ただの浪費家に見える
「最初はね、僕みたいないい加減な性格の男は、直子みたいに神経質な女性と一緒になったほうが、バランスはよさそうだとも考えたんですよ。
だけどね、直子を見ているとただの浪費家ですよ。根拠のない高価な健康食品を買い漁って、それで体が元気になってきているならいいけれど、僕から見ると特に何も変わった様子はないんです。
なら、将来本当に大きな病気になったときの備えとして、今はお金を使わずに貯められるだけ貯めておくほうが安心じゃないですか?
直子が稼いだ金を直子が何に使おうが、僕が意見を言える立場ではありませんが、あまりにも浪費が激しいので、パートナーとしてどうなんだろうと絶句して見ているところなんですよ……」
深刻な面持ちでこう話すタケオさんは、直子さんとの将来についてどう結論を出すべきか迷っていると言います。
もう少し若ければ別れていた
「僕がもう少し若ければ、もう直子とは別れを選んでいた気がします。でも、僕ももうこの年齢でしょう? 50代も半ばになろうって男が、今の恋人と別れてまた新しいパートナーを探すとなると至難の業ですよ。
遊びの相手なら、お金をちらつかせれば若い子がいくらでも見つかりますけどね、今の僕はそういう付き合いを求めるわけではないから、真剣に老後を一緒に楽しめる相手がいいなと思うんですよ。
55歳までには生涯の伴侶を見つけたいのに
楽観的に暮らしてきた僕も、あと何年かすれば還暦ですからねぇ……。
55歳までには生涯のパートナーを真剣に見つけたい。だからこそ、直子に対して満足していないのに別れることもできず、我ながら情けないなと思いながらも時間ばかりが過ぎています。
しかしこんな付き合いは、虚しいだけですよ。やっぱりこの年齢で生涯のパートナーを見つけようっていうのが、そもそも夢物語なんですかね?」
◇ ◇ ◇
恋人同士であれ、夫婦であれ、100%同じ価値観を有する男女は稀です。ましてや交際前の男女となれば、なおのことです。少しのすれ違いが、大きな溝に発展することも少なくないのが異性間における現実でしょう。
まさにこれこそが、男女関係における醍醐味にもなれば致命傷にもなる“冷酷と激情”のはざまなのかもしれません。
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