サッカーW杯狂騒曲に見る NHK紅白が若者に媚びてもムダな訳

こじらぶ ライター
更新日:2022-12-17 06:00
投稿日:2022-12-17 06:00

「#紅白見ない」が早々にトレンド入り

 先月16日、「第73回NHK紅白歌合戦」(以下、紅白)の出演者が発表された。今年のテーマは「LOVE & PEACE-みんなでシェア!-」で、「紅白をテレビやラジオで楽しみながらスマホやPCでシェアして欲しい」との思いが込められているようだ。

 しかし、初出場組を中心に、一部の若い世代以外、「誰?」と思ってしまうような、露骨な「若年層狙い」の人選に「#紅白見ない」が先陣を切ってスマホやPCでシェアされ、Twitterトレンド入り。

NHK会長「知ってる人が少ないのですみません」

 またネット上では「ジャニーズだらけ」「聞いたことない韓流多すぎる」といった声もあがった。

 NHKの前田晃伸会長(77)ですら、応援する歌手が出演するかについて「知ってる人が少ないのですみません」とぶっちゃける始末だ。

 昨年の紅白の平均世帯視聴率は、34.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区。以下同)。一昨年の40.3%から6.0ポイントも数字を落とした。特に個人視聴率において若い世代の下落幅が顕著だった。

 視聴率を安定して取るにはテレビを主に見ている中高年向けにすればいいが、各メディアで事あるごとに報じられるように、未来の受信料徴収を考えれば何としても若者に振り向いて欲しいのだろう。

 中高年が「誰?」と思うような出場者でも、選出基準のひとつである「今年の活躍」はしっかり満たしているアーティストがほとんどだ。

興味のないものを“排除”する若者の視聴習慣

 NHK紅白公式サイトによると、CDの売り上げなどと並んでインターネットでのダウンロード・ストリーミング・ミュージックビデオ再生回数・SNS等についての調査で本当の流行を測った結果、中高年にとっての「誰?」は若者のパワーで「ストリーミング再生1億回」、「MV再生1億回」といった数値を残している。

 ただ、どんなに若者に媚びてみても、紅白を見てもらえるとは限らない。今の若者は長時間、「興味が無いものと有るものが入り乱れたもの」を見る習慣がない。テレビがなくてもYouTubeやTikTok等で興味があるものだけ、好きな時間に気分が向いた分だけ見ているからだ。

 若者にとっては、たとえ好きなアーティストが出場するとしても、曲順から事前に推測される出演時刻や、リアルタイム検索で今誰が出演しているかを調べつつ、そのアーティストが映っている間だけ見れば良い。これでは視聴率や受信料徴収の促進に繋がるとは考えにくい。

「誰?」に加えて「なぜ?」

 さらにNHKにとって露骨な若年層狙いが悪手だったのは、もともと確保できていたはずの中高年の支持をごっそり削いでしまったことだ。

 お年寄りに親しまれた演歌組は激減。工藤静香(52)や篠原涼子(49)の意表を突く選出で“中高年のことも忘れてませんよ”のポーズを見せたところで、今度は「誰?」でなく「なぜ?」と、人選の意味不明さから返って不満を募らせることになった。

「笑ってはいけない」放送見送りは追い風にならない?

 若年層偏重と相まって、「#紅白見ない」ばかりか、「#NHK解体」「#NHKは不要」とネット上で揶揄されるようになった。

 また今年も民放裏番組の対抗馬だった「笑ってはいけない」シリーズ(日本テレビ系)は放送されないため、一見、NHKにとっては視聴率を取り戻すチャンスのように見えるが、そもそもどの世代も、今年は大晦日にテレビを見ないことも十分考えられる。

 もはや、「テレビ離れ」は若者だけの現象ではなくなっていることが、先月下旬から今月上旬にかけて起きたサッカーワールドカップ狂想曲で如実に見られたのだ。

“ドーハの歓喜”でも物足りない視聴率

 視聴率や国民の熱狂度で、紅白と同等以上のコンテンツである「サッカーFIFAワールドカップ」の日本代表戦。だが今年のカタール大会のテレビ平均世帯視聴率は過去と比較して、熱狂度や日本の大金星をあげる躍進ぶりを鑑みるとやや物足りないものになった。

 グループリーグのドイツ戦(NHK総合、22時キックオフ、勝ち)が35.3%、コスタリカ戦(テレビ朝日系、19時、負け)が42.9%、スペイン戦(フジテレビ系、4時、勝ち)が22.4%、決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦(フジ系、0時、負け)が34.6%。勝敗や試合の重要度に関わらず、見やすい時間帯順に視聴率が高い結果となったが、過去大会の感覚だとあと10%ほど足りないと感じる。

本田圭佑解説の「ABEMA」に持っていか

 それがどこに行ったかと言えば、インターネット動画サービス「ABEMA」だ。こちらはドイツ戦放送日の視聴数が1000万、コスタリカ戦放送日が1400万、スペイン戦放送日が1700万、クロアチア戦放送日が2300万超と、テレビと違って試合の時間帯に関わらず「開局史上最高数値」を右肩上がりで更新し続けた。

 同じ試合なのにテレビとは異なる推移を見せた要因は複数あるだろうが、全試合無料生中継に踏み切ったことに加え、大きいのは「ABEMA FIFA ワールドカップ 2022 プロジェクト」のゼネラルマネージャーである元日本代表・本田圭佑(36)が現地解説を担当していたからではないだろうか。

 初戦・ドイツ戦の試合途中から、熱さ、面白さ、的確さが話題となり、「本田の解説」がTwitterトレンド入り。評判が評判を呼び、その後の試合からワールドカップを見始めた人々だけでなく、もとはテレビで視聴していた層も、本田の解説が聞ける「ABEMA」に「テレビで見るより断然面白い!」と移動したようだ。

テレビの存在意義は

 視聴者の年齢層などは公表されていないが、関連ツイートは、若年層だけでなく中高年からも多く投稿されていた。画質はテレビより劣るし、タイムラグも数十秒ある。それでも日本人の多くの層が新たに気づいてしまった。

 本当に面白いものを観るために、楽しい時間を過ごすために、テレビに固執する理由などどこにもないことを。

こじらぶ
記事一覧
ライター
STARTO ENTERTAINMENT、秋元康系女性アイドル、ローカル、地下アイドル等数々の現場を経験。Xでもご意見を募集しております。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


元カレと再会したら心は動く?『ラブ トランジット』3、女性メンバー3人が感じた“過去の恋”と向き合う勇気
 10月16日(木)よりスタートした『ラブ トランジット』シーズン3(Prime Video)。本作は、元カップル5組1...
中村未来 2025-10-29 12:00 エンタメ
【芸能クイズ】全員元モデルだが? “女性向けファッション誌”出身の俳優は誰でしょう
 テレビやネットでふと耳にした、あのひとこと。記憶の片隅に残る発言の背景には、ちょっとした物語があるのかも?  ネ...
「ばけばけ」なんともチャーミングなヘブン。“ラストサムライ”おじじ様との関係性はどう変わる?
 ついにアメリカから英語教師レフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)が松江に上陸した。大興奮の観衆の中、知事の江藤(佐野史郎...
桧山珠美 2025-10-28 17:53 エンタメ
『ラブ トランジット』3、男性参加者が“復縁ナシ派→アリ派”に変化した理由って?「両想いってマジで奇跡」
 10月16日(木)よりスタートした『ラブ トランジット』シーズン3(Prime Video)。本作は、元カップル5組1...
中村未来 2025-10-28 12:00 エンタメ
復縁に正解はある?『ラブ トランジット』3、男性参加者を直撃! 元カノと再会した際のリアルな本音
 10月16日(木)より待望の『ラブ トランジット』シーズン3( Prime Video)の配信がついにスタートしました...
中村未来 2025-10-27 12:00 エンタメ
『大脱出3』が示した“地上波じゃ絶対無理”なお笑いの可能性。攻めたバラエティの生存戦略とは
『水曜日のダウンタウン』などを手掛ける藤井健太郎氏が企画・演出・プロデューサーを務めた『大脱出3』がDMMの総合動画配信...
平野紫耀らNumber_iに疑問噴出…「アイドル性」は必要なのか? 3人の“本気”がファンに問う覚悟
 平野紫耀(28)、神宮寺勇太(27)、岸優太(30)からなる3人組ボーイズグループ・Number_i の全国ツアー「N...
こじらぶ 2025-10-28 14:02 エンタメ
「ばけばけ」髙石あかり、恐るべし。“微妙な表情”の変化に気付いた? 「半分弱」に寺尾聡の元妻を思い出す…
 下宿では教員試験を終えた錦織(吉沢亮)の慰労会が行われ、トキ(髙石あかり)はお祝いの出し物を披露することになり、大好き...
桧山珠美 2025-10-25 11:08 エンタメ
『ラブ トランジット』3が修羅場で面白すぎ!平和主義男子と爆発女子が激突。イケてる男女って展開早いの?【1話~3話レビュー】
 ついに『ラブ トランジット』シーズン3(Prime Video)がスタートしました! ラブ トランジット(以下ラブトラ...
中村未来 2025-11-05 11:10 エンタメ
「ばけばけ」傳ロスからの“国宝”級イケメンが登場! 吉沢亮、怒りを孕んだ表情の美しいこと…
 出奔した銀二郎(寛一郎)を探し、東京を訪れたトキ(髙石あかり)。銀二郎が住む下宿でトキは、松江随一の秀才・錦織友一(吉...
桧山珠美 2025-10-21 18:50 エンタメ
横浜流星、『国宝』はここから? “圧巻の演技”を見せた出演作4選。吉沢亮とは2012年に共演、肉体美の披露も
 公開からすでに4カ月以上が経過しながらも、いまだ連日超満員の映画『国宝』。このままの勢いで、歴代邦画実写史上1位の興行...
zash 2025-10-21 11:45 エンタメ
「ばけばけ」銀次郎、逃げて~! あさイチ・博多大吉の言葉に同意してしまった
 傳(堤真一)の死から数日、機織り工場は閉鎖が決まり、トキ(髙石あかり)は仕事を失ってしまう。借金取り・森山(岩谷健司)...
桧山珠美 2025-10-20 17:40 エンタメ
菊川怜「今も台風の真っただ中にいる」3人の子育てと仕事の両立という選択。忙しくても“譲れないこと”とは
 1998年にモデル活動からスタートし、現在ではシングルマザーとして、6歳、4歳、3歳のお子さんを育てている菊川怜さん(...
望月ふみ 2025-10-19 11:45 エンタメ
「ばけばけ」“闇落ち”三之丞(板垣李光人)が切ない…トキ(髙石あかり)の言葉は優しいウソなのか
 トキ(髙石あかり)の献身もあり、傳(堤真一)の体調に回復の兆しが。トキは代理社長の三之丞(板垣李光人)に回復の報告をす...
桧山珠美 2025-10-18 11:38 エンタメ
「ばけばけ」トキ(髙石あかり)と“もうひとつの親子”の姿にうるっ…。三之丞(板垣李光人)の行動が意味深?
 トキ(髙石あかり)が傳(堤真一)の看病をはじめて3週間。傳の具合は回復しない。工場では傳が戻るまでに経営状況を回復させ...
桧山珠美 2025-10-16 16:58 エンタメ
「ばけばけ」岡部たかしの“芸達者ぶり”に感心…。そして北川景子の夫・DAIGOの登場に期待したいわけ
 病に倒れた雨清水傳(堤真一)。トキ(髙石あかり)は日頃、お世話を焼いてくれる傳への恩返しのため、看病を買って出る。日中...
桧山珠美 2025-10-15 16:30 エンタメ