モブキャラ自認の23歳が「パパ活」に落ちるまで。50万円のヴァンクリに「興味ない」は言い訳?

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2024-12-14 06:00
投稿日:2024-12-14 06:00

50万円のピアスに「興味がない」のは言い訳?

 毎晩、晴乃が帰宅の途につくのは、23時近くだ。サロンでも一番の新人なので、営業終了後、施術のレッスンを先輩たちから受けて片づけ等を終えるといつもそのくらいになってしまう。

 サロンから自転車で10分の場所に、晴乃の住むアパートはある。

 築40年、3階建ての2階部分にある6畳一間。家賃は7万円。周辺のどの駅から遠いこともあり、このエリアでは破格の家賃だ。

「ただいまー…」

 部屋の扉を開けるなり、誰もいない暗闇に呼びかけた。田舎の大家族育ちである晴乃の癖のようなものだ。当然ながら何も返ってこない。

 収納がないこの部屋にあるのは、米どころの故郷から送られてきた米と炊飯器、冷蔵庫くらいだ。テレビない。パソコンも当然ない。スマホがあればある程度、事足りる。

「あのピアス、50万円近くするんだ」

 ネットサーフィンをしながら、晴乃はふりかけごはんをかき込む。まひなが身に着けていたハイブランドの検索画像が今晩のおかずだ。食欲より好奇心が満たされる。

 ――よかった、私はこういうのに興味がない人間で。

 年頃の女性が多い職場ゆえ、そういった知識は自然と入ってきてしまうが、晴乃はそれらの価値を見出せない。

 同じお金を払うなら、生活費の足しにしたいし、もっとお金をもらえるなら、アロマや施術技術の資格を取るための学校にも通いたいと思う。ゆくゆくは自分のお店も出したい。

 だからこそ、贅沢なアクセサリーやバックは、今の自分には必要ないものなのだ。

 もしかしたら、それは言い訳なのかもしれないのだけれど…。

ついにチャンスが巡ってきた!

『明日、1時間早く出勤できますか? スキルテストを行います』

 トップ施術師でありオーナーの大西友梨佳からLINEが届いた。晴乃は背筋を伸ばし、すぐに了解とお礼の言葉を返す。

 地元の短大と専門学校を卒業後、店に入って半年。やっとこの時が来たと身を引き締めた。

 ――しかも、友梨佳先生が直々に見てくれるなんて!

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


自己顕示欲バンザイ! スナックママが教える「自分らしく生きる」ヒント
 みなさん、SNSとかで目立つ人は好きですか? 私はついこの間まで、正直めちゃくちゃ苦手でした。  でも先日、スナ...
東京のごちゃごちゃに疲れる…貸切コンパクトボートで“泡飲み”東京湾クルージングが当たりだった
 都会とは、長年いると何をしていいのか分からなくなる場所である。おいしいご飯もお酒も、どの街にいても味わえる。新しいスポ...
イイ男が大集合♡ 素敵“たまたま”がいっぱいで目の焦点が合わない~!
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
面倒な“かまってLINE”への返信うざ。寂しがり屋のド定番「寝てないアピ」は華麗にスルーがよろし
 いつも話題の中心にいたくて、寂しがりやな「かまってちゃん」。時々ならいいですが、LINEメッセージでもかまってアピール...
諦めないで!猫と共に送る安全な植物生活。花屋が実践する「3つの心得と6つの対策」
 植物は我々の心豊かな生活を送る癒しですが、残念ながら猫にとって有害なものはたくさんあります。  種類によっては中毒症...
うまっ…!期待薄で「メキシカンセット」買ったら当たりだよ。お店の味を再現できた【イオンで発見】
 9月に起こった令和の米騒動。スーパーのお米コーナーからお米が消えました。最近は近所のスーパーでも見かけるようになってひ...
LINEならではのビジネスマナー&言葉遣い。返信タイミングはメールよりシビアになりがちで…
 ビジネスシーンにおいても、LINEでのやりとりは日常茶飯事。  ただ、メールでのビジネスマナーは完璧でも、LIN...
共働き世帯は専業主婦世帯の約3倍! 女性が選ぶべき未来のための選択とは
 セックスレスやセルフプレジャー、夫婦の在り方をテーマにブログやコラムを執筆している豆木メイです。
目は合わせないけど…“たまたま”をチラ見せしてくれた美少年の太郎君にキュン
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
踏切の音
 黄昏る街。  踏切の音が懐かしいのは、一体なぜ?
「紅娘」って読める? ぜっっっったい読めないと思うやつです
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
悪口誤爆→既読スルーの沈黙が怖っ! 顔面蒼白…冷や汗が止まらない義母vs嫁のLINE3選
 世の中で一番LINE誤爆を避けたい相手といえば、「義母」ですよね…。夫と結婚している限り付き合っていかなければならない...
2024-09-22 06:00 ライフスタイル
【45歳からの歯科矯正】本当の苦行は1年半はめていたワイヤー矯正を外したあとだった
 昨年4月に歯科矯正(表側のワイヤー矯正)を始めて、1年半。ついにワイヤーとブラケットを外せることに。想定内のスケジュー...
独身にとって旦那のグチも育児話も「圧」。リスケ不要だからー!気遣いが逆にうざいLINE3選
 人への気遣いは、ときに迷惑になることもあります。これらのLINEがよい事例。相手にとってありがた迷惑な気遣いにならない...
モテは“たまたま”の大きさ次第? 経験豊富なイケニャンを激写
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
発達障害、情緒障害、認知症…花をお求めになるお客様から教わること
 猫店長「さぶ」率いる我がお花屋にはいろいろなお客様がやってまいります。  学校帰りに「ただいま~」なんて...