ただ落涙!去りゆくひとに“花道”、万太郎の手には亡き長女・園子の絵

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2023-09-06 14:11
投稿日:2023-09-06 14:10

NHK朝ドラ「らんまん」~第23週「ヤマモモ」#113

 大学に辞表を提出した野宮(亀田佳明)、東京を去る前に長屋を訪れ、生まれたばかりの千鶴を含む槙野家の肖像画を描く。

 その際、野宮から石版印刷に代わる新しい印刷法の話を聞き、寿恵子(浜辺美波)は図鑑作りの夢が近づいたと喜ぶ。

 万太郎(神木隆之介)の夢を叶えるため、商いを始めたいと語る寿恵子。みえ(宮澤エマ)に勧められた地、渋谷へと向かう。

【本日のツボ】

亀田佳明(野宮朔太郎役)

 ※※以下、ネタバレあります※※

「らんまん」もあと1カ月を残すのみ。牛久師匠に続き、野宮が去りました。

 世紀の大発見! から一転、世界の学者たちから疑いの目を向けられ、国内の学者たちも、野宮が元画工ということを理由に、発見を認めない、と。

 結果、大学を去ることを決意した野宮。波多野に恨みごとひとつ言うどころか、「君が見たいと願うものを俺も見て見たかった。それだけだったんだよ。……ここまで連れてきてくれてありがとう」と感謝を述べ、「時々は目を休めるんだよ、これ以上目を悪くしてはいけないから」と波多野をいたわります。なんと出来たお方でしょう。

 万太郎にも「君は知らないかもしれないけど、俺が奮起できたのは君のおかげなんですよ」。

 その間、流れる回想シーンに涙がこぼれました。

 そして、東京を離れる前に、と万太郎の家を訪れる野宮。「噂の狸御殿、俺も一度遊びに来て見たかったんですよ」と。

 生まれたばかりの千鶴を入れて槙野一家の肖像画を描く野宮。万太郎の手には幼くして亡くなった園子が描いた絵が。これにはグッときました。

 去りゆくひとたちに、ちゃんと見せ場をもってくる、作者の愛を感じます。

文学座所属“舞台畑”の実力派

 野宮演じる亀田佳明(44)。文学座の俳優さんで、滑舌がよく、台詞が聞き取りやすいのも頷けます。7月下旬、「第31回読売演劇大賞」の中間選考結果が発表されたのですが、男優賞にノミネートされています。この春、主演した「ブレイキング・ザ・コード」のアラン・チューリング役が高く評価されました。

「やさしい猫」(NHK)の最終回にも東京出入国在留管理局の職員役で登場。ワンポイントでしたが、「あっ、野宮さんだ」とわかりました。

 こんなふうに実力のある俳優さんがどんどんドラマに出て盛り上げてくれると嬉しいですね。

【おまけのツボ】

ハチ公!?

 寿恵子が渋谷に偵察。とんでもない田舎に描かれていましたが、明治30年ごろはそうだったのでしょう。

 そういえば、唱歌「春の小川」の歌詞も、のどかな風景が描かれていますが、あの舞台も渋谷だったというのを聞いたことがあります。

 寿恵子が人力車で降り立った渋谷に、なぜか可愛い柴犬(?)が一匹。渋谷の犬といえば、あの有名なハチ公か!? と思いましたが、ハチ公は秋田犬でしたね。

 しかも、以前、「水曜日のダウンタウン」(TBS系)の「本物のハチ公を見たことがある人 まだギリこの世にいる説」でハチ公が亡くなったのは1935年(昭和10年)ということでしたので、年代的に合いません。

 それにしても綺麗な毛並みの柴犬(?)でした。ここはせっかくなので、実は“秋田犬でハチ公のひいおじいちゃんあたり説”を唱えたいと思います。

桧山珠美
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TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

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