プレゼントの香水が招いた悲劇
――恋愛って本当に女性を変えますよね。
「はい、心からそう思いました。毎日がワクワク……というか、ヒリヒリ、ドキドキ……でも幸せです。毎日のように来るLINEも嬉しかった。『愛してる』『早く抱きたい』と送られるたび、ときめいていました。
で、ある日、彼が『はい、プレゼント』と高級ブランドの香水をくれたんです。それまでの私は香水をつけない派で、どちらかというと、天然のアロマオイルや自然派のボディーローションのみだったのですが……せっかく彼からのプレゼントだからとつけるようにしました。彼の好みの香りなんだと思うと、まとっているだけで、彼に包まれているような幸せな気持ちになりました」
――しかし、ある日、恐れていたことが起こったという。
「彼が来られない日に、女友達が遊びに来てくれたんですね。で、天気もいいし、屋上に行こうということになったんです。マンションの屋上はベンチがあり、芝生や花壇もあるとても居心地のいいスペースなんです。
晴れた日には、小さな子供を連れて散歩するファミリーやヨガマットを敷いてヨガを楽しむ女性もいる。ベンチはたくさんありますから、読書をしたり、おしゃべりを楽しむ人もいる。
……で、偶然にも彼を見つけちゃったんです。しかも、奥さんと息子さんも一緒の……。
私、『ああ、ついに恐れていた日が来た』と思いました。
屋上はA棟とB棟の共同スペースでしたから……でも、よりによって家族団らんの場に遭遇するなんて……ショックでしたね。
十歳と聞いていた息子さんは、彼に似て聡明な感じで、奥さんはスラッとしたスタイルで、スポーティなショートボブが似合う美人でした。三人とも細身のデニム姿で、まるでCMに出てくる幸せな家族そのもの……」
天国から地獄に
――つらい現実ですね。彼はH美さんに気づきましたか?
「はい、女友達が花壇の写真を撮りたいと言うので、そちらに向かったら、彼もたまたま同じ方向に歩いてきて、奥さんの顔も真正面からばっちり見ちゃいました。彼とも目が合いましたが、そ知らぬふりです。
……ただ、ショックだったのは、奥さんがつけていた香水が、私にプレゼントしてくれたものと全く同じ香りだったということです」
――そんな……
「私も言葉を失いました。
あれは、私のために選んでくれたものではなく、不倫がバレないように奥さんと同じものにした『浮気バレ防止アイテム』だったんです。すれ違った奥さんから、自分と同じ香りが漂ってきた時のショックと言ったら……とても言葉では言い表せません。
天国から一気に地獄に突き落とされました。
屋上に続く階段の中ほどに化粧室があるのですが、女友達に、『ちょっとトイレに行ってくるから』と急いで個室に駆け込んで、一人で泣きました」
――つらかったですね
「はい、不倫にはある程度の覚悟は必要だと思っていましたが、家族と鉢合わせるわ、贈り物の香水が実は奥さんと同じものだったわで、動揺して……。あの甘いセックスや優しい言葉は何だったんだろうって」
続きは次回。
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