初めて共にSMプレイを楽しめるパートナー
「性欲は、欲の中で最も強烈で凶暴であり、人を誤らせ、悲劇を導く、不幸の源である」といったのは、帝政ロシアの小説家トルストイですが、そういう意味で難儀する可能性の高い性癖のひとつが、“被虐嗜好”ではないでしょうか。
性癖と性格は別モノ――性癖がマゾであっても、日常生活で虐げられたいわけではない――ことを理解しているパートナーに巡り合えれば万々歳ですが、中には「マゾの女性は、いつ何時も支配下にある」と考える男性も存在するからです。
もちろん、女性側が「生活のすべてを捧げたい」という嗜好がある場合もありますが、必ずしもそうでないといけないわけではないし、どちらが優れているというわけでもない。
今回、登場いただくむつみさん(仮名 42歳、千葉在住、自営業)も“M”という性癖の持ち主。いったいどのようなスタンスで性癖と渡り合っているのか、お話を聞かせていただきました。
「そもそも、物心ついたくらいから、いじられてないと落ち着かない子供でして。存在意義をそこに見出していたかのかもしれません。なんか、ほっとしちゃうんです。友達とかから、いじられている状態に」(むつみさん)
M女性の願望を叶えるには、責め手となる相手が必要です。性癖に合致したパートナー探しは、M女性が突きあたる“難儀”のひとつでもありますが、むつみさんの場合、初めて共にSMプレイを楽しめるパートナーが出来たのは、30代の後半になってからのことでした。
「それまでの恋人ともしてはいたんですが、ソフトSM志向で。精神的にいじるのはしてくれたけど、私のエロ嗜好には、ついていけないと断言されいて。でも、性癖の合うパートナーに出会っても出会わなくても、私のなかにSMがあるからいいやって思っていました。それこそ、オナニーで満足ができてたんです。ノーパンや、アナルにプラグを入れた状態で外を出歩いたり、身体にどれだけお湯が入るか試したくて、セルフお湯浣腸をしたり。股縄オナニーも好きでしたね。ユザワヤでレーヨンロープ買ってぐいぐいと引っ張ると、すごくテンションがあがるんです」(むつみさん)
新しい世界の扉は「M女性専門のSM風俗店」
パートナーが出来たことで、さらにむつみさんの性的冒険は、さらに深部へと進んでいきます。
「初めの頃は野外露出から始まって。下着を着けずに、街を歩かされたりとか。鞭や蝋燭の痛みを、快楽に変えるようなこともしました。苦痛からアドレナリンが生成されるんですよ。あとはアナルですね。アナリングスからアナルセックスに移行して、さらにアナル使った快楽責めまで」(むつみさん)
ところが、そのSMパートナーとは、事情があって別離することに。そして次に開いた新しい世界の扉は、『M女性専門のSM風俗店』を利用することでした。
「本格的な緊縛は初めて体験したんだけど、すごくよかったです。『痛くない!動けない!美しい!』って。ドレスを着させていただいた気分。これまでSMで得てきたものとは、別のものが縄の世界にはありました。SM的な快感ではないけど、また別の感動体験。自分のSMは快楽の最たるだったから、こんな側面があったのかって。それに、フィフティーフィフティーのSMというものがこれなのか、とも。私に本格的にSMを指南して下さったパートナーさんとはフィフティーフィフティーのつもりでしたが、やはり私はへりくだっていましたね。へりくだるのも、酔えて気持ちいいんですけど……」(むつみさん)
性癖は世界を切り開くための原動力にもなる
自身の快感を追求すべく、次々と、果敢に知らない世界に飛び込むむつみさん。そんな彼女が次に試してみたいのは一本鞭。
「バラ鞭は試したことがあります。感覚が麻痺するまでバシバシされて。アナルは深い快楽で、ぐちゃぐちゃに溶ける感覚、打撃は、意識が飛ぶ感じで、アナルが永遠なら打撃は一瞬の快感なんですけど、バラ鞭に関していうと、アナルと打撃の中間の快感でした。それで、一本鞭には、また別の快感があるのでは……と」(むつみさん)
性癖は世界を切り開くための原動力にもなる。「私のなかにSMがあったおかげで、色んな世界に行けたとおもってます」という、むつみさんの言葉は力強さに溢れています。
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