最初の“月9”が後に一大ブームとなるトレンディードラマの「種」だった

更新日:2025-12-03 17:03
投稿日:2025-12-03 17:00

【あの頃、テレビドラマは熱かった】#17

「アナウンサーぷっつん物語」
 (1987年/フジテレビ系)

  ◇  ◇  ◇

 電電公社がNTTとなって2月に株式上場。4月には国鉄も分割民営化してJRが発足した1987年。“地上げ屋”の暗躍で地価は高騰し、世は“バブルの塔”の階段を上ることしか考えていなかった頃。そんな中、フジテレビ編成の最高責任者であった日枝久氏(当時49歳で常務)体制下で誕生したのが、“月9ドラマ”だ。

 81年に日枝編成局長のもと「楽しくなければテレビじゃない」を打ち出したフジテレビは、“いいとも”と“ひょうきん族”をベースにその“軽チャー路線”を拡大させていた。一方で、80年代前半には月曜夜9時に高視聴率を連発していた“欽ドン”が失速。

 それに見切りをつけたかのように始まったのが、全6話と短めの連ドラ「アナウンサーぷっつん物語」だった。

 美人として評判の岩瀬恵子、親しみやすい寺田理恵子、イジられ上手の長野智子ら84~86年入社の女子アナたちが注目されていた時期。そして前年に片岡鶴太郎が流行させた「ぷっつん」というフレーズを合わせて、フジテレビそのものを舞台に連ドラにしてしまう安直さ、じゃなかった、軽やかさ。

「ひょうきん族」や「オールナイトフジ」なんかでちょいちょい見せていた“ギョーカイ”の内輪ネタが若者にウケていた頃だけに、視聴率は平均で18%前後と“それなり”の数字を稼いだ。そしてこの“業界シリーズ”は「ラジオびんびん物語」や「ギョーカイ君が行く!」など5作続く。

 ただ、今振り返ると、この「アナぷつ」は“ギョーカイもの”でありながら、後に一大ブームとなる“トレンディードラマ”の種だったと思う。ヒロインの岸本加世子(当時26歳)、相手役の神田正輝(同36歳)というカップルは新鮮だったし、雇均法施行から間もない「都会で働く男女の本音と恋愛」を、流行ものを取り入れながら軽やかに描いていた。

 実はこの前年にTBSでヒットした明石家さんまと大竹しのぶの「男女7人夏物語」こそが、トレンディードラマの原型だと僕は思っている。でも、それがウケると察知して積極的にその路線を取り入れたのが、フジテレビの軽やかさだった。

“月9”と呼ばれ始めるのは、現実のバブルが崩壊する90年あたりから。だけど、月9の高視聴率はバブルとは言えないくらい長く、20年ぐらい続いた。そりゃ日枝さんが長きにわたって権力を維持するのもうなずける。それだけの功績だし。でも実際そんな会社、いくらでもありますよね?

(テレビコラムニスト・亀井徳明)

エンタメ 新着一覧


銀縁メガネの特徴で「福西のヨン様」と新聞の見出しまで躍っちゃうの?
 結(橋本環奈)は、同じ糸島東高校で幼なじみの陽太(菅生新樹)が出場する野球の試合を、書道部の先輩・風見(松本怜生)や恵...
桧山珠美 2024-10-10 18:24 エンタメ
ハギャレンメンバーで唯一、ホンモノのギャルは誰でしょう?
 博多ギャル連合(ハギャレン)の総代でギャルのルーリー(みりちゃむ)から半ば脅迫された結(橋本環奈)は、書道部の風見先輩...
桧山珠美 2024-10-08 16:50 エンタメ
眞栄田郷敦離婚からの高良健吾×田原可南子“結婚&妊娠”Wおめでた報道に抱くもの
 あのゴードンが帰ってきました。「きかんしゃトーマス」のゴードンではありません。眞栄田郷敦のことです。  父親(千...
『極悪女王』は“嫌われ女”3人の逆襲か。ゆりやん、剛力彩芽、唐田えりかが必然だったワケ
 9月19日にNetflixでドラマ『極悪女王』(全5話)が配信開始されました。ゆりやんレトリィバァさん演じるダンプ松本...
timelesz 菊池風磨に「優秀な面接官」と称賛。人事のプロはどう見た?
 9月13日より配信が開始されたオーディション番組『timelesz project -AUDITION-』(Netfl...
【写真特集】上村愛子×皆川賢太郎 結婚発表会見は“白のペアルック”、満面の笑みでカメラ目線も
【この写真の本文に戻る⇒】“冬季五輪夫婦”上村愛子&皆川賢太郎離婚の衝撃。「円満離婚」するカップルは揉めてないのは本当か...
クズのくだりに違和感。マツケン演じる栄吉のカラオケは「おむすび」の名物シーンに?
 天神のゲームセンター近くでギャルたちに出くわした結(橋本環奈)が、しつこく博多ギャル連合(ハギャレン)への加入を求めら...
桧山珠美 2024-10-03 17:05 エンタメ
15分の放送がとても長く感じるのはなぜ?平成ギャルと視聴者の戦いかも
 書道部に入った結(橋本環奈)は、先輩の風見(松本怜生)の言動に心ひかれるようになり、青春を謳歌している気分になるが、ク...
桧山珠美 2024-10-02 17:10 エンタメ
そう来たか!橋本環奈の台詞「“朝ドラ”ヒロインか!」に込められたメッセージは…
 平成16年、福岡県糸島で農業を営む父・聖人(北村有起哉)、母・愛子(麻生久美子)、祖父・永吉(松平健)、祖母・佳代(宮...
桧山珠美 2024-09-30 17:30 エンタメ
菅田将暉『眉毛 なぜ』の話題で持ち切り。菅田3兄弟から目が離せない!
 菅田将暉(31)は見るたびに印象が違います。たとえば、先日の「あさイチ」(NHK)プレミアムトークに出演した際は、「デ...
ニコイチだった目黒蓮「海のはじまり」と松村北斗「西園寺さん」、株を上げたのは…?
 夏ドラマで“シングルファーザー”設定かぶりで話題となった、Snow Man・目黒蓮さん(27)主演の「海のはじまり」(...
こじらぶ 2024-09-28 06:00 エンタメ
ヒロインがすでに亡くなっている…! “地獄の道”を歩んだ佐田寅子は特別な女性だったのか?
 さまざまな仕事をかけ持ちし、多忙な毎日を送る優未(川床明日香)。花江(森田望智)もひ孫に囲まれ平穏に暮らす。航一(岡田...
桧山珠美 2024-09-28 06:00 エンタメ
なぜ『内村プロデュース』は伝説の番組に? 有吉弘行らから見える内P愛
 来たる9月28日、『内村プロデュース』(テレビ朝日系)が『祝!内村光良還暦祭り 内村プロデュース復活SP!!』と題して...
桂場の甘味好き、愛を語る家裁メンバー…「虎に翼」の登場人物は愛すべき人たちばかり
 最高裁大法廷では、いよいよ美位子(石橋菜津美)の事件の判決が出されようとしていた。寅子(伊藤沙莉)は早朝、よね(土居志...
桧山珠美 2024-09-25 17:10 エンタメ
期待はずれと面白かった夏ドラマを調査!『新宿野戦病院』をよそにアラフォー世代に刺さったのは…?
 2024年夏ドラマが続々と最終回を迎えています。今期も話題を振り撒いてくれた数々の作品がありましたが、みんなの率直な感...
ちちんぷいぷい返しを試みた航一は朝ドラヒロイン良き夫“ベスト5”に入る
 寅子(伊藤沙莉)の名前を知る少女の祖母・佐江子(辻沢杏子)が訪ねてきて、孫を助けてほしいと寅子にすがる。  そん...
桧山珠美 2024-09-23 17:25 エンタメ