「おじたちから評判いいよ」で得た自分の価値。パパ活女子の末路は惨め一直線なの?

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2024-12-14 06:00
投稿日:2024-12-14 06:00

【恵比寿の女・山本 晴乃23歳 #3】

 恵比寿のエステサロンで働いている晴乃は、同い年のお客様である港区女子のまひなから誘われ、ギャラ飲みに参加する。気乗りはしなかったが、同席していた社長からポンと自分では買えない最新型のスマホをプレゼントされて…。【前回はこちら】【初回はこちら

 ◇  ◇  ◇

 まひなは途中でいつの間にか消えていた。

 一方、晴乃は宴のノリにのみこまれ、ラストまで華として滞在した。ギャラはタクシー代を含んだ3万円+α。男たちから素直に受け取ってそのまま帰路についた。

 家賃7万円の小さな部屋に帰るなり、晴乃は借りた服のまま倒れ込む。ニトリで買ったパイプベッドのきしむ音が響く。

 いつの間にか朝を迎えていた。

 終盤のテキーラショットが残る気怠さがある。ただ、晴れやかさで身体が満ちていた。

 夢じゃない。傍らには新しいiPhoneがあるのだ。

 貧乏人の悪い癖、値段を検索すると、それは20万円近くだった。たった一晩で、それが手に入った事実と、冷静に向き合う。ひび割れたスマホからは、まひなから『おじたちから評判いいよ。またよろしくー』とLINEが入っていた。

『ぜひ、お願いします』――晴乃は土下座のスタンプを素直な気持ちで返した。

自分にはそれだけの「価値」がある

 確かに、気疲れする一夜だった。相手にねっとりと触れられた。イラッとすることもあった。もうひとりの自分との戦いだった。

 だがそのストレスこそ、自分に与えられたものの価値なのだろう。客商売と同じだ。お互いの、需要と供給のバランスを満たしただけなのだ。

 1時間4万円のエステに価値を見出す人がいるように、若い女と過ごす時間に同等の価値を見出す男がいる。その価値が自分にあるとされたありがたい気持ちもあった。

 晴乃は、割り切ることにした。多少の迷いをはらみながら。

 幸いなことにサロンで厄介客の接客をした経験や、年配の多い地域で育ったことが功を奏した。

 何回かギャラ飲みをこなすと、次第に慣れてくるものだ。

 3カ月ほどで、それなりの立ち回りができるようになっていた。ギャラ飲みから繋がり、個人的なお誘いも来るようになった。

「稼げる時間はあっという間だよ」

「大人のカンケイは、絶対ナシならいいですけど」

「うんうん、大丈夫だって。約束するからさぁ」

 もったりと腰に手を回しながら、説得力のない言葉を中年男はささやく。

 新しくできたばかりという、麻布十番の鮨店のカウンター。漆黒の店内が付け焼刃のラグジュアリーを演出している。鳥肌を悟られない厚手のニットを着てきてよかったと晴乃は安堵する。

 彼は何回目かのギャラ飲みで知り合った経営者の男だ。

「でもさ、もったいないよね。稼げる時間はあっという間だよ」

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


大都会のミスマッチ
 まだまだ続く、花冷え。  下を向き、背中が縮こまりかけたその時、ああ、いかんいかん。  気を取り直し、上を...
【女偏漢字探し】「戌」の中に隠れた一文字は?(難易度★★☆☆☆)
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「校閲婦人と学ぶ!意外と知らない女ことば」では、女性...
【動物&飼い主ほっこり漫画】第94回「迷子さんはパリパリモグモグ」
【連載第94回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽのお...
怖っ!若手社員が偉い人から圧を感じたLINE3選。無意識にやらかしていませんか?
 アラサーアラフォーになると部下や後輩の割合が増えてくるもの。そんな自分より立場的に下の人たちへ無意識に“圧”をかけてい...
白髪じゃないよグレイヘア 染める・染めないより大切なこと
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(64)。多忙な現役時代を経て、56歳...
有能でも「ママ」の肩書きに埋もれる現実。“報われない世代”が後輩ママにウザがられても助言するわけ
 タワーマンションが立ち並ぶ街・東戸塚に暮らす麗菜。現在は育休中であるが、復帰後もバリバリ働く予定だ。年収2000万超え...
バリキャリ→量産型主婦への変貌に愕然「仕事も結婚も…なんて無理だよ」心配ぶった“呪い”はもうウンザリ
 タワーマンションが立ち並ぶ街・東戸塚に暮らす麗菜。現在は0歳児の長女の育休中で、第二子を妊娠中である。先々を見据えてラ...
「専業主婦は文句ばかり」戦略的バリキャリママの主張。家庭と仕事、手に入らないのは“努力不足”でしょ?
 山森麗菜はタワーマンションが林立する街に暮らしている。  と、いっても豊洲や有明などの湾岸エリアでもなく、武蔵小...
そうそう、これが欲しかった。『リンネル』付録が大容量で使い勝手も良き♡ バッグは軽いほどいいですからね
『リンネル』2025年5月号の付録は、人気アウトドアブランド「コールマンの収納ポーチ付きバッグ」です。  大容量な...
「ただで済むと思うなよ」にゾッ! 距離を置きたくなるママ友の怖い言動
 今回は、距離を置きたくなった“ママ友の怖い言動”をピックアップしました。明るいママ友だと思っていたのに裏があったり、嫌...
タイプロ候補生で話題に…“歯ブラシ1時間”は有意義か?【歯科医監修】40代女性「正しい歯磨き」の方法
 彼女の名は、えりの。女性の心を癒すためにはじめたサロン「コクハク」のオーナーで、界隈では「えりのボス」の愛称で知られ、...
「ミルキー味の胡麻どうふ」はおやつかおかずか。誤解が生んだ美味コラボ、無限の可能性に震える!
 もっちり食感と香ばしさが魅力の胡麻どうふ。何となくとっつきにくい食材だと思っていませんか? 個人的にはちょっといい和食...
40代、このままでいいの? アラフォー女性が抱える漠然とした5つの不安
 40代になって「このままでいいの?」と悩みを抱える女性は少なくない様子。すでにプレ更年期に突入している30代後半の女性...
猫島の特設ステージにようこそ! “たまたま”の華麗な見返りに惚れぼれ
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
雑草対策にもなるよ! ほっぽらかし園芸の超絶おすすめ草花は?【春植え付け編】
 猫店長「さぶ」率いる我がお花屋の仕事には、歩道や公園の脇に造成された花壇への草花納入もあります。その中には近隣も含まれ...
性悪“ルッキズム女子”嫌われる人あるある6選。見た目も大事だけど心がズキズキする…
 最近何かと話題になる「ルッキズム」。近年、美容医療が芸能人だけでなく一般の女性にとっても身近な存在になったせいなのか、...