日中戦争の影響じわり、スズ子が「カカシみたいなワテ」になった

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2023-11-27 15:10
投稿日:2023-11-27 15:10

NHK朝ドラ「ブギウギ」~第9週「カカシみたいなワテ」#41

 スズ子(趣里)と梅吉(柳葉敏郎)が東京で一緒に暮らし始めて1年、梅吉は何をするわけでもなく酒を飲むだけの毎日を過ごしていた。

 一方、梅丸楽劇団は変わらざるを得なくなっていた。日中戦争が始まって3年、ぜいたくを禁止する法律が施行され、楽団は警察の指導のもと、派手な演目や演出、演奏を全て取りやめることとなる。

 スズ子も歌い方が軽薄だと言われ、三尺四方の枠の中から動かずに歌うようにと指示されてしまう。

【本日のツボ】

金属製ひん曲がり尺八(サキソフォン)

 ※※以下、ネタバレあります※※

 スズ子と梅吉、そのまま下宿で暮らしていたとは驚きでした。梅丸楽劇団のスターなのに、賃金、お安いのでしょうか。

 レコードを出していれば、その歌唱印税なども入ってくるのでは、などと思ったり……。しっかり者のスズ子、貯め込んでいるのかもしれません(笑)。

 それよりも、梅吉がすっかりダメおとうちゃんになっていて(前からでしたが)、「おちょやん」のテルヲが頭をよぎりました。

 朝ドラ史上最低のクズ父、などと言われていたテルヲ、あまりにもクズ過ぎて、演じていたトータス松本の実の母親が「本当はあんな子じゃないんです」と言い訳して回ったというエピソードもあるほど、朝ドラのダメージは大きいので、梅吉も早々に立ち直って欲しいものです。

 そういえば、2匹の亀がいましたが、あれは六郎が可愛がっていた亀でしょうか、それとも別の亀でしょうか。

 はな湯を去った時、梅吉の胸に箱のようなものを抱えていたので、あれはてっきりツヤの骨壺かと思っていたのですが、実は亀だったのでしょうか。気になります。

 そして、本日のツボは、楽器を敵性語ではなく和名で呼べ、と警察から指導されるくだりです。

 ドラムは「太鼓」、トランペットは「ラッパ」、ピアノは「洋琴」、バイオリンは「提琴」、このあたりまではわかりますが、サキソフォンが「金属製ひん曲がり尺八」、コントラバスを「妖怪的四弦」って、スズ子じゃないですが、いったい「誰が考えたんや」です。

「金属製ひん曲がり尺八」が頭から離れません。

 おっと。笑っている場合ではありませんでした。スズ子も「おい、歌い手。お前の歌い方は軽薄だ。舞台の上で動き回って。今後は動かずに歌うように」と警察から注意を受けます。

「三尺四方からはみ出さずに歌うように」。舞台にも白いテープで囲いが作られ、そこからハミ出さずになんとか歌っていたスズ子ですが、我慢しきれなくなり……。

 今週のタイトル「カカシみたいなワテ」はそういう意味だったのですね。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


“お騒がせ”青井実アナが心機一転、なにわ男子の道枝駿佑と似てるって⁉
 世の中の人がNHKに持つイメージといいますと、「真面目」「お堅い」「地味」といったところでしょうか。  そんな中...
逃げ恥の百合ちゃん役が“頭のいい女は頭の悪いふりをするしかない”発言
 穂高(小林薫)に出くわしたことで女子部への出願が母・はる(石田ゆり子)にばれてしまった寅子(伊藤沙莉)。  娘に...
桧山珠美 2024-04-05 15:30 エンタメ
「虎に翼」語りは尾野真千子 NHKアナと俳優のナレーションの違いは?
 寅子(伊藤沙莉)がお見合いに苦戦する中、親友の花江(森田望智)は寅子の兄・直道(上川周作)との結婚準備を順調に進めてい...
桧山珠美 2024-04-05 15:14 エンタメ
「虎に翼」シン・朝ドラの予感!わずか1話、たった15分で心つかんだ描写
 昭和6年・東京。女学校に通う猪爪寅子(伊藤沙莉)は父・直言(岡部たかし)、母・はる(石田ゆり子)から次々とお見合いを勧...
桧山珠美 2024-04-01 22:28 エンタメ
僥倖!世界に挑む赤西仁ほど「サムライマック」のCM向きな俳優はいない
 マクドナルドのCMにイケメンあり!  そんな声をちらほら耳にするようになりました。たとえば4月2日から全国放送さ...
平野らTOBEがドーム公演大成功の一方、暗雲立ち込める旧ジャニの逆転は
 3月14日から17日にかけて、滝沢秀明氏創設のTOBE所属アーティストによる東京ドーム公演「to HEROes ~TO...
こじらぶ 2024-03-30 06:00 エンタメ
ブギウギ最終回、水を差すようでスンマセン! 残念すぎる4つの演出と描写
 スズ子(趣里)のさよならコンサートが始まる。客席には懐かしい多くの面々がかけつけている。茨田りつ子(菊地凛子)、愛子(...
桧山珠美 2024-03-30 11:41 エンタメ
スズ子引退会見、“天敵の文屋”鮫島の「シャッポを脱ぐ」演出を読む
 歌手・福来スズ子(趣里)の引退会見の当日。スズ子は結局、羽鳥善一(草彅剛)とは話ができないまま会見に臨むことになってし...
桧山珠美 2024-03-27 14:30 エンタメ
超鈍感力! 羽鳥の絶縁宣言を屁とも思わないスズ子とタケシは似た者同士
 歌手引退――。スズ子(趣里)はその決断を、愛子(このか)や大野(木野花)に伝えた。  羽鳥善一(草彅剛)に絶縁す...
桧山珠美 2024-03-26 15:40 エンタメ
「GTOリバイバル」注目の新人イケメンは?松嶋菜々子は本当に出るのか
 反町隆史主演「GTO」が26年ぶりに帰ってきます。反町演じる元ヤン教師・鬼塚英吉がさまざまな問題を解決する学園モノで、...
ドヤ顔のアユミとヘイヘイブギー歌唱シーン温存の理由がわかる回だった
 昭和31年、大みそか。第7回オールスター男女歌合戦当日。スズ子(趣里)は、楽しみに会場へと向かう。スズ子が楽屋で支度を...
桧山珠美 2024-03-22 14:30 エンタメ
最終回秒読み…スズ子はブレずにお人よし、NHKと沼袋勉の手腕いかに!?
 愛子(このか)は、翌日の体育の時間に足の早い転校生と競争することになっていた。しかし、勝てる見込みがなく、愛子は学校を...
桧山珠美 2024-03-21 16:07 エンタメ
和田勉が転生したら中村倫也に!? 強烈インパクトで霞んだ礼子娘の初登場
 東京ブギウギのヒットから9年、ブギブームも下火になってきつつある中、スズ子(趣里)や羽鳥善一(草彅剛)のブギは古いとい...
桧山珠美 2024-03-18 14:30 エンタメ
「光る君へ」主人公バージン喪失!大石静氏が描く平安エロ&バイオレンス
 NHK大河ドラマ「光る君へ」は、平安中期の貴族社会を舞台に、吉高由里子演じる主人公のまひろ(紫式部)の生涯を描くもので...
沢尻エリカ不死鳥の如く女優復帰!大衆は真似できぬ人生転落リアルショー
 2月25日、沢尻エリカの女優復帰作となった主演舞台『欲望という名の電車』が千秋楽を迎えました。  「『残念プロフ...
堺屋大地 2024-03-16 06:00 エンタメ
NHK大阪が誘拐未遂事件をぶち込んだのなぁぜなぁぜ? かつ丼コント?
 誘拐犯が捕まってから、愛子(このか)は3日間も学校を休んでいた。スズ子(趣里)は、学校に行くようにと言うが、愛子は友達...
桧山珠美 2024-03-15 14:30 エンタメ