ラブレターズのKOC優勝が下積み中の「オジサン芸人」に与えたもの。夢を追い続けるのはいばらの道か?

帽子田 芸人、ライター
更新日:2024-10-30 06:00
投稿日:2024-10-30 06:00

KOC2024王者・ラブレターズの功績

 最もコントがおもしろい芸人を決める「キングオブコント2024」(TBS系)が10月12日に開催され、ラブレターズが17代目王者に輝いた。1本目から点差が開かない接戦を制しての見事な優勝。華々しくトロフィーを手にしたラブレターズを、現役のお笑い芸人はどうみるか。

 別名義で活動する現役芸人であり、かつては年間100本以上のライブに出演した経験もあるという帽子田(仮名)は以下のように考察する。

【関連記事】 松本人志はいまや「憧れの芸人」ではない。若手芸人が話す3つの理由

夢みたいな展開で優勝を掴み取った

 ラブレターズの優勝は、芸人にとって、まさに鮮烈だった。ネタの好き嫌いはあるので、ラブレターズの優勝に納得していない視聴者の人もいるかもしれない。最近のお笑い賞レースは点差が開かない傾向にあるが、今回は1点差を争うほど拮抗していたので、本当に審査が難しい回だったのだろう。

 だから、ラブレターズは一般的に見て「他コンビを面白さで圧倒して勝利!」という印象ではないだろうが、僕たち売れない芸人にとっては「鮮烈な」優勝だった。

 コットンやロングコートダディ、ニッポンの社長などの人気者を抑えて、ラブレターズの15年を詰め込んだような「ラブレターズらしい」ネタで王座を掴み取った。下積みを長く積んだ売れていない芸人にとっては、目が眩んでしまうほど羨ましい光景だった。

「ラブレターズらしい」とはどういうことか。あくまで僕の評価だが、「派手な演技と息もつかせない展開で、想像がつかないボケを畳みかけてくる」という点が魅力だと思う。

 ただ展開が早すぎたり、ボケが突飛すぎたりして、お笑いを見慣れてない人や正統派なネタが好きな人には受け入れられないことも多い。今でこそキングオブコント王者になった彼らだが、挑戦的なネタをやりすぎて舞台で信じられないくらい滑っているのを何度も見たこともある。

 それなのに大衆に寄せすぎることなく、自分たちが一番やりたいネタをあの大舞台でぶつけて優勝するなんて、売れない芸人が書く「なろう系小説」みたいなストーリーだ。

ラブレターズに感化されたオジサン芸人たち

 そんな夢みたいな光景を見せつけられたことで、地下芸人界隈で悲劇が起こっている。ラブレターズはメディア露出はほぼないが、ライブや地下劇場で腕を磨き、芸歴15年目にして優勝。もうじき40歳になる。

 昨年のサルゴリラに続いて下積みの長いコンビの優勝に、僕をはじめとしたオジサン芸人たちが「俺たちももう少し頑張ったら、賞レースで優勝して日の目を見ることができるのでは!?」と夢見てしまったのだ。

 この現象は2021年に「M-1グランプリ」(テレビ朝日系)で錦鯉が優勝したときも巻き起こった。最年長で優勝を勝ち取った錦鯉に感化されて、下積みの長い漫才師たちが露骨にボルテージを上げ出した。

帽子田
記事一覧
芸人、ライター
別名義では芸人として活動。一時期は年100本以上のライブに出演、ライブ主催の経験もアリ。一応現役の芸人ではあるが、ただのお笑い、バラエティ番組ファンでもあります。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


東京コミコン2023は大盛況 ひときわ異彩を放った“大衆演劇”
 千葉・幕張メッセにて、12月8日(金)~10日(日)に開催されたポップカルチャーの祭典「東京コミックコンベンション20...
熊田曜子のSNSが放つ鋼のメンタル ハレンチ不倫疑惑もよき母アピール
 プロデューサーとの不倫疑惑と元夫とのドロ沼離婚裁判を経て、離婚成立後はSNSでたびたびセクシーな姿を披露している熊田曜...
堺屋大地 2023-12-20 06:00 エンタメ
恋はつらいものよ…愛助への想いが募るスズ子に麻里(市川実和子)の名言
 スズ子(趣里)と愛助(水上恒司)の仲はすぐに広まり、羽鳥善一(草彅剛)や麻里(市川実和子)にもうわさについて追求される...
桧山珠美 2023-12-22 14:23 エンタメ
スズ子と愛助の恋路を妨害! メッセンジャー黒田のメッセンジャーぶり
 愛助(水上恒司)と坂口(黒田有)の話を聞いたスズ子(趣里)は、耐えきれずに部屋に押し入る。  ここで話をつけよう...
桧山珠美 2023-12-18 14:45 エンタメ
渡辺翔太が国宝級イケメンランキング初V!Snow Manはめめだけじゃない
 恒例の「ViVi国宝級イケメンランキング 2023年下半期」が発表されました。  NOW部門1位は、八木勇征(2...
スズ子と愛助「年の差恋愛」に障害…おでん屋台店主・伝蔵の台詞に注目
 愛助(水上恒司)から「恋人になってください」と言われ、スズ子(趣里)は「ちょっと考えさせてほしい」と答える。それ以来、...
桧山珠美 2023-12-16 06:00 エンタメ
手越祐也ポジティブのカラクリ、新曲は微妙も「アイドル」カバーはバズる
 ジャニーズ時代はNEWSに所属し、バラエティー番組でも活躍した手越祐也。退所後は“辞めジャニ”として主戦場をYouTu...
堺屋大地 2023-12-15 06:00 エンタメ
押しかけ暴走気味の愛助(水上恒司)とスズ子の恋もいよいよ
 神戸への巡業の帰り、スズ子(趣里)は久しぶりにはな湯を訪ねる。懐かしい常連客の面々に迎えられ、昔のように庭で話をする。...
桧山珠美 2023-12-13 14:25 エンタメ
水上恒司君臨!デビュー作「中学聖日記」から5年経っても年上好き♡
 昭和18年、アメリカとの戦争に終わりが見えない中、「福来スズ子とその楽団」は地方巡業を重ねていた。  スズ子(趣...
桧山珠美 2023-12-11 15:50 エンタメ
松下洸平は“最弱の目力”が魅力!ネトラレ役が似合う、時代が生んだスター
 松下洸平(36)の主成分は優しさです。現在、出演しているドラマ「いちばんすきな花」(フジテレビ系)を見ていてしみじみそ...
茨田りつ子がまさかの前座!? 「大空の弟」を歌いこなす趣里の表現力
 羽鳥善一(草彅剛)が企画した合同コンサートは、ブルースの女王・茨田りつ子(菊地凛子)とスウィングの女王・福来スズ子(趣...
桧山珠美 2023-12-07 14:30 エンタメ
「大空の弟」は聞き物、りつ子“むっつり顔”のチラシにNHKの芸の細かさ
 弟が戦死してスズ子(趣里)が落ち込んでいるのではないかと心配した羽鳥善一(草彅剛)は、食事でもしようとスズ子を自宅に誘...
桧山珠美 2023-12-06 15:20 エンタメ
「一、二、三、四、五」揃った楽団員名、余計に六郎の不在が際立つ
 役場の職員が梅吉(柳葉敏郎)の元を訪れて届けた報せには、六郎(黒崎煌代)が戦死したと記載されていた。  しばらく...
桧山珠美 2023-12-05 14:00 エンタメ
松嶋菜々子の誇らしげな語りに納得…イケオジ反町隆史を保持するお手柄感
「男の美しさは、肌に出る。」――資生堂「SHISEIDO MEN」のCMに出演する松嶋菜々子&反町隆史夫妻が話題です。 ...
櫻坂46異例の韓国人気賞1位!紅白復活&史上最多動員、大逆転なぜ起きた
 櫻坂46が11月25日および26日、千葉・ZOZOマリンスタジアムで「3rd YEAR ANNIVERSARY LIV...
こじらぶ 2023-12-02 06:00 エンタメ
歌わない福来スズ子はただの人…からの脱却!らしさ炸裂のパクった楽団名
 楽団が解散して数週間、スズ子(趣里)は何をするでもなく日がな一日を過ごしていた。そんな時、スズ子は大阪に戻ってこないか...
桧山珠美 2023-12-01 14:00 エンタメ