昭和の恋愛には「待つ時間」があった。進展の遅さが生む、ときめき
私が若かった頃、恋愛はもっと“もどかしいもの”でした。家の電話しか連絡手段がなかったから、親の目を盗んで電話をかけたり、文通の返事を何日も待ちわびたり……。
SNSもLINEもなかったからこそ、会えない時間がそのまま、恋しく想う時間になっていたのです。
けれど今は、マッチングアプリで手軽に出会え、LINEひとつで即座にやりとりできる時代。スピード感のある恋愛は、合理的で効率的。でも、そのぶん“ときめき”が早く消えてしまうこともあるのではないでしょうか。
そんな時代の中で『波うららかに、めおと日和』のように、焦らずじっくりと関係を育てていく姿に「憧れる」と語る若者が多いのは、どこか不思議で、でもとても嬉しく感じます。
昭和の恋愛が令和の心にも響くのは、“恋ってこういうものだったよね”という懐かしさと、その純粋さに、もう一度心を震わせたいという願いが重なるからなのかもしれません。
ドラマを観ながら、自分も“胸キュン”していた
正直に言えば、このドラマのふたりの関係は、現実の昭和の結婚生活とは少し違うかもしれません。お見合い結婚といっても、実際にはもっと現実的で、こんなに美しいやりとりばかりではなかったでしょう。
けれど、ふたりがそっと見つめ合う視線、敬語を使いながら丁寧に会話を重ねる様子、ぎこちない距離感に、私も思わず胸がキュンとしてしまいました。
前回のコラムでも書きましたが、50代になっても、誰かに恋をしたいと思う気持ちは、決して恥ずかしいことではないと思っています。
年齢を重ねるごとに「今さら恋なんて」と自分に言い聞かせるようになりますが、心の奥では「誰かに好きになってほしい」「誰かを好きになりたい」と願っている--そんな自分に気づくこと、ありませんか?
私自身、「恋愛らしい恋愛」をあまりしてこなかった人生でした。だからこそ、ドラマのようなじれったくも純粋な関係性に、過去の「恋への憧れ」が重なって見えてしまうのかもしれません。
スピード重視より、スローな恋愛もいいじゃない?
『波うららかに、めおと日和』が話題を集めているのは、令和というタイパ重視の時代に、「恋って、もっとゆっくりでもいいんじゃない?」というメッセージが、多くの人の心に響いたからだと思います。
恋愛に“正解”はありません。
タイパが重視される現代でも、手をつなぐだけで胸が高鳴り、相手のたった一言に心が揺れる——そんなスローな恋愛があってもいいのです。
周囲の価値観に流されず、ゆっくりと恋愛を育むこと。小さなときめきこそが、人生をふくよかにしてくれるのだと、このドラマはそっと教えてくれているように思います。
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