【おむすびのツボ!】演技派・緒形直人の泣ける墓前シーン。「ポケベルが鳴らなくて」の緒形拳が重なった!

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2024-12-10 12:19
投稿日:2024-12-09 11:30

第11週「就職って何なん?」#51

 こども防災訓練の打ち上げがヘアサロンヨネダで行われ、さくら商店街や結(橋本環奈)が通う栄養専門学校、そして米田家の面々が集まり苦労をねぎらう。

 そこへ、歩(仲里依紗)の付き人だった佐々木佑馬(一ノ瀬ワタル)が突然サングラス姿で現れ、驚く一同。そんな佑馬に歩は、まだロサンゼルスにいる予定じゃなかったのかと問う。


【朝ドラおむすびのモヤっ】美佐江発言の矛盾とナベさんの心変わりはなぜ? “見せ場”スルーが残念すぎる

【本日のツボ】

付き人佑馬のルー大柴化

 ※※以下、ネタバレあります※※

 たしか、さくら商店街の集会所があったように記憶しているのですが、打ち上げはヘアサロンヨネダでやるんだーと思っていたら、佑馬がやって来ました。

 なるほど、集会所で打ち上げをやっていたら、佑馬とすれ違うわけで、ヘアサロンヨネダでやったほうが、時間と場所の節約になりますものね、と変なところで感心。

 ロス帰りの佑馬、「LosAngelsのDavidがアユさんじゃないとBusinessをしないって、聞くear haveしてくれないんっスよ」とルー大柴化。歩もそうでしたが、ロス帰りはみんなルー化するところは笑いポイントなのでしょうか。

 にしても、<聞くear have>=聞く耳を持たないって、なんだか微妙です。<藪からスティック>=藪から棒や<寝耳にウォーター>=寝耳に水、<言わぬがフラワー>=言わぬが花…というように、一瞬なんのことかと思うけど、すぐに答えがわかってジワるのがルー語の醍醐味なのに…。

 安易にルー語を真似て笑いを取ろうというのがいただけません。どうせなら、ルーさんご本人に監修してもらったほうがよかったのでは…。

ナベさんに「ポケベルが鳴らなくて」の緒形拳が重なった!

 それよりも、ナベさん(緒形直人)です。またしても結の驚異の記憶力がナベさんの心を動かしました。「うちのお父ちゃんならどこに行っても大丈夫やもん。日本一の靴職人なんやもん」という真紀ちゃん(大島美優)の言葉を伝えることで、ナベさんの心が氷解。一晩でギャル靴を作り上げるという奇跡を起こしたのです。

 真紀ちゃんの墓の前で、完成したギャル靴を歩に渡すナベさん。歩に「めっちゃいい」と言われ、「ホンマか」と嬉しそうでした。この墓前での2人のやり取りは緒形直人と仲里依紗、本来の芝居ができていてとてもいいシーンになっていました。

 そこでふと思い出したのが、1993年のドラマ「ポケベルが鳴らなくて」のことです。今でいう不倫ドラマで、娘の友達と不倫する主人公のサラリーマンを緒形拳が演じていたのです。

 正直いって、大河ドラマの主役を二度も演じるなど日本を代表する名俳優の緒形拳ともあろうお方が、なぜこんな俗なドラマに…と思ったものですが、ドラマ史に残るせつないラブストーリーに創り上げ、どんな作品でも手を抜かない役者魂を見せつけられた気がしました。

 緒形があまりにも素晴らしかったせいで、彼の家庭を壊す不倫相手役の裕木奈江は日本全国の女性たちの敵として嫌われることになったほどですから。

 そのDNAを受け継いだ緒形直人、ともすれば、アニメのような「おむすび」の中で、しっかりと役になりきり、孤高のナベさんを演じていました。

 お見事です。仮にこれからギャルちゃんたちに囲まれてニヤけたとしても許します。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


母ツヤ(水川あさみ)笑顔の最期、「ナレ死」に救われた
 大阪に戻ってきたスズ子(趣里)は病床のツヤ(水川あさみ)と再会する。ツヤの病状のことを受け止めきれないスズ子は、梅吉(...
桧山珠美 2023-11-23 16:05 エンタメ
六郎役・黒崎煌代の将来性、母ツヤとやり取りに泣けて泣けて笑える
 六郎(黒崎煌代)の出征の日がせまり、六郎は頭を丸め恥ずかしそうにしている。相変わらず体調が悪いツヤ(水川あさみ)は専門...
桧山珠美 2023-11-21 17:30 エンタメ
「下剋上球児」で“令和のキムタク”になりそうなイケメン俳優は?
 2019年のドラマ、「3年A組-今から皆さんは、人質です」(日本テレビ系)を覚えていますか?  菅田将暉が教師役...
「らんまん」のデジャヴ? ヤバ藤化するダンサーの中山、秋山逃げて~
 内緒の話があると松永(新納慎也)から呼び出されたスズ子(趣里)は、梅丸のライバルである日宝に一緒に移籍しないかと誘われ...
桧山珠美 2023-11-14 16:15 エンタメ
木下優樹菜から迸るガチヤンキー魂!前言撤回、TV再登場するタチの悪さ
木下優樹菜様(元タレント・35歳)  やっぱりユッキーナ(木下優樹菜)様のヤンキー魂には惚れ惚れしてしまいます。 ...
堺屋大地 2023-11-14 06:00 エンタメ
市川染五郎は眉毛、堅あげポテト、ラ・マンチャの男なくしては語れない
 先日、歌舞伎で「ルパン三世」をやることが報じられました。題して、新作歌舞伎「流白浪燦星(ルパン三世)」。  ルパ...
上原多香子は不倫を繰り返す“恋愛単発ドラマ”の女王!続編不要体質の業
上原多香子様(女優、美容家・40歳)  元SPEEDの上原多香子様は、あまり役者業のイメージはないと思いますが、す...
堺屋大地 2023-11-14 16:23 エンタメ
スズ子覚醒!茨田りつ子(菊地凛子)と渋谷のり子の表情がオーバラップ
 歌うコツを掴んだスズ子(趣里)は、羽鳥善一(草彅剛)とのレッスンを続け、その歌声はぐんと熱を帯びてきていた。  ...
桧山珠美 2023-11-10 14:30 エンタメ
“おぼこ娘2人”の初々しい恋バナ! つよぽん演じる羽鳥は「まさに笑う鬼」
 スズ子(趣里)と羽鳥善一(草彅剛)の厳しいレッスンは相変わらず続いている。しかし、羽鳥はスズ子の歌に相変わらず満足しな...
桧山珠美 2023-11-09 15:46 エンタメ
BLACKPINKの再契約なるか?「7年目のジンクス」結末に4つのシナリオ
 世界的なK‐POPブームの昨今。「コクハク」読者の中にも、K-POPにハマっている方も多いのではないでしょうか? ...
2023-11-09 06:00 エンタメ
「マイホームヒーロー」を嗜む!なにわ男子高橋“俳優武者修業”に高好感度
 すっかり忘れていました。佐々木蔵之介(55)の存在を。最後の独身大物俳優などと言われ、過去には、小野真弓や丸山桂里奈な...
大和玲子(蒼井優)の戒名に「礼」と「優」、位牌の細部にまで抜かりなし
 スズ子(趣里)たちは、大和礼子(蒼井優)が出産後に病院で亡くなったと知らされる。スズ子はお別れの会で、大和が梅丸少女歌...
桧山珠美 2023-11-03 14:30 エンタメ
スズ子のナレ出世、股野のナレ求婚…感動のシーンを描いて欲しかった!
 昭和12年、スズ子(趣里)が香川から戻ってきて3年。梅丸少女歌劇団は、秋山(伊原六花)のタップダンスとスズ子の歌を二本...
桧山珠美 2023-11-01 15:37 エンタメ
SMILE-UP.(旧ジャニ)俳優部の演技&将来性、飛躍の片鱗見せたの誰?
 嵐の二宮和也(40)がSMILE-UP.(旧ジャニーズ)からの独立を発表しました。  中丸雄一、山田涼介、菊池風...
スズ子出生の秘密に迫る香川編、ナニワの至宝&大地真央のヅカ同期が登場
 スズ子(趣里)と六郎(黒崎煌代)のふたりは、梅吉(柳葉敏郎)とツヤ(水川あさみ)の故郷である香川を訪れる。スズ子が小学...
桧山珠美 2023-10-28 06:00 エンタメ
平手友梨奈に平野紫耀ら事務所移籍組が躍動!俳優と歌手の二刀流はあるか
 平手友梨奈(22)が出演するドラマ「うちの弁護士は手がかかる」(フジテレビ系)が好評を博している。  平均世帯視...
こじらぶ 2023-10-28 06:00 エンタメ