芸人の「聖人化」に潜む危険性。バッテリィズ・エースに「いい人」を押し付ける風潮が心配だ

帽子田 芸人、ライター
更新日:2025-01-29 06:00
投稿日:2025-01-29 06:00

大衆の意に沿わなかった場合が恐ろしい

 確かに感動的なシーンだったし、誰もがエースのお母さんにM-1を見てほしかったと思っただろう。だが、その感動が「エースは一片の曇りもない、いい人に決まっている」という誘導になったのは間違いない。

 芸人の聖人化は非常に怖い。人気が出る一方で、少しでもファンや大衆の意に沿わないことをすると猛烈に叩かれてしまう危険性をはらんでいる。


 エースも芸人なのでボケようとして失敗して人を傷つけてしまうかもしれないし、ファンが思う「いい人」から逸れた行動をしてしまうかもしれない。今の時代は昔と違って女性問題や容姿に関することなんかも繊細になっている。

 エースがアホ故にその地雷を踏まないとも限らない。他の芸人だと眉を顰められるくらいで済むものが、聖人化されたエースだと、活動に支障に出るくらい叩かれるかもしれない。

 実際、去年の敗者復活ネタが「北海道の観光地をいじる」いう内容だったが、北海道の人から軽い反発が来て、そこからエースが北海道の人に配慮してこのネタをやるのを気にするようになった——というSNSの投稿も見た。

勝手に「聖人化」して叩かないでくれ

 同じくM-1でブレイクした、誰も傷つけない漫才の「ぺこぱ」も同じような現象にあっていたらしい。ちょっとしたことで叩かれたり、「こんな人じゃないと思っていた」とがっかりされていたと聞く。

 芸人の聖人化は意図せず進んでいく。人気者の証だし、クリーンな印象が大事な今の芸能界で、強みでもある。だが、意図せず積み上げた信頼を裏切ってしまうと強烈な「裏切り行為」とファンにみなされてしまうこともあるのだ。

 バッテリィズは面白いしエースも良い人だが、ちょっとでも大衆が勝手に作り上げた「聖人像」と違う振る舞いをした瞬間、SNS上で叩くのはやめてほしい。勝手に信頼して勝手に裏切られたと責めないでくれ、と言いたい。

帽子田
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別名義では芸人として活動。一時期は年100本以上のライブに出演、ライブ主催の経験もアリ。一応現役の芸人ではあるが、ただのお笑い、バラエティ番組ファンでもあります。

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