間一髪! 姉のノックが響き渡る
ーー続けてください。
「互いに絶頂を迎え、ティッシュで後始末をしたのち、私たちは衣服を身に着けました。姉が来る可能性があるので、私は慌てて窓を開けて空気を入れ替え、ベッドの乱れを直し、デスク前のパソコンを立ち上げてーー。
ドアがノックされたのは、その直後です。私は彼と目で合図した後、ドアを開けました。もちろん、施錠を解く音は響かないよう細心の注意を払ってーー。
『あら、あなた、ここにいたの』
そう言うなり、姉が部屋に足を踏み入れました。『パソコンの具合が悪くて、お義兄さんにみてもらってたの。おかげで解決したわ。お義兄さん、ありがとうございます』。
私は何事もなかったように笑顔で一礼したんです。
姉は疑う様子もなく『あらそう、よかったわね』と言い、Rさんに視線を向けると、『あなた、レッスンが終わったからそろそろ出かける支度をしましょう』と階段を降りて行きました。間一髪で、姉にバレなかったのは本当に奇跡でした。あと数分ずれていたらと思うとヒヤヒヤでーー(笑)」
同じ屋根の下で二重生活
ーー本当にそうですね。続けてください。
「その日からRさんは、姉との夫婦生活、私との愛人……いえ、恋人生活の二重生活になりました。同じ屋根の下で……。
ゲスと言われるかもしれませんが、二重生活を持ちかけたのは私です。姉との時間を優先し、『隙間時間でいいから、私を恋人として愛して欲しい』と。
彼とのセックスする場所は、私の部屋以外にもともと姉の部屋だった3階の個室です。今は物置になっていますが、窓からの見晴らしがいいんです。春になったら桜も咲き、夏は新緑、秋は紅葉……そして、レッスン中のピアノの音が背徳心を煽ってきて……。
ナイショですが、銀座のクラブの太客Wさん(40歳会社経営/既婚)とも2カ月に1度ほど抱かれています」
誰に何と言われようと、これが私の生き方
ーーえ、本当ですか?
「はい、ひとりに決めてしまうと、それがダメになった時、かなり落ち込むじゃないですか……だから学習しました。言葉は悪いけれど、保険みたいなものでしょうか(笑)。
もっとも、彼らにも気持ちいい思いをしてもらおうと、必死にフェラやエッチのテクニックを磨いているので、WIN-WINという感じかしら。
この先、どうなるかは分かりません。
一つ屋根の下の不倫がバレるかもしれないし、姉に子供ができればRさんからフラれるかもしれない。もしくは、私に新しい結婚相手が見つかるかもしれない。
だけど、一度しかない人生を後悔のないよう、存分に謳歌したいんです。
姉への復讐心は、いつの間にか消え去りました。ただ、小さい頃からつらい思いをした分、誰に何と言われようと、自分の信念を貫きたい。呆れられてもバカにされても、これが私の生き方です」
H子さんはにっこり笑った。
◇ ◇ ◇
確かに、子供時代に味わうことができなかった幸せを、自らの手で掴みたいという願望は大きいだろう。あまりにもリスキーな恋をしているH子さんだが、筆者はその覚悟に大きなエールを送りたい。
(了)
エロコク 新着一覧