「ばけばけ」でヘブンさんが好演だが…ドラマに外国人俳優が少ない不思議

更新日:2025-11-23 17:03
投稿日:2025-11-23 17:00

【桧山珠美 あれもこれも言わせて】

「♪日に日に世界が悪くなる~」。気がつけばハンバート ハンバートの主題歌「笑ったり転んだり」を口ずさんでいる今日この頃。それほど朝ドラ「ばけばけ」にハマっている。ラフカディオ・ハーン/小泉八雲と妻セツをモデルに、トキ(高石あかり)と夫・ヘブン(トミー・バストウ)の物語が描かれている。

 明治のあの時代、地方に外国人が来ること自体珍しい。英語をしゃべれるのは錦織(吉沢亮)だけ。ヘブンの意思が伝わらず誤解も多発。「ビア(ビール)が欲しい」と頼まれてもビアが分からず、ビア? ビワ? と琵琶や枇杷を集めて並べるというコントのような一幕も面白かった。

 若干笑い多めだが、言葉の通じない外国人が異国で苦労する様子は十分伝わってきた。

 そんな感じでおトキを中心に日本人キャストも素晴らしいが、今回はヘブン役トミー・バストウに注目したい。さすが1767人の中から選ばれただけのことはある。彼は八雲に近づくため、猫背の歩き方や机に丸くなって執筆する姿勢を徹底的に練習したとか。

 配信ドラマ「SHOGUN 将軍」にも出演し、幼少期に日本に派遣され、日本語が堪能なポルトガル人のアルヴィト司祭を演じていた。黒沢明の「用心棒」や「羅生門」に心引かれ、日本文化や映画に興味を持ち独学で10年以上、日本語の勉強をしているとか。まさに八雲になるべくしてなったという感じだ。

■海外でも見てもらう時代なのに

「ばけばけ」にはもうひとり、ヘブンの同僚記者イライザ役でシャーロット・ケイト・フォックスも出演している。「マッサン」で主人公の妻・エリーを演じた。「マッサン」の後、芦田愛菜とダブル主演で民放ドラマや日本の映画やドラマに出演していたが、いつのまにやら帰国。今回、久々のお目見えとなる。

 朝ドラ60年超の歴史のなかで、外国人が主演クラスをつとめたのはこの2人くらいか。遠い昔には神戸の老舗パン屋フロインドリーブ夫妻をモデルにした「風見鶏」の蟇目良、最近は「カムカムエヴリバディ」のロバート役・村雨辰剛もいるが。

 考えてみれば、コンビニや飲食店など、街中に外国人があふれているのに普通に暮らす外国人があまり出てこない。放送中の「シナントロープ」にも外国人労働者が出てくるが、よく見たら厚切りジェイソンだった。

 かつてキャラ強め外国人の役といえば大泉滉かE・H・エリック、女性ではイーデス・ハンソンが一手に引き受けていた印象がある。日本在住で日本語が達者な見た目が外国人を重宝してきたわけだが、日本のドラマを海外でも見てもらおうと思うなら外国人をもっと増やす必要がある。ヘブンさんを見て、そんなことを考えた。

(桧山珠美/コラムニスト)

エンタメ 新着一覧


田中麗奈、45歳。心も体も変化するなか、ずっと変わらない“芝居”への気持ち
 多くの人の心をつかんだ「なっちゃん」のCMの初代キャラクターに始まり、映画『がんばっていきまっしょい』『はつ恋』、近年...
望月ふみ 2025-08-24 11:45 エンタメ
『あんぱん』のぶ、山に登って「ボケー!」は“征服欲”の成せる業か? アンパンマンの原型がついに爆誕
 のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)の別居生活が続く中、登美子(松嶋菜々子)から嵩の名前の由来を聞いたのぶは、ひとり山へ向...
桧山珠美 2025-08-28 15:04 エンタメ
ラウール、22歳の色気が破壊級!「愛の、がっこう」は“代表作”になると断言してもいい
 夏ドラマも中盤にさしかかりました。そのなかでも回を重ねるごとに盛り上がっているのが、木曜劇場「愛の、がっこう」(フジテ...
【芸能クイズ】松本人志が福山雅治と「HEY!HEY!HEY!」で作った“オリジナル料理”の名前は?
 テレビやネットでふと耳にした、あのひとこと。記憶の片隅に残る発言の背景には、ちょっとした物語があるのかも?  ネ...
「あんぱん」羽多子らの“あの言葉”にあんぐり…のぶも感動してる場合か。落語家の年齢も気になる
 嵩(北村匠海)は「まんが教室」という番組に出演してほしいという健太郎(高橋文哉)の頼みをしぶしぶ承諾する。そして第1回...
桧山珠美 2025-08-28 15:06 エンタメ
「あんぱん」のぶ、議員のコネ入社なのに“クビ”の謎。急成長したアキラ君と老けないオトナ達に酔いそう…
 嵩(北村匠海)が書いた詞にたくや(大森元貴)がメロディーをつけて生まれた「手のひらを太陽に」は、「みんなのうた」でも紹...
桧山珠美 2025-08-28 15:06 エンタメ
スキャンダル続出の花田優一、美女にモテまくるのは何故? 不誠実男に学ぶ「悪名は無名に勝る」メリット
 元横綱・貴乃花光司と元フジテレビアナ・花田景子を両親に持つ“親の十四光り”の花田優一。  現在、元テレビ東京アナ...
堺屋大地 2025-08-17 11:45 エンタメ
「あんぱん」八木(妻夫木聡)と蘭子(河合優実)、“何か”が始まっちゃう? 嵩は作詞能力をいつ見抜かれたのか
 舞台公演は成功裏に幕を閉じる。数日後、なぜかぼんやりした様子の嵩(北村匠海)。そこに、また一緒に楽しい仕事をしようとた...
桧山珠美 2025-09-04 12:26 エンタメ
カズレーザー、山里亮太…芸人はなぜモテる? 業界人が分析する「メロい」現象が起こりやすい納得の理由
 カズレーザーさんと女優の二階堂ふみさんが結婚した。週刊誌にも撮られなかったどころか、噂すらなかったので世間はびっくり&...
帽子田 2025-08-15 11:45 エンタメ
島崎遥香31歳、40代を迎えても「幸せの更新」方法は変わらない。カテゴライズせず“ぱるる”として生きていく
 昨年、初めての著書『ぱるるのおひとりさま論』(大和書房)を出版するなど、このところ「ひとりが好き」「結婚願望はナシ」と...
望月ふみ 2025-08-14 11:45 エンタメ
ドラマ『しあわせな結婚』の奇妙な違和感。松たか子らの“ちぐはぐさ”は計算どおりなのか?
『光る君へ』『ふたりっ子』『大恋愛』などで知られるベテラン脚本家・大石静さんの完全オリジナル作品として、夏ドラマの中でも...
「あんぱん」六原永輔=永六輔の“言葉”に違和感が…。いせたくや(大森元貴)らの記憶力も凄すぎる
 のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)は互いに隠していたことを打ち明け、新たに前を向く。それから7年の歳月が流れ――、未だ漫...
桧山珠美 2025-08-13 18:06 エンタメ
【芸能クイズ】ヒントは有名コンビ!「佐藤嘉彦・粋子」が本名な芸人は誰でしょう?
 テレビやネットでふと耳にした、あのひとこと。記憶の片隅に残る発言の背景には、ちょっとした物語があるのかも?  ネ...
空前のオカルトブーム! 大人も楽しめる「夏のホラーアニメ」3選。平成の“トラウマ級”作品が令和にリメイク
 近年、小説や映画を中心に巻き起こっているホラーブーム。Web記事から単行本化された小説を原作とし大ヒット映画となった「...
ヒカキンは本当に“聖人”だったのか? 炎上騒動で見えたトップYouTuberの人間くささ
 日本を代表するYouTuber・HIKAKIN(以下、ヒカキン)が、パクリ動画を公開したことで炎上しました。  ...
堺屋大地 2025-08-14 10:37 エンタメ
「あんぱん」のぶの不器用設定はどこへ? ボツ原稿を持ち歩く嵩…まだまだあるクエスチョン
 独立した嵩(北村匠海)は独創漫画派という集団に所属し、そこで割り振られた仕事をこなしていた。だが、決して順調とは言えな...
桧山珠美 2025-08-11 17:03 エンタメ