「R-1」さや香・新山や吉住らベテラン勢はなぜ負けた? 売れっ子は予選で有利、決勝で不利な理由

帽子田 芸人、ライター
更新日:2025-04-09 09:48
投稿日:2025-04-08 06:00

「期待を裏切る」ことの難しさ

 審査員や視聴者も二人のネタの方向性やキャラクターが分かっているので、「期待を裏切る」ということは非常に難しいのだと思う。特に新山はさや香の漫才を一人でやっている感じがして(それが漫談というものだが)、「だったら二人の方が面白いのでは?」と感じてしまうのも理解できる。

 加えて、新山のムーブがバラエティすぎて、審査員も心置きなく評価を下げやすかったのかもしれない。粗品に「酷評ですね!」といじられたときのキレっぷりも面白く、他の芸人だと可哀想に見えそうなところを見事に返していて流石だった。

 吉住はずっと高クオリティなネタをR-1で披露しているが、その分、過去の本人のネタが面白いので「自分を超えられていない」と評価された感があった。お笑いはスポーツと違って、タイムや距離など定形的なものでは図れない。

 見る人によって尺度が違うので、吉住のように高い標準のネタを作り続けていると、「去年のネタの方が好みだった」「一昨年のネタの方がよかった」と見る人によって評価が細分化されやすいのだ。吉住のライバルは吉住。

 さらに今回は、審査員が「爆発」「裏切りの展開」みたいなものをかなり重視していたので、二人のネタの傾向では難しかったかもしれない。特にハリウッドザコシショウさんは綺麗なネタを評価しない傾向が強い。

「ばれてなかった」友田オレ。R-1はカオスさも面白い

 その点、最年少で最も露出が少ない友田オレが「ばれていない」という強みを大いに発揮して、勝利をつかみ取ったのだ。こういう時勢や展開を掴むというのも、芸人の才能のひとつだ。

 では、「R-1は売れていると不利なのか?」と思うかもしれない。僕の感覚で言うと、「決勝では不利。予選では大いに有利」だ。

 先ほど上で語ったように、決勝では手口がばれているので不利なのは確か。ただ、R-1の予選だけで言うと、名が知れていると「かなり」勝ち上がりやすい。これはM-1やキングオブコントよりも「かなり」と言ってよい。

 なぜならR-1の予選は死ぬほど重い。「この世の地獄を見たいならR-1の一回戦に行くべき」というくらい重い。誰も笑わない。

 R-1の一回戦でウケるのは認知度が高い芸人か、それこそ決勝にまで上がれるような力を持った芸人のみ。名が知れていると重い空気をひっくり返せるので勝ち上がりやすいが、決勝では「有名」が弱点になり負けやすいという何とも皮肉な大会だ。

 お笑い賞レースといえば「M-1」のイメージがある人も多いと思うが、R-1は予選のカオスさも含めて面白い。興味を持った人は、予選も合わせて楽しんでみてほしい。

帽子田
記事一覧
芸人、ライター
別名義では芸人として活動。一時期は年100本以上のライブに出演、ライブ主催の経験もアリ。一応現役の芸人ではあるが、ただのお笑い、バラエティ番組ファンでもあります。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


「あんぱん」蘭子と豪の秘めたる恋に“過去の名作”を思い出す。河合優実は百恵ちゃんによく似ている
 縁談の返事をしに出掛けた蘭子(河合優実)を連れ戻したのぶ(今田美桜)に、蘭子は本心を明かす。季節は巡って秋になり、うさ...
桧山珠美 2025-05-01 19:16 エンタメ
なにわ男子・道枝駿佑は“肉食女子”から守られたのか?「キャスター」男性俳優陣が気になるよ
 芸能界広しといえども清純派と呼べるのは芦田愛菜だけ。長年、そう訴えてきましたが、今回の一件が図らずともそれを証明したの...
共亜事件は「虎に翼」のオマージュか。あんぱん、ブギウギの3人が同時代を生きている
 昭和11年、家族や嵩(北村匠海)に見送られ、のぶ(今田美桜)は女子師範学校の寮に入る。軍国主義の担任・黒井雪子(瀧内公...
桧山珠美 2025-04-28 18:40 エンタメ
「あんぱん」最後まで毒親だった登美子(松嶋菜々子)。去っていく彼女に問うてみたいこと
 受験したのぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)の明暗が分かれる。静まり返った柳井家で、寛(竹野内豊)たちに頭を下げる嵩。そこ...
桧山珠美 2025-04-26 12:50 エンタメ
春ドラマの評判を調査!『最後から二番目の恋』は令和の鬼渡?『あんぱん』『対岸の家事』の感想は
 2025年4月期も話題のドラマが続々スタート! 多すぎてどれを見るのか迷ってしまう…。そんな人のために忖度なしでドラマ...
「あんぱん」千尋(中沢元紀)は本当に良い子…史実どおりの展開なのか。しょくぱんまんのようなイケメンだ
 けんかした嵩(北村匠海)と千尋(中沢元紀)に、寛(竹野内豊)は改めて後継ぎはいらないと告げる。そして、何をしながら生き...
桧山珠美 2025-04-23 17:51 エンタメ
こうでなくちゃ! 志尊淳の正解を「恋は闇」で見た。いい人よりも“妖しい姿”に妄想が駆り立てられる
 新ドラマ「恋は闇」(日本テレビ系)の志尊淳が良きです。  前クールの「日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった...
「あんぱん」なんて贅沢!今が旬、河合優実の“目で語る”表現力と色気に驚く。俳優・ソニンのEE JUMP感を消した演技も見事
 なりたい夢を見つけたのぶ(今田美桜)は、女子師範学校合格に向けて猛勉強をし始めるが、成績が思わしくなく頭を抱える。同じ...
桧山珠美 2025-04-21 14:23 エンタメ
怪演・市原隼人に「ヤバい超大物」2人が熱烈ラブコール。迫真すぎる“ガンギマリ”の演技がモテる理由か
 大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)にて、盲目の大富豪にしてゾクッとする異様な雰囲気を放つ鳥山検校を怪演...
堺屋大地 2025-04-21 06:00 エンタメ
ラランド・サーヤは「名誉男性」なのか? お笑い界の“女すぎる”という悪口に思うこと
 ラランド・サーヤが参加するバンド「礼賛」が大阪で行ったライブで、痴漢行為が発生。被害女性がSNSで被害を訴えたことで発...
帽子田 2025-04-20 06:00 エンタメ
「あんぱん」松嶋菜々子の“毒”さえチャーミングにする厄介な美しさ。ドキンちゃんにも見えてしまった
 8年間音沙汰のなかった登美子(松嶋菜々子)が突然帰ってくる。登美子に対してわだかまりが残ってはいるものの、自分の漫画を...
桧山珠美 2025-04-19 06:00 エンタメ
「あんぱん」登美子(松嶋菜々子)の登場が不穏…色っぽいけど。貴島中尉(市川知宏)は“あのキャラ”を意識?
 新聞社に出した漫画で賞金をもらい、ご機嫌の嵩(北村匠海)。一方のぶ(今田美桜)は、パン食い競走で転びそうになったところ...
桧山珠美 2025-04-17 16:02 エンタメ
カトパンへの嫌味に物議…新井恵理那は承認欲求のカタマリか、悪役を演じる聖人か?
 昨年3月、8年間出演して総合司会も務めていたテレビ朝日系の朝の情報番組『グッド!モーニング』を降板したフリーアナウンサ...
堺屋大地 2025-04-17 06:00 エンタメ
【募集】春ドラマ何見る? 面白かった&ガッカリを教えて!『最後から二番目の恋』『あんぱん』etc
 コクハクでは2025年春ドラマを対象としたアンケートを実施します。4月よりスタートした春ドラマ、「期待している」「面白...
笠松将、柳楽優弥を超えなければと思っていた。俳優業の“わからなさ”は「自分自身にビビッている感覚」『ガンニバル』シーズン2インタビュー
“この村では、人が喰われているらしい……”    2022年の年末にディズニープラス スターにて独占配信がスタートす...
望月ふみ 2025-04-15 06:00 エンタメ