早稲田卒、商社OLの称号は「貧乏な夢追い人」とは違うの。誰よりも高い“現在地”は私だよね?

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2025-03-08 06:00
投稿日:2025-03-08 06:00

久々に動き出したコミュニティ。投稿者はなんと…

 今さらmixi? と思われるかもしれないが、ここはもはや閑散とした公園だから逆に心地がいい。大声でわめいても苦情が来ない。

 3年前にその快適さを知ってからは、ことあるごとにここに逃げ込み、あっちの公園ならすぐ炎上しそうな火の粉をまき散らしている。

 書き終え、深呼吸をしてマイページを更新すると、珍しく通知がきていた。

<<『WYC東京12期生あつまれ!』のコミュニティにコメントがあります。>>

 背筋にひんやりとしたものが伝う。

 ――私以外にまだmixiを見ている人、いるんだ…。

 私は慌てて、公開していた日記を非公開に設定変更した。

「こんな人だった?」再会した友人に違和感

「おまたせしましたー」

 なぜか今さらコミュニティが動き出した。コメントをした3人で同窓会をすることになった。

 時間きっかりにたどり着くと、久々にコメントを書き込んだ主の麻梨乃さんが1人待っていた。

「翠、久しぶり。今日はありがとうね。私が言い出したのに、予定のすり合わせや場所の提案までしてくれて」

 宴の場は、あの頃よく授業帰りに行っていた町中華だ。

 コンビニやチェーン店以外で、西大井で変わらない場所と言ったらここしか思いつかなかった。適当に選んだので礼を言われるのが申し訳なかった。

「いいんですよ。忙しくて予定がすぐ埋まるから、早めに決めたかっただけです」

「忙しいって、今、何してるの?」

「ざっくりいうと、丸の内の商社で働いているんです。出張も多くて」

 メンバーは私と、今は3人の子持ちという麻梨乃さん、あとは現在何をしているのか謎のすみれだ。すみれは少々遅れるという。

「大変そう。でも、そういうのが翠は合ってるよ。バリキャリってやつ?」

「麻梨乃さんも幸せそうじゃないですか。結婚して3人も子供がいて…普通に幸せを手に入れているって感じです。私にはムリだけど」

「当時から翠はテキパキとした優等生タイプだったもの。社会人として優秀だったから、なぜあんなとこに? って今も思ってる」

 彼女の言葉は、へりくだっていながらもどこか上の方から聞こえた。確かに、年上ではあるものの。

 ――あれ?

『こんな人だったっけ?』と首をかしげる。

慎重に謙虚に言葉を返すことにする

 それでも表向きには謙虚な言葉で応戦する。雪の日の坂道のような慎重さを持ちながら。

「ありがとうございます。私がWYCに入ったきっかけは、単に対人スキルを磨きたかったからなんですよ」

 麻梨乃さんの疑問に、私は用意された後付けの理由を答えた。本音を言うと足元がすくわれるような気がして。

 当時、どこにも就職できなかったことが理由なのに。

ミドリマチ
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作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

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