受験=悪? 偏見を助長する演出になっていないか
このCMにおいて最後の「子どもの心を尊重していますか?」という点が一番の訴求ポイントでしょう。
ですが、暗い勉強部屋、妙に怖い母親、そして子どもの精神的幸福度が低いのが「勉強をしているせい」だと言わんばかりのデータの出し方は、確かに受験に向かって頑張っている子どもや親を惑わしかねません。
確かに実際に事件になっている通り、行き過ぎた教育虐待は問題ではあるものの、親子ともども一番神経質になっている時に流すものかという意見には一理あるのではないでしょうか。
「子どもは子どもらしくあれ」の幻想と学歴賞賛の矛盾
このようなテーマのCMが作られること、そして受験戦争が加熱することへの批判がある一方で、昨今の日本のメディアは高学歴をもてはやす風潮が以前にもまして強くなっていると感じます。
知識系のクイズ番組では出演者の名前の横に大学名が入ることもザラ、お笑い界でも高学歴の学生芸人が幅をきかせている。学歴をもてはやし、格差を煽っていたメディアが「子どもは子どもらしくあれ」「子どもは身体を動かしたいもの」と主張するのは、まるで手のひら返しのよう。
そんな昔ながらの認識の元で「志望校に入りたい」という前向きな希望を持って、勉強をしてきた子を立ち止まらせるようなCMを流してしまうことには筆者も疑問を感じます。
散々学歴社会を見せつけておきながら、CMでは相反するテーマが流れる矛盾。様々な意見や風潮があって然るべき世の中ではありますが、合格という目標に向かって真っすぐ進んでいる時期に流されると、親たちがクレームを入れるほど怒ってしまうのは当然でしょう。問題提起も逆効果です。
とにかく放映時期が受験時期と奇しくも重なりバッドタイミングでした。「これで受験をすることに迷いを感じた子どもが落ちたら、この状況を作った中居さんのせい。引退したとしても一生許さない」という意見も中学受験界隈のグループ内で見られました。
2024年から放送されていたようだが
ただ、批判の声があるものの、実際リアルタイムでそのCMを見た人は少なく、オープンチャットやSNSの問題提起からリンクを辿ってCM動画を見た人が多い模様です。
クレームや反響で放映の自粛をしたのか、筆者自身も今のところ1回しか目にしていません。実際の中学受験生や、その親御さんはテレビ、特にフジテレビを見ていない人が多いからのようです。テレビを見る時間があれば勉強をしているか、最近はTverなどで番組を選んで視聴している人も多いですからね。
ちなみに、このCMは制作された2024年からたびたび放映されていたそうですが、リアルタイムで目にした中学受験関係者の中でも、今回の騒動で初めて見たという声がほとんどでした。そのことは救いではありますが、本来訴求すべき人々に届いていないのはCMとして失敗なのかもしれません。
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