「シークレット・メロディ」若かりし日の恋の疼きが蘇るファンタジー

更新日:2025-10-04 17:03
投稿日:2025-10-04 17:00

【孤独のキネマ】

 シークレット・メロディ
 (新宿ピカデリー他で全国公開中)

  ◇  ◇  ◇


 老若男女、人はみな胸がときめくロマンチックな出会いを求めている。特に10代の無垢な精神に包括された時期はそうした願望が強い。韓国映画「シークレット・メロディ」は見ている者が若かりし自分を思い浮かべ、恋の切なさにひたることのできる作品だ。

 原案は2007年の台湾映画「言えない秘密」。いわばリメイクだが、台湾版とこの韓国版は演出も味付けもかなり違う。別物として鑑賞できるので安心して劇場に足を運んで欲しい。ちなみに「言えない秘密」は日本でも昨年、京本大我、古川琴音のコンビでリメイクされた。

 ドイツで将来を嘱望されたピアニストのユジュン(ド・ギョンス)はスランプになり、実家のある韓国に静養のため帰国。編入した音楽大学を歩いているとき、ふと聞こえてきた美しいメロディにひかれ、練習室を訪ねる。そこで古いピアノを弾いていたのは、同じ3年生のジョンア(ウォン・ジナ)だった。初対面にもかかわらず、目が合った瞬間、2人は運命の音に導かれるように惹かれ合う。

 その日から毎日、キャンパスでお互いを探し、一緒に過ごすことに。息の合った連弾と散歩デートに始まり、ピアノ・バトルに出たり、CDショップで好きな曲を聴かせ合ったりする。自転車を二人乗りし、コンサートに行く約束も。2人はお互いがなくてはならない存在になっていた。

 しかし、ある日を堺に、2人は突然逢えなくなってしまう……なぜなのか?

 なんとかしてジョンアに会いたいユジュンは彼女を探し求める。そんな折、一本の電話をきっかけに、彼女がいる場所に向かって走り出す。そして彼女もまた、彼の元へと向かうのだった……。

巧妙かつダイナミックな脚本で観客を引き込む

 幼少のみぎりから天才ピアニストと賞賛された大学生が、周囲を魅了する演奏を披露しつつ物語を進める音楽映画。一種のミュージカルとも言えるだろう。筆者のような「ネコ踏んじゃった」も弾けないピアノ音痴は、卓越した演奏技術を見るだけで映像と音響に圧倒されてしまう。

 大学の教室で突然目の前に現れた美女ジョンアに、主人公のユジュンは一目惚れする。キャンパスでたびたび出くわし、一緒の時間を楽しむ間柄になるのだが、ユジュンは彼女がどこに住み、どんな境遇の少女なのかもわからない。

 観客は主人公のもどかしさを共有。ジョンアの正体は何者なのかと思案しつつファンタジックな物語にぐいぐいと引き込まれてしまう。巧妙にしてダイナミックな脚本だ。

 ヒロインが可愛い。ジョンアはいつもニコニコ微笑みかけるが、その反面どこか憂いを秘めている。そして寂しげに去っていく。

 最初はそれほどの美人と思わなかったが、物語が進むうちに演じるウォン・ジナの表情が一輪の野菊のように可憐に迫ってくるから不思議だ。筆者などは「あれ、彼女によく似てるなぁ」と10代のころの初恋の恋人の顔を思い浮かべてしまった。

 ちなみにウォン・ジナは1991年生まれ。なんと現在34歳である。いやはや見た目が若い。というか、若すぎるよ~!

 かくして若い恋人たちは別れという宿命に直面する。その先にある両者の決断とは……。

 不可思議な運命の結末は劇場のスクリーンで確かめてほしい。同時に大人の観客に、かつての甘酸っぱい胸のうずきを蘇らせてもらいたいと思うのだ。 (配給=クロックワークス)

(文=森田健司)

エンタメ 新着一覧


今田美桜の動きが気になる? 橋本環奈「紅白4年連続司会」がかかる“今年ならでは”の憂鬱
 NHK連続テレビ小説「あんぱん」が9月26日に最終回を迎えるまで、あと1週間。放送開始から大好評のままフィナーレとなり...
2025-09-19 17:03 エンタメ
「あんぱん」のぶの“お手柄”総決算の回。ヤムさん(阿部サダヲ)と蘭子(河合優実)の繋がりは“前世”からの縁なのか?
 のぶ(今田美桜)は草吉(阿部サダヲ)にあんぱんを焼いてほしいと頭を下げるが、断られてしまう。蘭子(河合優実)からこのま...
桧山珠美 2025-09-18 17:16 エンタメ
「愛の、がっこう。」最終回で広がる“竹千代ロス”…坂口涼太郎の"舎弟キャラ”が視聴者に愛されたワケ
 評判の良いドラマには、愛される脇役が必ずいる。今期なら、9月18日が最終回の「愛の、がっこう。」(フジテレビ系=木曜夜...
2025-09-18 17:03 エンタメ
渡部建が選んだ“不倫を許してもらえないキャラ”の賞味期限…逆風をネタに笑いを取る生き残り戦略の現実
 2000年の“多目的トイレ不倫”騒動から5年。アンジャッシュの渡部建(52)は「このところ、まだ世間に許してもらえない...
2025-09-18 17:03 エンタメ
黒木メイサの新恋人報道でジャニーズJr.ファン大パニック…発端は週刊文春公式Xの「大物ジュニア」だった
 9月18日発売の「週刊文春」に掲載されている、女優の黒木メイサ(37)の記事についてジャニーズJr.のファンが空騒ぎだ...
2025-09-18 17:03 エンタメ
加藤清史郎の“奇跡の成長”を「放送局占拠」で見た。寺田心ら子役出身者がイケメンになっている件
 加藤清史郎くんのイケメンぶりには目を見張るものがあります。現在、櫻井翔主演「放送局占拠」(日本テレビ)に出演しています...
世界陸上復活でも「やっぱりウザい」織田裕二と今田美桜スカスカコメントの絶妙バランス
 34年ぶりの東京開催で話題の「世界陸上」が熱い。TBS系で生放送もされているが、競技と併せて注目されているのが、俳優の...
2025-09-17 18:08 エンタメ
"守りのフジ"は菅田将暉、"攻めの日テレ"は若手で勝負 水曜ドラマ対決「第3ラウンド」で逆転の可能性
 日本テレビとフジテレビが連ドラ対決している水曜夜10時。日テレの方は昨春、いったん廃枠にした水10ドラマ枠を1年で復活...
2025-09-17 17:03 エンタメ
ATSUSHIものまね芸人が逆ギレで騒動拡大…売名チャンスに本人は逃亡中のナゾ
 9月9日に営まれた橋幸夫さんの通夜に参列し、物議をかもした「EXILE」ATSUSHIのものまね芸人、RYOをめぐる騒...
2025-09-17 17:03 エンタメ
俳優・清水尋也容疑者の薬物逮捕で「東リベ」「あんぱん」に映像関係者の強い関心が集まる複雑事情
 9月26日に最終話を迎えるNHK朝の連続テレビ小説『あんぱん』の視聴率がここにきて17%超えを連発、平均視聴率も有終の...
2025-09-17 10:58 エンタメ
目玉は「102回目のプロポーズ」くらい…フジテレビ秋の番組改編イマイチ、復活への遠い道のり
 フジテレビが先週8日、東京・台場の同局にて「フジテレビコンテンツラインナップ発表会」を開催。今秋の改編について発表した...
2025-09-16 17:03 エンタメ
NHK大河ドラマ「べらぼう」に芸人がこぞって出演するワケ 有吉弘行、鉄拳に続き野性爆弾くっきー!、ひょうろくも
 横浜流星(28)が主演を務める、NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」にお笑いコンビ「野性爆弾」のくっきー!(...
2025-09-16 17:03 エンタメ
「時代に挑んだ男」加納典明(43)500人斬り伝説「いざ…という時に相手マネジャー乱入、窓から飛び降り逃走した」
【増田俊也 口述クロニクル】#43  作家・増田俊也氏による新連載スタート。各界レジェンドの生涯を聞きながら一代記を紡...
2025-09-16 17:03 エンタメ
サンミュージック岡博之社長 肉の代わりに鮭缶を使った「鮭じゃが」
【私のおふくろメシ】  岡博之さん  (サンミュージック社長/ブッチャーブラザーズ)  今週67歳になったブッチャー...
2025-09-16 15:08 エンタメ
『あんぱん』担当編集者の“セリフ”にモヤッ…。そしてメイコはまた歌うのだろうか
 ようやく世に出た絵本『あんぱんまん』は売れないままだった。それでものぶ(今田美桜)は、子どもたちに読み聞かせを続ける。...
桧山珠美 2025-09-16 11:03 エンタメ
永野芽郁に貼られた「悪女」のレッテル…共演者キラー超えて、今後は“共演NG”続出不可避
 永野芽郁(25)と坂口健太郎(34)のスキャンダルが、発売中の「週刊文春」で報じられて波紋が広がっている。  永野は...
2025-09-16 10:58 エンタメ