勇者になる」と言い出したという。それが無理だとわかると次になりたいと言ったのが「アイドル」だった。もちろん、母は大反対。だが、父は「好きなことをやらせてやれ」と背中を押してくれた(朝日新聞出版「AERA DIGITAL」23年12月14日)。
ちなみにパチンコをクロちゃんに教えたのも父。それにハマり消費者金融に借金したときも「偉い!」と言って全額返済してくれた。友人に借金してはいけないという言いつけを守っていると思ったからだ。だが、実際には友人にも借りていた。
やがて芸人になると誰よりも応援してくれたのが両親だった。クロちゃんが出た番組を見て「ゲボ出そうだった」という母だが、姪っ子たちがクロちゃんに拒絶反応を示し悪口を言っていると「腹が立つ。なんであんたらに言われんといけんのか」と息子の肩を持つ。悪口を言う共演者に対しても同様だと両親は口を揃える(TBS系「水曜日のダウンタウン」21年1月13日)。
「自分を否定せず、自分はありのままの自分でOK」(文芸春秋「文春オンライン」23年3月26日)と考えているクロちゃん。彼がどんなに世間から口撃されても、その高い自己肯定感が揺るがないのは、両親に愛情深く育てられてきたからに違いない。
(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)
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