サンミュージック岡博之社長 肉の代わりに鮭缶を使った「鮭じゃが」
【私のおふくろメシ】
岡博之さん
(サンミュージック社長/ブッチャーブラザーズ)
今週67歳になったブッチャーブラザーズのリッキーこと岡博之さんは、大手芸能プロ「サンミュージック」の社長になって2年近くに。おふくろメシは定番メニューである肉じゃがの鮭バージョンだった。芸人と社長の二刀流の苦労は梅干し作りで発散?
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「鮭じゃが」なんて料理の話、聞いたことないでしょ。元々は京都で父方のおじいさんとおばあさんが食料品を置く商店をやっていたんですよ。昆布などの乾物や醤油やソース、駄菓子屋にありそうなくじ引きの風船も売っていて、缶詰も置いてありました。
当時、高級なのが牛肉の大和煮、次にクジラの大和煮。すごく安かったのが鮭缶でした。店に置いてあった鮭缶を肉の代わりに使っておばあさんが鮭じゃがを作っていたらしく、おふくろが引き継いだんです。お金はかかりませんが、これがうまいんですよ!
肉を鮭にしただけで作り方はほぼ肉じゃがと変わりません。メインの野菜のジャガイモ、それにタマネギ、ニンジンと鮭缶。具材は一気に煮るんですが、鮭缶は汁ごと入れて母親は残った空き缶に水を入れて鍋に移し入れてましたね。調味料も空き缶何分の1とかで入れて(笑)。調味料は薄口醤油とミリン、酒。京都だから砂糖が多めの甘い汁です。簡単料理ですけど、多い時は週に2回食卓に出ていたし、僕は大好きでした。身は煮るとポロポロになるけど、おじいさん、おばあさん、両親、僕ら兄弟の家族分作るから何缶か入れるので、ひと缶ずつ時間差で入れると、最初に入れた缶はポロポロに、後から入れた鮭は塊が残っていて食感がいろいろ楽しめます。鮭缶は骨まで食べられるじゃないですか。煮るとまたうまくて。
小学生の時に見よう見まねでホワイトソースを作った腕前
食べる時はスプーンかレンゲがいい。軟らかくてクタッとなったタマネギとポロポロになった鮭をすくってご飯にのせて食べるのが好きでした。鮭じゃががあれば味噌汁はいらないから、あとは漬物とご飯があれば夕飯の食卓として満足でしたよ。
翌日の朝や昼は残り物の鮭じゃがに卵を一個混ぜてご飯にのせて食べる。これも最高。
うちは大きな鍋でたくさん作ってみんなで食べられるような料理が多かったかな。母親はそれほど料理上手ではなかったけど、見よう見まねで作るのが得意でした。僕が中学、高校の頃にはニラ玉をよく食べさせてくれました。うちの商店では卵も売っていたので、オカズがない日はすぐ卵焼きなんですよ。ニラ玉は今では簡単オカズで有名ですけど、当時はそんなにポピュラーではなくて、ある日母親が見よう見まねで作ってくれたらメチャクチャうまくて、食べ盛りの頃にご飯がススムおふくろメシになりましたね。
僕自身も人が作るのを見て料理する方で、なんと小学生の時にホワイトソースを作ったことがあります。本に載っている写真と作り方を見て、グラタン皿に卵とウインナーソーセージがのっていて、ホワイトソースがかかったメニューに挑戦したんですよ。それを見ておふくろは「本当にできるのかい?」と笑っていましたが、小麦粉と牛乳をコトコト煮込んで塩コショウで味付けしたらソースだけは見事にできておいしかった。あとは母親に手伝ってもらって完成させました(笑)。
社長業は孤独!30年前に始めた梅干し作りでストレス発散
僕は結構マメで、自炊してましたし、30年前からは梅干しを作り始めたんです。昔おばあさんが梅を漬けて梅酒を作っていて、「このまま漬けておけば梅干しができるよ」と。そんな体験がずっと頭に残っていたから30代半ばでやってみたんです。
梅を漬ける瓶を買い、まずは煮沸消毒。そして天日に干す。瓶の中に塩、梅、塩、梅と段々になるよう入れて、台所の日の当たらない場所に数日置く。4、5日くらいで塩が溶けて梅がクターッとなってくる。また数日置いてもいい。干すための大きなザルがなければバットに梅を並べ、上にペーパータオルを敷いて汚れないようにしてベランダで3、4日干したら思ったよりおいしい梅干しができました。使っているのは梅と塩だけです。
毎年漬けて20年物も残っていてまだ食べられますよ。ここ数年は社長になったりと忙しくて漬けてなかったけど、今年数年ぶりに漬けました。ジップロックに入れてお手軽に作りました。コツを覚えると簡単ですよ。塩だけはいいものを使ってます。
今は芸人と社長の二刀流ですが、社長のストレスはなかなか大きい。取締役会議とかでいろいろ話し合っても、社長は最終決断をしなければならない立場ですから。僕が決断しないとみんなは動けない。以前、いろんな業種の社長さんから「社長って孤独だよ」とよく聞かされたんです。それがしみじみわかります。
芸人としてはゲストがぶっちゃけトークをするラジオをやっていますが、それがストレス発散になっている(笑)。芸人の仕事は人とワイワイやれるところがいいですね。
料理もストレス発散かな。毎日家を出る前に、梅干しが入った袋ごと揺すって、塩と梅を混ぜてます。日々、梅がクタッとなっていくのを見るのが出社する前の楽しみです。
(聞き手=松野大介)
▽岡博之(おか・ひろゆき) 1958年9月、京都府出身。81年からブッチャーブラザーズとして芸人活動。2023年にサンミュージック社長就任。ラジオ「ぶっちゃけ!ブラザーズ」(東北放送、水曜夕方オンエア)。著書に「サンミュージックなお笑いの夜明けだったよ!」(晶文社)。
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