芸人ヒロシさんのおふくろメシは腹持ちがいい九州の定番メニュー「だご汁」

更新日:2025-12-29 17:03
投稿日:2025-12-29 17:00

【私のおふくろメシ】

 ヒロシさん(芸人/53歳)

 ソロキャンプが人気の芸人・ヒロシさんのおふくろメシは熊本の郷土料理のだご汁。子どもの頃は食べ物のことで母親にだまされていたという。

  ◇  ◇  ◇

 最初に母親にはいろいろとだまされてきたお話をしたい。僕は子どもの頃にホットケーキを食べたことがなかったんです。小麦粉を水で溶いてフライパンで焼いただけのものに、砂糖を熱して液状にしたシロップをかけて「ホットケーキ」と言われて出されていたんですよ。

 僕は本物を知らなかったので、それがホットケーキだと思って食べていました。それが「おふくろメシ」と言われて頭に浮かぶ思い出のメニュー(笑)。本物はふっくらして甘いけど、母親のは具のないお好み焼きに砂糖のシロップをかけただけですよね。でも、一応本物らしく2枚重なっていて、この辺があざといですよね。近くにファミレスもない時代だったから、本物のホットケーキを知ったのは20歳を越えてからじゃないかな。でも、子ども時代はうまいと思って食べていたのかも。

■サンドイッチは味噌を塗った味噌パン

 母親には似たようなことをサンドイッチでもされました。サンドイッチというと、お金持ちの子どもが持ってくるイメージで、「カッコいいなあ」と憧れて、遠足の時に「作ってよ」と頼んだらパンに味噌が塗ってあった。味噌パン。それは一度だけでしたけど、他の子のサンドイッチと明らかに違って恥ずかしかったなあ。

 お金がなかったからポテトチップスを買ってもらえなかったけど、うれしかったのは手作りのポテトチップスでした。ジャガイモを輪切りにして衣をつけて、天ぷらみたいに揚げてくれるんですよ。それを持って友だちと遊びに行く時はいつもテンション上がりましたね。

 今、ジャガイモをもらうことがあるので、昔を思い出して自分で作ってみるんですが、衣はつけないで素揚げしています。衣つきよりホクホクしたものを、塩をかけて食べます。できるだけ薄く切ると、ポテチのようになりますよね。

■小麦粉を練ってちぎって味噌汁にいれる「だご汁」

 母親はホットケーキもジャガイモの天ぷらもそうですが、小麦粉をよく使っていた。郷土料理のだご汁もよく作ってくれました。小麦粉を練ってちぎって味噌汁に入れるんですよ。九州の定番メニューで、これが僕のおふくろメシと言えるのかな。僕の地元ではだんごを“だご”と呼びます(大分県ではだんご汁、九州では一般的にだご汁)。

 野菜や肉が入っておいしいんですが、うちの母親の場合は小麦粉でお腹を満たさせる作戦だったのかなと(笑)。確かに腹持ちがいいんです。熊本の郷土お菓子のいきなり団子もサツマイモが入っていますし、もしかしたらイモや小麦粉でお腹を満たす文化があったのかもしれません。

 九州はざっくり分けると西だから、遠くても大阪など関西と共通して小麦粉を使う「粉モン」の習慣があるんですかね。僕もお好み焼きとご飯を一緒に食べるのは別に苦痛じゃないですし。

■テレビで紹介される豪勢なキャンプメシに異議あり

 キャンプメシに関しては僕自身はあまり食にこだわらないタイプなので鉄板で焼いて食べるくらいなんです。結局はキャンプで食べると何でもうまいんですよね。ステーキ肉を持っていって、塩コショウだけで食べるのがうまい。

 僕よりもキャンプ仲間の方が圧倒的に料理好きで、スパイスをいっぱい持ってきたりします。そういう人はキャンプだからではなくて、家でも凝ったスパイスを使って料理するんです。でも、僕は家でも調味料は塩コショウ、醤油だけでシンプルに作るので、キャンプでもそれ以外は持っていかないです。こだわりがないのがこだわり。いつも食べているものでもキャンプ場で食べるとうまいですから。

 だから、テレビでたまに紹介される「キャンプメシ」は理解できないんです。ソロキャンプしに行って、鶏の丸焼きとか豪勢な料理を作る人がいるけど、「それ、何人で食う量なんだよ」と思う。家族のキャンプなら別ですけど、ソロキャンプじゃ余った分は捨てているんじゃないかと。料理法も凝って、鶏のお尻に缶ビールを入れて軟らかくしたりして、バエる料理を作りたいんだろうけど、一羽の鶏の命を軽く見ている人だと僕は思っています。

 僕は1人で食べ切れる量しか持っていかないし、必ず使い切って帰ります。貧乏性なのかもしれないけど、僕はこれからもソロキャンプのメシはシンプルにいきたいです。

(聞き手=松野大介)

  ◇  ◇  ◇

【レシピ】(2人分)

(1)(だご用)薄力粉50グラムと塩ひとつまみをボウルに入れて水でこねて30分寝かす。
(2)煮干しに水を加えておいておく。
(3)大根は幅5ミリ程度で十文字に切る(いちょう切り)、ニンジンは縦半分に切り、幅5ミリの半月切りに、ゴボウはきんぴらのようにささがき、シイタケは軸を落として薄切り。好みでエノキダケなどキノコ類、長ネギ(ともに1センチ程度の長さ)を加えることも。
(4)鶏もも肉(50グラム)は小さめの一口大。
(5)鍋にだし汁を入れて煮立たせアクを取り、そこに鶏肉と野菜を入れてアクを取り、軟らかくなるまで弱火で煮る。
(6)スプーンでだごを一口大にすくい、落とし入れて火が通るまで煮る(3分程度)。
(7)味噌を溶き入れてひと煮。椀によそい、小ネギを散らす。好みで七味唐辛子、ユズコショウを添える。

▽本名・齊藤健一(さいとう・けんいち) 1972年1月、熊本県出身。95年に芸人デビュー。コンビ活動などを経て2000年代にピン芸人でブレーク。15年開設のYouTube「ヒロシちゃんねる」のソロキャンプが人気に。キャンプの著書多数。

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