公園ランチの約束は叶うのか? 花岡の“しょんぼり言動”が不穏すぎる

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2024-06-06 17:00
投稿日:2024-06-06 17:00

NHK朝ドラ「虎に翼」~第10週「女の知恵は鼻の先?」#49

 ホーナー(ブレイク・クロフォード)から子供たちにとチョコレートをもらった寅子(伊藤沙莉)は、公園で花岡(岩田剛典)に再会する。

 花岡は東京地裁に戻っており、判事として主に食糧管理法違反の事件を担当しているという。

 寅子は自分の弁当を思わず隠すが、花岡は堂々としろと微笑む。その夜、猪爪家に久藤(沢村一樹)とホーナーがやってくる。

再会した花岡の言動に一抹の不安

 ※※以下、ネタバレあります※※

 花岡と再会した寅子、懐かしのベンチで仲良く並んでランチタイム。花岡がやつれているのが気になります。東京地裁で判事として、おもに食糧管理法違反の事案を担当していると話します。その弁当箱には麦めしのおにぎりと薄く半月に切られたサツマイモが1つ。

 寅子は闇市で買った白米を詰めた弁当のふたを閉じます。それを見た花岡、「別に猪爪を告発したりしないよ。生きるためには必要なことだ。君は堂々としろよ」と。「でも法を犯しているのは事実ですから」と寅子。

「変わらないね、君は」と花岡に言われて、「そんなふうに言うの、花岡さんだけよ。みんな私が変わったっていう。大人になったとか謙虚だとか」。「謙虚?」と驚く花岡、その勢いで咳き込んだのも気になります。

「何も変わらないつもりでいたけど、やっぱり前とは違うみたい」。そう語る寅子に、「前も今も全部、君だよ」と花岡。「どうなりたいかは自分で選ぶしかない。本当の自分を忘れないうちに」。

 その言葉は、寅子に向かって言っているようでもあり、自分に言い聞かせているようにも見えたのは、遠い目をしていたからです。

「また、こうしてバッタリ会ったら、一緒にお弁当を食べましょう」という寅子の言葉に、「ああ、そうしよう」と。

 こういう約束は得てして破られるもので、二度とその機会が訪れなくなるのではと、不安になります。

 花岡が桂場(松山ケンイチ)の元へ行き、「人としての正しさと司法としての正しさがここまで解離していくとは思いもしませんでした。でもこれが俺たちの仕事ですよね」と。そして深く頭を下げて去って行きました。不穏です。

 その昔、信念を貫いて闇市で買ったものは食べず、栄養失調で亡くなった判事がいましたが、まさか花岡が…と心配でなりません。

寅子の「はて?」にピクッとした桂場

 そして、ラスト。

「無理に法曹の世界にいることはない。これ以上苦しむことはないんだよ。家族を養うために仕方なくこの職に就いたんだね。苦しくて辞めたこの道にわざわざ戻ってくる覚悟は相当のものだったろう。君をこの道に引きずり込み、不幸にしてしまったのはこの私だ」

 と穂高教授(小林薫)に言われ、「待ってください」と寅子。「えっ、不幸?」「私が」「はて?」。

 寅子の「はて?」が戻ってきた時、桂場がピクっとしたのを見逃しません。待ちに待った「はて?」が戻って喜んだのは私たちだけでなく、桂場も同じだったようです。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


元モー娘。加護亜依様の“セクシー女優匂わせ”が冗談に聞こえないワケ
 モーニング娘。黄金期の人気メンバーだったものの、現在はお騒がせタレント化してしまっている加護亜依。昨年も週刊誌やネット...
堺屋大地 2024-01-20 11:16 エンタメ
シン・スズ子誕生!タナケンに「面白いね」と言わしめたヒロインの魅力
 喜劇「舞台よ! 踊れ!」の幕が上がる。タナケン(生瀬勝久)に稽古ですべてを受け止めると言われたとおり、スズ子(趣里)は...
桧山珠美 2024-01-19 14:45 エンタメ
タナケン(生瀬勝久)の決め言葉、「どうだろうね」に込められた真意
 スズ子(趣里)は、不安を抱えたまま喜劇王・タナケン(生瀬勝久)との舞台稽古を続けていた。  なんとかしようと、ス...
桧山珠美 2024-01-22 15:16 エンタメ
ブギウギ新章、タナケン役生瀬勝久の“顔芸”と「3枚の張り紙」が見もの
 小夜(富田望生)が付き人をやめると言って姿を消してから3カ月、愛助(水上恒司)は大学を卒業し、村山興業で働き始める。 ...
桧山珠美 2024-01-17 15:49 エンタメ
5年ぶり「おっさんずラブ」にコレジャナイ感?それでもいいと思うところ
 あの「おっさんずラブ」が5年ぶりに帰ってきました。2018年4月期にスタートした同作は、ピュア過ぎるおっさんたちの恋愛...
小夜(富田望生)の食い意地は国境を越えた!愛か、餌付けされただけか
 復学した愛助(水上恒司)は、スズ子の公演に触発され、いっそう勉学に励んでいた。  そして、公演が再開して以来、ス...
桧山珠美 2024-01-12 16:05 エンタメ
任侠ドラマ出演の高岡蒼佑様…小栗旬&芸能界批判に“かわいいチワワ”か!
 アウトローな役柄などで人気を博していた元俳優の高岡蒼佑。役者引退宣言をしていたものの、今年2月にリリースされる任侠ドラ...
堺屋大地 2024-01-11 06:00 エンタメ
朝ドラ名物の闇市、小夜の食い意地はタダモノじゃねえ!
 戦争が終わって3カ月、世の中の混乱は続き、スズ子(趣里)たちは未だ公演ができずにいた。  愛助(水上恒司)の病状...
桧山珠美 2024-01-09 14:50 エンタメ
歯に衣着せぬ小夜のキャラを生かしたブギウギ流「玉音放送」シーン
 終戦の日。スズ子(趣里)たちは巡業先の富山で玉音放送を聞く。りつ子(菊地凛子)は慰問先の鹿児島で敗戦を知る。  ...
桧山珠美 2024-01-08 15:50 エンタメ
原作は4コマ漫画! 名作“ぎぼむす”のイケメントリオを味わい尽くそう
 新年あけましておめでとうございます。  例年であれば、大晦日は「ジャニーズカウントダウンライブ」で年越しするので...
特攻隊の前で「別れのブルース」、過去の“淡谷のり子物語”と異なる描き方
 1945年、日本の戦況はますます悪くなっていた。富山に慰問に来ているスズ子(趣里)は、女中の静枝(曽我廼家いろは)の話...
桧山珠美 2024-01-05 14:00 エンタメ
制作費の都合?「夜来香ラプソディ」音楽会シーンなしは残念すぎる
 上海の羽鳥善一(草彅剛)は、音楽会の準備を進めていた。羽鳥は、黎錦光(浩歌)が作曲した「夜来香」にブギを取り入れた音楽...
桧山珠美 2024-01-04 17:50 エンタメ
【2023年人気記事】マッチ様は逃げ上手と無責任のプロだった
【「残念プロフェッショナル」の流儀】  2023年も「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大き...
堺屋大地 2024-01-02 11:44 エンタメ
辻希美&杉浦太陽はニベアのCM…仲良しラブラブ芸能人夫婦はお金を生む
 元モーニング娘。のなかで1番の勝ち組は、やっぱり辻ちゃん(辻希美)でしょう。  先日も元モー娘。の中澤裕子、保田...
スズ子と愛助の無償の愛、平和ボケの今とは違って生きるも愛するも命がけ
 東京に戻ったスズ子(趣里)は、空襲で一面ががれきになっている惨状を目の当たりにする。  スズ子が三鷹の家に戻ると...
桧山珠美 2023-12-28 14:10 エンタメ