審査員・粗品とM-1審査員の決定的な違いは? 忖度しない芸人ゆえの「ブレない目線」と「ムカつかれる覚悟」

帽子田 芸人、ライター
更新日:2025-03-12 06:00
投稿日:2025-03-12 06:00

優勝候補にも「愛のある」酷評

 印象的だったのは、優勝候補だった翠星チークダンスの漫才を、「ウケてなさ過ぎて客に媚びている」「新しいように見えるかもしれないけど、お笑い界ではよく見る手法。シャバい」と酷評。

 翠星チークダンスは「メンヘラっぽい男と、サバサバとそれを切る女」という立場を逆転させた漫才なのだが、確かに同じような「立場を逆転させる」という公式を使った漫才のスタイルは実はよく見たりする。


 僕のような凡人は「でも面白かったしウケていたから、よく見る手法でもよくないか?」と思ってしまうが、粗品のような才能あふれる人から見ると新しい手法で抜群にウケないと評価に値しないのかもしれない。実際、M-1の霜降り明星の漫才は新しくて面白かったので、そこに基準を置くのも致し方無い。

 ただ粗品のコメントは鋭いながらも熱いもので、翠星チークダンスの前のコンビ名「いなかのくるま」を口走るくらい、若手への愛へ満ちていた。余談だが、粗品は先輩には厳しいが、基本的に後輩には優しいらしい。

第一線にいるからこそブレない目線

 もう一つ、印象的だったのが、ハイヒール・リンゴとの激論。リアルな掛け合いが面白いマーティーの漫才に、リンゴさんが「ホンマのことばっかりいうと疲れる」とコメントしたのに、粗品が「いや、お笑い好きは疲れないですね」と返したのだ。

 大御所であるリンゴ姉さんに真っ向から対抗し、しかも「お笑い好きは疲れない」という棘のあるコメントで徹底抗戦の構えだった。その時はさすがに会場がピりついた様子が伝わったが、粗品の上にも下にも媚びない姿勢に一貫性があり、審査がより信ぴょう性を持った。


 賞レースを見ていると、審査員が周りの顔色を気にしながら点数をつけているように感じることもあったりする。M-1では特に顕著で、一人だけ点数が低かったりしたらその人が非常に気まずそうにする。

 お笑いには明確なルールブックがないので、自分の感性があっているか不安なのだろう。その気持ちは簡単に想像できるし、審査員の人はネタを第一線でやっている人も少ないので、余計にそう感じるのかもしれない。

 だが粗品は現役で時代に沿ったネタを作っているし、バラエティ番組に強いというより劇場やネタを含めたお笑い特化型なので、その辺りの気持ちのブレが少ないのかもしれない、と勝手に考察している。

帽子田
記事一覧
芸人、ライター
別名義では芸人として活動。一時期は年100本以上のライブに出演、ライブ主催の経験もアリ。一応現役の芸人ではあるが、ただのお笑い、バラエティ番組ファンでもあります。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


そう来たか!橋本環奈の台詞「“朝ドラ”ヒロインか!」に込められたメッセージは…
 平成16年、福岡県糸島で農業を営む父・聖人(北村有起哉)、母・愛子(麻生久美子)、祖父・永吉(松平健)、祖母・佳代(宮...
桧山珠美 2024-09-30 17:30 エンタメ
菅田将暉『眉毛 なぜ』の話題で持ち切り。菅田3兄弟から目が離せない!
 菅田将暉(31)は見るたびに印象が違います。たとえば、先日の「あさイチ」(NHK)プレミアムトークに出演した際は、「デ...
ヒロインがすでに亡くなっている…! “地獄の道”を歩んだ佐田寅子は特別な女性だったのか?
 さまざまな仕事をかけ持ちし、多忙な毎日を送る優未(川床明日香)。花江(森田望智)もひ孫に囲まれ平穏に暮らす。航一(岡田...
桧山珠美 2024-09-28 06:00 エンタメ
ニコイチだった目黒蓮「海のはじまり」と松村北斗「西園寺さん」、株を上げたのは…?
 夏ドラマで“シングルファーザー”設定かぶりで話題となった、Snow Man・目黒蓮さん(27)主演の「海のはじまり」(...
こじらぶ 2024-09-28 06:00 エンタメ
なぜ『内村プロデュース』は伝説の番組に? 有吉弘行らから見える内P愛
 来たる9月28日、『内村プロデュース』(テレビ朝日系)が『祝!内村光良還暦祭り 内村プロデュース復活SP!!』と題して...
桂場の甘味好き、愛を語る家裁メンバー…「虎に翼」の登場人物は愛すべき人たちばかり
 最高裁大法廷では、いよいよ美位子(石橋菜津美)の事件の判決が出されようとしていた。寅子(伊藤沙莉)は早朝、よね(土居志...
桧山珠美 2024-09-25 17:10 エンタメ
期待はずれと面白かった夏ドラマを調査!『新宿野戦病院』をよそにアラフォー世代に刺さったのは…?
 2024年夏ドラマが続々と最終回を迎えています。今期も話題を振り撒いてくれた数々の作品がありましたが、みんなの率直な感...
ちちんぷいぷい返しを試みた航一は朝ドラヒロイン良き夫“ベスト5”に入る
 寅子(伊藤沙莉)の名前を知る少女の祖母・佐江子(辻沢杏子)が訪ねてきて、孫を助けてほしいと寅子にすがる。  そん...
桧山珠美 2024-09-23 17:25 エンタメ
『光る君へ』は吉高由里子、『スオミの話』には長澤まさみ…人気脚本家“お気に入り俳優”の傾向は?
 大石静氏脚本のNHK大河ドラマ『光る君へ』、クドカン節がさく裂するフジテレビ系『新宿野戦病院』など、昨今放映されている...
斎藤元彦知事は謹んで却下! イケメン知事5の存在を脅かす“大本命”は…
 わたくしたちイケメン愛好者の間で、常々イケメン知事と注目しておりましたのが、北海道の鈴木直道知事、青森県の宮下宗一郎知...
「虎に翼」大団円へ…ブレない寅子、桂場、航一の名場面をありがとう
 桂場(松山ケンイチ)に真っ向から意見した航一(岡田将生)だが、心ならずも寅子(伊藤沙莉)にまで心配をかける事態に陥って...
桧山珠美 2024-09-21 06:00 エンタメ
悪評だらけの天才、平手友梨奈が遅刻やドタキャンを繰り返す本当の理由
 2022年12月に、鳴り物入りで韓国大手事務所「HYBE」傘下の「NAECO」に移籍したものの、今年8月、2年も経たず...
堺屋大地 2025-01-03 10:01 エンタメ
【写真特集】魔性の女こと葉月里緒奈の色っぽい流し目…
【この写真の本文に戻る⇒】真田広之も“シタ夫”経験者…裏切られたサレ妻が離婚後も「また一緒にいたくなる男」にある共通点
寅子フリーズ! 美佐江くりそつな美雪登場、意味深な微笑が恐怖をあおる
 元明律大学女子部の一同が、久しぶりに寅子(伊藤沙莉)の家で顔を合わせる。涼子(桜井ユキ)は司法試験に挑戦していた。皆、...
桧山珠美 2024-09-18 16:35 エンタメ
芸人はランジャタイ伊藤から学べるか 「地雷女」を避けるたった一つの方法
 ランジャタイ・伊藤幸司(38)が未成年との不適切な関係を持ったことを暴露され、芸能活動を休止した。過去を振り返れば、伊...
帽子田 2024-09-18 10:08 エンタメ
老眼鏡かける寅子。「最後はいい方に流れていく」発言にトラツバロス一歩手前…!
 香淑(ハ・ヨンス)は、原爆被害に遭った外国人への支援を始めることを決意する。一方、寅子(伊藤沙莉)と航一(岡田将生)は...
桧山珠美 2024-09-16 14:00 エンタメ