中卒の夫と愛し合って結婚。47歳で未亡人となり結婚相談所へ…【後妻業の女・筧千佐子#2】

神田つばき 女と性 専門ライター
更新日:2024-11-23 06:00
投稿日:2024-11-23 06:00

後妻業の女・筧千佐子死刑囚#2(高齢男性4人への殺人、強盗殺人未遂罪で死刑判決)

 一滴の血を見ることもなく、遺産目当てに10人もの男性の命を奪って、疑われもしなかった後妻業の女・筧千佐子。逮捕時、千佐子はすでに67歳。被害者たちは、世話好きで明るい千佐子の笑顔に完全にだまされた。【前回はこちら

   ☆   ☆   ☆

 筧千佐子は1946年に北九州の小倉に生まれた。実はもらい子である。そんな生育環境が彼女の人格に暗い影を与えたのかと思ったが、現実にはその逆だった。

 千佐子の兄も同じくもらい子だ。千佐子の両親は子どもを持ちたかったのに病気でかなわず、養子をもらって大切に育てた。青春時代の千佐子に暗い影はない。

18歳、最初の挫折「女に学歴はいらない」

 千佐子も「両親のことはほんとうに尊敬している」と語っているし、親と血が繋がっていないことも、成人するまで知らなかった。

 愛情深い両親に育てられ、進学校に進み、国立九州大学の受験をすすめられた。将来の夢は学校教師、昭和30年代の地方都市では指折りの才女だった千佐子だが、18歳で最初の挫折を味わう。

「妹が兄より高学歴になるのはおかしい」と、父親が受験に反対したのだ。教師になるために勉強し、周囲からも「国立大に行くんでしょ?」と尊敬を集めていた千佐子にとっては泣くほどつらかった。

 しかし、これは千佐子の家だけが無理解だったのではなく、昭和の日本では、女性は男性より学歴が低いほうがよいというのが常識だった。

 4年制卒の女性は就職も結婚も不利という時代、千佐子のような秀才も昭和の呪縛から逃れることはできなかった。

23歳、第2の挫折「みじめな結婚生活」

 千佐子は、進学をあきらめたからといってグレるような後ろ向きな少女ではなかった。大手銀行に就職し、恋愛をし、結婚を決めた。

 まだお見合い結婚が主流の時代、恋愛結婚も4年制進学と同じように新しい女の生き方の1つだった。平凡ではない道を選び、努力する――それが千佐子のスピリットだ。

 相手は大阪の貝塚市に住む6歳上の男性で、農協の旅行で九州に来て千佐子と知り合った。当時の日本では「女の結婚はクリスマスケーキ」と言われていた。24歳(24日)までは売れるが、25歳(25日)を過ぎたら誰も見向きもしないという意味だ。

 千佐子はまだ23歳だったが就職して5年目、結婚して寿退社したいと思いはじめる年頃だった。両家の親の反対を押し切って、千佐子は貝塚へ発った。

 恋に燃え、大阪の新天地で人生の新たな幕を開けたいと思った千佐子。しかし、九州の近代化のシンボルである八幡製鉄所のある小倉にくらべて、夫の里は閉鎖的な小さな集落だった。

 それなのに、夫の親族は「九州出身者は田舎者」と決めつけ、千佐子を見下した。子どもにも恵まれたが、中卒の夫は親族の会社で安月給で働き、肩身が狭かった。

 愛し合って結婚し、故郷を捨てたのに、こんなはずではなかった。「いちばん好きだったのは最初の夫」「でも人生最大の失敗は最初の結婚」と、逮捕後の千佐子は後悔している。

神田つばき
記事一覧
女と性 専門ライター
離婚と子宮ガンをきっかけに“目がさめて”女性に生まれたことの愉しみを取り戻すべく、緊縛写真のモデルとライターに。私小説「ゲスママ」、イベント「東京女子エロ画祭」「親であること、毒になること」などを企画。最近は女犯罪者や緊縛表現者に関するZINEの制作・販売を開始。Xnoteblog

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


面倒くさい、お金もない!行きたくない結婚式の“カドが立たない”断り方
 愛し合っている二人の晴れ舞台、結婚式。仲の良い友人や同僚、親戚などの結婚式は出席して直接お祝いしたいと思う女性がほとん...
すいかばかのレシピ~'23年<2>月夜の畑ですいかの苗を愛でる
 すいかの生産量は全国ワーストの山梨県で、こだわりのすいかを作る男がいる。ひとは彼のことを「すいかばか」と呼ぶ――。
自宅で収穫したジューンベリーでジャム作り 2023.6.20(火)
 昨年の夏、新居に引っ越した際に家のシンボルツリーとして植えたジューンベリーの木が実をつけました。赤い小さな可愛い実はそ...
キャベツ枕に洗体しない育児…うっわぁー自然派ママのドン引きエピ5選
 健康志向が高まる中、世間では自然派のママが増えているようです。マクロビ、ヴィーガンにはじまり、病気になっても薬を一切使...
我が家のカレーが食べたくなった瞬間 2023.6.19(月)
 旅先で急に我が家のカレーが食べたくなった瞬間。  郷愁をそそる、紅白ののぼり旗。  そして、そそられる、ち...
いずれやって来る去勢手術、尊い“たまたま”を今のうちに激写
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
仏では「不倫された側」が責められる?2023.6.18(日)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
癒しの漫画/第51回「恋の落とし穴」
 ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、突然「コクハク」に登場! 生きものたち、その生きものたちをこよな...
男性との性交もうダメ?子宮と卵巣を失ったがんサバイバーの限界突破記
 42歳未婚で突然、ステージ1B1期の子宮頸がん宣告。悪性度が高いとされる「子宮頸部腺がん」の疑いで、5年前に「広汎子宮...
2023-06-17 06:00 ライフスタイル
楽しい街で見つけた張り紙の文字にドキリ 2023.6.16(金)
 あぁ楽しい街だ。ビリケンさんも笑ってる。  だけど、さすがに実弾撃つ客はいないよね……?  そうとも言い切...
「投資額ゼロ円」でも効果絶大!仕事運UPのきっかけを作る5つの心がけ
 仕事で成功している人は、仕事のスキルだけでなく、目に見えない風水や運勢なども大切にしている場合が多いですよね。今回は、...
お豆腐メンタルでいいんです!独在住で学んだ天気とメンタルの深~い関係
 みなさんはメンタル不調が起きやすいシーズンや条件を、自分で把握できているでしょうか?  もしもイマイチよくわかってい...
40代女友達の誕生日どうする? デパコス以外に喜ばれる贈り物&過ごし方
 何歳になっても、誕生日をお祝いされるのは嬉しいものですよね。でも、自分が友達の誕生日祝いをしようとした時、「何すると友...
肉汁とチーズが♡ ガストで背徳モーニング!2023.6.15(木)
 一日の計は“朝ごはん”にあり――。今回は、ファミリーレストラン「ガスト」のモーニングに行ってきました。
お呼びじゃない? “たまたま”の胸キュンシーンにひょっこり
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
“イガイガ”の利用価値は∞!元気と金運を呼び込む「紅花(ベニバナ)」
 猫店長「さぶ」率いる我が愛すべき花屋が商売をさせていただいている地域にも、雨と仲良しにならなければならない季節になりま...