「時代に挑んだ男」加納典明(66)100歳までに絵画でもトップに。「そこまでやらないと気が済まない」

更新日:2025-12-04 17:03
投稿日:2025-12-04 17:00

【増田俊也 口述クロニクル】

 作家・増田俊也氏による新連載スタート。各界レジェンドの生涯を聞きながら一代記を紡ぐ口述クロニクル。第1弾は写真家の加納典明氏です。

  ◇  ◇  ◇ 

増田「ご両親についてはお聞きしましたが、ご兄妹とはどのような関係だったんでしょうか」

加納「兄貴は俺の3歳上でね、リーマンやってた。名鉄百貨店。ほんとうに実直な人でね」

増田「ある意味で典明さんとは正反対の人生を歩まれた」

加納「そう。でも俺はすごく尊敬してる」

増田「妹さんはたしか2人いらっしゃると」

加納「うん。上の妹はおふくろの血引いて頑張り屋。店も名古屋で5軒くらいやってたこともあるし、小料理屋とクラブとイタリアン。今でも自分の娘に任せたり、譲り出してる。根性入ってていい子ですよ。俺も随分助けられた」

増田「助けられたとは仕事でですか?」

加納「金ですよ」

増田「典明さんがお金で苦労したときに」

加納「そう。もちろん金はもう返したけど、あいつには金以外でまだまだ返さなきゃいけない。俺にとって非常に大切な人間なんだ。面と向かって俺はそういうこと言わないんだけどね。でもほんとうに大切な人間ですね」

増田「下の妹さんはどんな方ですか」

「親父の影響です。顔向けできない」

加納「結婚してないですね。で、外国人と付き合ってて、それと添い遂げりゃいいなと思ってたんですけど、結局別れてしまって。髪結いやってます。美容師。その下の弟は俺の助手をやっていた。8歳下で一番年も離れてるし、俺が写真やる時に助手をちょっとさせました。俺は嫌だったんだけど『そう言わずに使ってやれよ』って親父に言われて。今でも写真で生きてますよ」

増田「たまにご兄妹で一堂に会することはあるんですか」

加納「ありますね。電話でもときどき話すね。兄妹の心配なんか全然しなかったんだけど、この年になるとやっぱりちょっと気になりますね」

増田「名古屋に行かれることは?」

加納「ありますよ。行くとみんな喜ぶし。で、妹がやってる小料理屋とか行くと俺に会いたがってるお客さんもいるしね」

増田「ご実家はまだあるんですか」

加納「いや、それはもうないですね」

増田「東京へ出てカメラマンになったことは、全然、後悔というか」

加納「ないですね。名古屋という街は嫌いじゃない。でも別に故郷がうんぬんっていう感覚はないんですよ。東京は日本の中心であるし、先端であるし、やっぱり高校生の頃から東京へ行きたいっていうのがあって、それを果たして東京へ来て、一応とりあえずトップカメラマンの1人になって、で、まだまだやり足らないことがいっぱいあると」

増田「絵ですね」

加納「そうです」

増田「絵画へのこだわりは相当に強いようですね」

加納「それはやっぱり親父の影響ですよ。親父が目指したものを俺も目指すんだと。100歳までに絵でどこまでいけるか、ひと勝負しますよ」

増田「その覚悟がすごいです」

加納「親父に顔向けできないというか親父を超えられないというか、そういう強い思いがあります。だから絶対やり切ってみせたいです。それも半端なただちょっと有名な画家になってというレベルじゃなくて、これまでの絵の世界で全くなかったゾーンを作ったぞというぐらいまではやらないと気が済まない。もちろん写真も並行して現役でやっていきますよ。若いやつらに絶対に負けたくない」

(第67回につづく=火・木曜掲載)

▽かのう・てんめい:1942年、愛知県生まれ。19歳で上京し、広告写真家・杵島隆氏に師事する。その後、フリーの写真家として広告を中心に活躍。69年に開催した個展「FUCK」で一躍脚光を浴びる。グラビア撮影では過激ヌードの巨匠として名を馳せる一方、タレント活動やムツゴロウ王国への移住など写真家の枠を超えたパフォーマンスでも話題に。日宣美賞、APA賞、朝日広告賞、毎日広告賞など受賞多数。

▽ますだ・としなり:1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

エンタメ 新着一覧


超鈍感力! 羽鳥の絶縁宣言を屁とも思わないスズ子とタケシは似た者同士
 歌手引退――。スズ子(趣里)はその決断を、愛子(このか)や大野(木野花)に伝えた。  羽鳥善一(草彅剛)に絶縁す...
桧山珠美 2024-03-26 15:40 エンタメ
「GTOリバイバル」注目の新人イケメンは?松嶋菜々子は本当に出るのか
 反町隆史主演「GTO」が26年ぶりに帰ってきます。反町演じる元ヤン教師・鬼塚英吉がさまざまな問題を解決する学園モノで、...
ドヤ顔のアユミとヘイヘイブギー歌唱シーン温存の理由がわかる回だった
 昭和31年、大みそか。第7回オールスター男女歌合戦当日。スズ子(趣里)は、楽しみに会場へと向かう。スズ子が楽屋で支度を...
桧山珠美 2024-03-22 14:30 エンタメ
最終回秒読み…スズ子はブレずにお人よし、NHKと沼袋勉の手腕いかに!?
 愛子(このか)は、翌日の体育の時間に足の早い転校生と競争することになっていた。しかし、勝てる見込みがなく、愛子は学校を...
桧山珠美 2024-03-21 16:07 エンタメ
和田勉が転生したら中村倫也に!? 強烈インパクトで霞んだ礼子娘の初登場
 東京ブギウギのヒットから9年、ブギブームも下火になってきつつある中、スズ子(趣里)や羽鳥善一(草彅剛)のブギは古いとい...
桧山珠美 2024-03-18 14:30 エンタメ
「光る君へ」主人公バージン喪失!大石静氏が描く平安エロ&バイオレンス
 NHK大河ドラマ「光る君へ」は、平安中期の貴族社会を舞台に、吉高由里子演じる主人公のまひろ(紫式部)の生涯を描くもので...
沢尻エリカ不死鳥の如く女優復帰!大衆は真似できぬ人生転落リアルショー
 2月25日、沢尻エリカの女優復帰作となった主演舞台『欲望という名の電車』が千秋楽を迎えました。  「『残念プロフ...
堺屋大地 2024-03-16 06:00 エンタメ
NHK大阪が誘拐未遂事件をぶち込んだのなぁぜなぁぜ? かつ丼コント?
 誘拐犯が捕まってから、愛子(このか)は3日間も学校を休んでいた。スズ子(趣里)は、学校に行くようにと言うが、愛子は友達...
桧山珠美 2024-03-15 14:30 エンタメ
“テレ朝ドラマ”常連・ホンモノの刑事よりも刑事な内藤剛志、降臨!
 大野(木野花)が受けた電話は、3万円払わなければ、愛子(このか)を誘拐するという脅しの電話だった。そして、警察には伝え...
桧山珠美 2024-03-13 14:30 エンタメ
りつ子スパークのラインダンス必見!ワクワクズキズキと笑顔が溢れる回
 羽鳥善一(草彅剛)作曲二千曲記念ビッグパーティーの日が近づいてくる。羽鳥はスズ子(趣里)たちに、パーティーで余興をして...
桧山珠美 2024-03-11 15:30 エンタメ
“ユーミンドラマ”で見せたクソ女の夏帆、そして金子大地と中島歩に注目!
この投稿をInstagramで見る 【公式】「ユーミンストーリーズ」オムニバス夜ド...
真木よう子“まっけんセクハラ発言”はわざと?昭和の価値観をエンタメ化説
 ドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』(2007年/フジテレビ系)や『最高の離婚』(2013年/同)などでの演技が好...
堺屋大地 2024-03-09 06:00 エンタメ
第111回ブギウギの“三大なぁぜなぁぜ”…畑仕事する農家の手じゃない!
 梅吉(柳葉敏郎)が亡くなった。葬儀では松吉(木内義一)が号泣しながら、遺影の自慢をする。  そんな中、スズ子(趣...
桧山珠美 2024-03-08 15:50 エンタメ
死の間際までユーモア忘れず、父娘で歌った「父ちゃんブギ」
 久しぶりに香川に戻ったスズ子(趣里)は、梅吉(柳葉敏郎)が写真館を切り盛りし、繁盛していた話を聞く。梅吉が大切にしてい...
桧山珠美 2024-03-07 15:40 エンタメ
NHKさん、経費削減のあおりですか?スズ子の米公演シーンは写真だけ
 アメリカ行きを決めたスズ子(趣里)だったが、愛子(小野美音)は置いていかれることにすねてしまう。  旅立ちの直前...
桧山珠美 2024-03-05 15:35 エンタメ
“電撃婚”大谷翔平の心を射止めた妻はプロ中のプロ彼女。目標はダル夫婦?
 2月29日16時42分のことでした。NHKで衆院政治倫理審査会(政倫審)の中継を見ていたら、<大リーグ・大谷翔平選手 ...