今回は、私自身も保育園の現場で担任を受け持った経験者として、保育士さんが仕事を辞めたくなってしまう理由についてお話します。
保育士さんが辞める理由はお金だけじゃない
保育士さんはお給料が安いから続かないんだ、と思ってる方は少なくないようですが、保育士の給料は年々少しずつですが上がっています。
区によっては家賃補助の上限が10万円まで出るなど、全然お金が稼げない仕事といったイメージからは抜け出しつつあります。
にもかかわらず、保育士さんは減っていく一方……どうしてでしょうか?
・いじめも少なくない人間関係
保育園は女性が多い職場のせいか、どうしてもいじめが起こりやすいです。
私もいじめられた経験がありますが、いじめる側の保育士さんはプライベートがあまりうまくいっていなかったり、日々の重労働に疲れている方が多いです。自分の思い通りにいかないと八つ当たりするように、保育の仕方にあれこれとケチをつけてきます。
世代によっては保育方針がズレていたりするので、そういった時に話し合いができないこともあり、自分がいる意味はないのでは?と考え、殻に閉じこもってしまう保育士さんも多いんです。
・出世=自分がしたいことではない
保育園の世界には出世がありません。もちろん厳密にはあるのですが、出世した先は室長や園長など、現場をまとめる役割りや経理管理などになります。
保育士さんを目指した人は子供が好きだから“愛情をたくさん与えたい”と思っている人たちです。それなのに、出世をすると現場を離れることになり、子供とのかかわりが少なくなってしまいます。
自分の思い描く保育園を作りたい、という気持ちから園長を希望する方もいますが、大半の保育士さんは、子供たちとかかわり続けたいのです。結果、出世を拒む人も少なくありません。
出世を考えなければ同じ園に長くいる理由もないので、園を辞めることへの抵抗が少なくなりやすいのは確かです。
・残業が多く仕事を家に持ち帰ることも
保育業界はまだまだアナログの世界です。近ごろは少しずつデジタル化が進んできてはいますが、いまだに国に提出する書類が手書きであったり、修正液の使用が禁止なので、書き直して修正液を使った後に書類をコピーし直したりと、地味な作業が続きます。
日誌も毎日書かなくてはならないほか、週案や月案、個人表と書き物が多く、月の制作物やイベントの準備などがあります。子供たちがお昼寝できなかった日は、園で仕事を終わらせることができず、家に持ち帰らざるを得なくなります。
そして翌朝も早い。こういったことが続くと「書類に追われるために保育士になったわけではない……」と途方にくれてしまう人も多いのです。
・体を壊して働けなくなる保育士さん
保育士さんは命を預かる仕事なので常に神経を張っています。しかし、相手は体力が無限にあるのでは?と思えてくるほど元気いっぱいの子供たち。
何人もの子供たちと本気で向き合うためには、かなりの気力と体力が要求されます。そこで無理をしてしまった結果、腰痛などを起こして仕事を辞めざるを得なくなる保育士さんが多いのが現状です。
・とにかく異性との出会いがない
いつも疲れているので仕事が終わった後に遊びに行くのが辛いし、遊びに行っても朝が早すぎるため、時間が気になってしまいます。もちろん職場での出会いなどほとんどなく、結果、気がつけば出会いがないまま一年が過ぎ……なんてことも普通にあります。
仕事は出会いを求めに行く場所ではないことはわかっていますが、やはり異性との出会いが皆無に等しいのは、結婚前の女性にとって悩みのタネであるのも事実です。
大好きな保育士の仕事を好きでいられるように…
保育士さんは子供が大好きだからこそ、子供たちにしてあげたいことがたくさんあります。しかし現実は環境が整わないため満足のいく保育ができず、ジレンマを抱えてしまいます。
また、疲れ果てため息をもらす姿を子供に見られるのが辛く、好きだからこそこんな自分を見せたくないと、園を離れてしまう保育士さんもいるんです。
保育士の退職は防げない問題ではない
保育士さんが辞めてしまう理由をいくつも並べてきましたが、これらは決して防ぐことができない問題ではありません。
保育士さんの頑張りをしっかり評価してあげる仕組みや、適材適所で役割りを与えることでやりがいを感じてもらったり、園内の人間関係は良好かなど、気を配るだけでも全然違います。
理不尽な上下関係は起きていないか? 仕事に追われて助けを求めるスタッフもおらず孤独になっていないか? 運営側がケアしてあげることで、少なくとも一斉退職などといった事態は防げるのではないでしょうか。
保護者の方も気が気ではないと思いますが、子供が嫌いになった、という理由で辞める保育士さんはほとんどいません。そこは信じてあげてくださいね。
子供のためだけではなく、保育士さんが働きやすい職場環境も、皆さんで考えてみてもらいたいです。
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