私の「仕事」は夫に内緒。専業主婦が下世話なゴシップにのめり込むワケ

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2024-10-12 06:00
投稿日:2024-10-12 06:00

夫に秘密で続けている「仕事」とは

「ママ、今日は一歩も外出てないの?」

「うん。暑かったし、夕飯はコストコで買った鶏肉やお野菜もあるし買い物はいいかなって…」

 夜11時。夫の大輔は、息子たちが眠りについた頃にようやく帰ってきた。

 ポストに溜まっていた郵便物の束をテーブルの上に投げるように置き、リビングに入るなりソファに一直線。どっしりと身長180cmの巨体を沈ませた。

「それはいいんだけど、よく家でずっとじっとしていられるなと思って」

「いろいろやることあるのよ。あっという間に一日が終わっちゃう」

「そうか。俺が忙しい分、ちゃんと家を守ってくれているのは有難いけど…。まぁ、外で働きたいならいつでも相談してくれよ。反対はしないから」

 柔軟で寛容な姿勢を見せながらも、ところどころに漏れる男性本位の言動は、リベラル気取りの業界人あるあるだ。

 私は乾いた笑みを浮かべながら、ダイニングテーブルに彼の大好物である唐揚げとポテトサラダを並べた。

「ありがとう。でもね、出版社に勤める友達からもらったデータ入力の仕事が、けっこうなお小遣いになるの」

「そっか、ママの名前で封書が来ていたのはそれか」

 その言葉に私はヒヤリとしながら、彼の置いた手紙の束を探った。言う通り、出版社から私宛の封書が届いていた。

テレビ業界の話に耳を傾ける

「いただきまーす」

 準備ができたところで大輔はすぐ席に着き、夕食をモリモリ食べ始めた。深夜、しかも脂っこい食べ物にもかかわらず、疲れなのか元ラガーマンだからなのか、アラフォーに足を踏み入れても衰え知らずの食欲だ。

「今日さ、M-1王者のあの芸人がさ、うちのADを怒鳴りつけててさぁ…」

「M-1王者って、あの?」

「うん。段取り悪かったのはウチらの責任だけど、天狗になっちゃってるんだろうな」

「ふうん…」

 出版社からの封書は、「仕事」の支払い明細だった。それを確認しながら、大輔の仕事の愚痴に適当な相槌を打つ。私は冷えた缶ビールを彼の手元に置いた。

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


4割が「事故物件に住み続ける」と回答。それぞれの“ワケあり”事情とリアルな体験談
 夏といえば怪談。その中でも近年、特に目立って増えているのが「事故物件」をテーマにした話だ。  松原タニシの実話怪...
猫の「まなざし」に恋をした…“にゃんたま”には何が詰まっているの?
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「お母さん、暇ー!」攻撃にヘトヘト…。夏休み、私は“宿題やる気スイッチ”をこれで押してます
 夏休みシーズン到来! お子さんの夏休みの過ごし方で悩む方も多いのでは。ことあるごとに「お母さん、暇ー」の訴えに、「暇な...
教師になってほしい有名人、第2位は天海祐希! 第1位は野球選手がランクイン。GTOやヤンクミは時代遅れ?
 ジブラルタ生命保険株式会社は、小学校・中学校・高等学校・特別支援学校で働く教員2000名を対象に、アンケート「教員の意...
クッソ頑固な父親の「ひとりごと」が増えた謎。これは老化か、特性か?
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まっ...
「嫌だと言いたいの?」上司からの戦慄パワハラLINE6選。休日、早朝でもお構いなし…勘弁して~
 最近はプライベートだけでなく、仕事でもLINEを活用する会社が増えてきましたよね! しかし、今、ひそかに問題になってい...
アラフィフ独女、恋がしたくて何が悪い?「痛々しい」の声に振り回されないで
 アラフィフ独女ライターの私だって、恋をしたい。そんな思いがふと心に浮かんだのは、担当編集さんのおすすめで、Netfli...
これ言ってない? 自己肯定感が低い人、9つの口癖。「私なんか」「どうせ」はもう禁句にしよう
 あなたはありのままの自分を受け入れ、自分の存在を認めたり価値を感じたりできていますか? 自己肯定感が低いと、生きづらさ...
選ばれし“イケにゃん”2匹がご降臨!ゆくたまωくるたまω、2つの鐘にシャッターが止まらない♡
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
ヒィッ! 職場で「敵にしてはいけない人」6つの特徴。シゴデキ人間に嫌われたら終わる…
 職場にはいろいろなタイプの人間が集まっているので、人間関係のトラブルはつきもの。そんななか「この人だけは絶対に敵に回し...
【女偏の難読地名クイズ】「姶良」って何て読む?(難易度★★★☆☆)
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「校閲婦人と学ぶ!意外と知らない女ことば」では、女性...
実家で「1泊2食で1万円」はひどすぎん? 帰省して後悔した6つの切ない体験談
「盆休みに実家に帰省して楽しい時間を過ごそう」と考えていても、現実は“ガッカリ”が待っているかもしれません。今回は、実家...
「大阪芸大にピアノ科はない」ことが話題だが…“音楽はお金にならない”は本当か? 芸大卒の意外な稼ぎ口
 参議院選挙で注目を集める参政党の「さや」候補が、街頭演説で「大阪芸大でピアノ科の募集をしたら受験生ゼロ」と発言し物議を...
ま、眩しすぎる…“実家が太い人”6つの特徴「ミラコスタで結婚式なの」って言ってみたい!
「実家が太い」とは、親の経済的に余裕があり、金銭的にも精神的にもサポートを受けられることを意味する言葉。あなたの周りにも...
大変さをわかってよ~! 子持ち女性がモヤッとしたLINE集。無神経な発言しちゃってない?
 女性の交友関係は、結婚や出産を機に大きく変わっていくものです。特に大きな変化となるのが、出産。お互いに話題や興味関心の...
27歳女優が“猫”ブームに思うこと。保護猫活動を通して感じた「命」に対する決意
 配信ドラマ『全裸監督』やロングランヒットを記録した主演映画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わ...